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原点3
それから程なくして、裁花は犬の散歩に出ていった。
風が風吹く。
冷たい風が当たるたびに寒さを通り越して、痛みとも感じ取れる。
こんな寒空の下でも、相変わらず犬は元気でリードを引っ張っていく。
成体ではないとはいえ、見かけによらず、力が強い。
少し気を抜けば、引きずられそうになる。
「みたらし、すこしゆっくり」
みたらし、これが我が家の犬の名前だ。
名前は、みたらし団子を食べてるときに我が家に来たという理由で名付けた。
大型犬は、散歩が一日に数回必要だが、我が家はめんどくさがりが多く、一度の散歩コースが約6キロである。
かなりの長距離ではある。
母と父の運動不足解消には丁度いい距離ではある。
二人が毎回、散歩から帰ると、ぜいぜいと息を切らしていた。
犬に引っ張られたのか、単純に運動不足かわからない。
約1時間半歩くだけがそんなにつらいものなのか。
裁花には、わからなかった。
◇
1時間半歩き続け、家に戻ってきた。
玄関の扉を開けたとき、妙な違和感を感じた。
「鍵が、閉まってない?」
母が帰ってきていると、一瞬考えたが、家からは物音ひとつしない。
だが、それだけじゃない。
まだ何か見落としている感じがした。




