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第一話 更生のはじまり

真人まさと、志望校変えなくていいのか?」

担任の言葉に、真人は曖昧に笑った

「……大丈夫です」

大丈夫なわけがない

偏差値は足りていない。

内申も普通、模試は毎回ギリギリ

家では父が問題集を解き、解説し、ため息をつく

「ここはな、基礎だぞ」

京大卒の父の“基礎”は、真人にとって難問だった

母の灰崎千春は優しいが、目は笑っていない

「真人ならできるよ」

できない、できるわけがない

それでも第一志望は変えなかった

理由は単純だ

逃げたくなかったから

いや、正確には――逃げたと思われたくなかった

 

受験当日

手汗で答案が湿る

数学は半分空白、英語は長文を勘で塗った

帰宅後、真人はベッドに倒れ込んだ

「終わった……」

やれるだけやった、ではない

ただ終わっただけだ

 

合格発表

画面に自分の番号を見つけた瞬間、膝が抜けた

「あった……」

母は泣いた

父は「よくやった」と言った

真人は笑った

でもその夜、眠れなかった

スマホを開く

検索

「相難高等学校 口コミ」

 

──監獄みたい

──いじめ放置

──先生が怒鳴る

──三年間地獄

 

指先が冷える

「……嘘だろ」

勉強できない、運動できない、目立たない

でもいじられやすい

サンドバッグの未来が見えた

(なんで受かったんだよ)

父の期待

母の涙

周囲の祝福

全部重い

 

数日後

制服採寸の帰り道

街は平和だった

小学生が遊び、主婦が笑い、犬が吠える

真人だけが取り残されている

(俺なんていなくても変わらないだろ)

その瞬間

「わー!」

後ろから衝撃

ガンッ

 

視界が跳ねる

アスファルト

回転

三輪車


(は?)

 

体が動かない

遠くで誰かが叫んでいる

子供が泣いている

(……ダサ)

 

そこで意識が途切れた。

 

 

目を開けると、暗闇だった

無音

無重力

無臭

「……夢?」

「いいや、本番だ」

闇の中から男が現れる

細い目

愉快そうな笑み

「三輪車で死ぬとはな。伝説級だぞ?」

「……誰」

「ロキだ。神だ」

真人は笑。

「最悪の夢だな」

「残念、現実だ」

指を鳴らす

映像が浮かぶ

自宅。

 

「まず一つ、事実を教えてやろう」

嫌な予感。

「お前は托卵だ」

思考停止

「育ての父と血は繋がっていない。実父は別だ」

「……嘘だ」

「私は嘘もつくが、今はついていない」

映像が変わる

母と見知らぬ男

真人は目を閉じた

「やめろ」

「お前は不幸だと思っていたな?」

ロキが近づく

「だが本当の地獄はこれからだ」

 

さらに文字が浮かぶ

【死亡原因:三輪車による頭部打撲】

 

「……やめろ」

 

「選べ」

 

光が二つ現れる

消滅

異世界

 

「異世界ミズガルズへ転生するか、このまま消えるか」

「……なんで俺なんだよ」

「面白いからだ」

即答だった

「向こうで条件を満たせば現実へ戻れる可能性もある」

戻れる

やり直せる


そのとき、空間に文字が刻まれる

 

【ロキの試練】

・嘘をつくな

・人を守れ

・命乞いをするな

 

「守れば強くなる。破れば罰だ」

「罰って?」

ロキが笑う

「地獄」

 

真人は震えた

消えれば楽だ

全部なかったことになる

托卵も

高校も

三輪車も

でも


どうせなら 

「死ぬくらいなら……」

 

顔を上げる


「異世界でもなんでも行ってやる!」

 

沈黙

 

ロキが愉快そうに目を細める

 

「その言葉、忘れるなよ」

 

光が爆ぜる

身体が引き裂かれる

最後に聞こえたのは、ロキの声


「ようこそ、更生の時間だ」

 

――次の瞬間、真人は硬い地面に叩きつけられた

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