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原点4
しばらく呆然と立ち尽くしていると、犬が吠え始めた。
滅多に吠えないのにこの時だけは何かに反応している気がした。
リードを外すと、一目散にリビングに入っていった。
そして、再び吠える。
何かを伝えようとしているそれだけは分かった。
裁花もリビングに向かうと、部屋の前であまり嗅いだことのないにおいがした。
だが、確かに嗅いだことはあった。
それが何かは、思い出せなかった。
そのまま、リビングに入ると、時が止まった。
全ての音が聞こえない。
見慣れないリビング。
紅いカーテン。
掛けた覚えのない赤い布がテレビに被さっていた。
一歩歩くと、足が濡れた。
何か零れていたかと思い、足元を見る。
────────母がいた。
頭部が半分の母がいた。
踏んでいたのは母から流れ出た血だ。
何も考えられない。
何も感じない。
ただ、そこに立っていた。
そのときだった。
「ワンッ!! ワンッ!!」
みたらしの声だった。
何度も、何度も吠えている。
まるで裁花を呼び戻すように。
その声で、裁花の意識が現実に引き戻された。
そして──
「……ぁ」
喉の奥から、かすれた音が漏れる。
次の瞬間。
「──────ああああああああああああああああ!!!」
悲鳴とも、叫びともつかない奇声が部屋に響いた。




