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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
2章 皇宮へGO
23/25

第23話 お父さん、娘さんを僕に下さい

ロエルが、珍しく真剣な顔で切り出した。……はずだったのだが。何故かルードがふざけ、ロエルもついでにふざけ、キドがキレる。これは、どうしても噛み合わない三人の会話劇である。

皇宮近辺に構える公爵家の別邸へと戻った一同は、

そのまま執務室へと移動した。


背筋を伸ばし、両膝の上にそれぞれ両手を置く。

まるで正式な謁見の作法のようなその姿に、ルードは険しい表情を浮かべ、キドは目を見開いた。


ロエルはルードを見上げ、真剣な眼差しで言う。


「ルード」


低く、落ち着いた声。


「俺に、キドを下さい」


「――はぁ?」


キドの声が、思い切り裏返った。


「一体何の話……っ」


「お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!」


ルードは眉間に深く皺を寄せ、ぴしゃりと言い放つ。


「……あんたも何言ってんだ!!」


キドは無理のある展開に、つい敬語を忘れる。


「そんな事、一言も言われてないだろ!」


「ラミアの時の予行練習をしようかと思ってな」


こほん、と咳払いをして、どこか照れたようにルードが言う。


「そんな日は来ないでしょう。そこらの兄と妹じゃないんですよ?

それに独身なのに父親気取りって……結婚もまだしてないのに、所帯染みないでください」


「いや、俺も一度くらいやってみても良いかなって」

真顔で、ロエル。


「俺を巻き込まないでください。本当に二度とその機会はなくなりますよ!?」


ルードは一瞬で表情を切り替え、腕を組む。


「真面目な話、それは構わないが……ザグル侯爵はそれで大丈夫なのか?」


「ああ。多分な」


「構わないってどういう事ですか!?」


キドは声を荒げる。


「ルード様、俺を捨てるんですか?」


「……キド。気持ち悪い聞き方するな」


ルードの顔が、はっきりと歪んだ。


「ハハっ、三角関係みたいだね」

ロエルが楽しそうに笑う。


「ちょっと!今までお二人とも茶番をやってて、俺だけなんでそんな対応なんですか!?」


「キド、落ち着け。一日だけだ」


ロエルは真剣な表情で、まっすぐにキドを見る。


「一日だけ、侯爵家に来てほしい。俺の恋人として」


「嫌ですよ!!」


即答だった。


「何が悲しくて男の恋人役をやらないといけないんですか?

それに俺は彼女役ですか?彼氏役ですか?

どちらにしても嫌です!」


ロエルは少し考えるように視線を上げ、


「あー……それはキドが彼女かなぁ……」


「なんでですか!?」


キドが即座に食いつく。


「ロエル様より俺の方が男らしいでしょう!」


「でも中身はキドの方が乙女だろ?」


平然と返すロエル。


「俺にはその感覚はない。結局、俺の方が男らしくないか?」


「キーッ!!絶対嫌です!!」


キドは床を踏み鳴らす勢いで叫ぶ。


「どうせならもっと俺を煽ててその気にさせるべきでしょう!?

絶対やらない!!」


そこへ、ルードが助け舟を出す。


「キド。褒美を出す。だからロエルを助けてやれ」


「褒美……給金ですか?」


キドは鼻で笑う。


「俺を見くびらないでください。金なんかで俺は動かないですよ」


「いや、騎士団長だ」


きっぱりとルード。


「俺もいつまでも兼任は出来ない。

騎士団長の座を、お前に託す」


キドの動きが、ぴたりと止まる。


「……」


一瞬、心が大きく揺れる。


――が。


「……しかし、そうまでして何故俺に?

そこらの令嬢に頼めば良いのでは?」


ロエルは視線を逸らし、少し間を置いて答えた。


「……親父は、その……そこらの令嬢の家門を潰すだろう。平然とな」


キドの顔色が、さっと青くなる。


「え……俺も潰されません……?」


「いや、キドは公爵家の副団長だ。

親父も高位貴族の家門に、簡単には手を出さないはずだ」


「全部、たらればの話じゃないですか!!」


キドは頭を抱える。


「嫌です!!ロエル様のお父上、なんか怖いし、行きたくないです!」


ルードが低く言う。


「キド。これは、ラミアを守る為でもある。

万が一の時には、俺が皇帝に願い出てみる」


「そんなの、ただの神頼みじゃないですか!!」


キドは悲鳴のように叫ぶ。


「俺はただの男好きだと思われて、騎士団で怯えられながら一生を過ごすんですよ!

あまりに代償が大きすぎる!!」


「それは俺も同じだ」


ロエルは静かに言い、キドの肩にそっと手を置いた。


「一人じゃないぞ、キド」


「それはあんたの選択だろ!!」


キドは肩を振りほどく。


「俺に関係ないだろ!」


「……五発くらいなら殴らせてやる」


ロエルは覚悟を決めたように言う。


「だから頼む」


「……五発……も、いいんですか?」


キドの目が、きらりと輝いた。


「決まりだな」


ルードが即断する。


お読みいただきありがとうございます。

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