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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
2章 皇宮へGO
19/22

第19話 我、ここにあり!

華やかな舞踏会、その裏で――騎士の本能と、父子の因縁が静かに火花を散らす。

「俺は?どこにいれば」


キドはルードが見える位置のまま、舞踏会の喧騒を背に端へと移ろうとした。

周囲では令嬢や令息たちが華やかに談笑し、優雅に歩き回っている。



その時、令嬢たちが次々と近づいてきた。

「公爵家で副団長をされている方ですよね、私」

「ちょっと、私が先よ」


キドは状況を理解できず、頭が真っ白になる。

え?何故俺に?

周りには高位貴族が山ほどいるのに、なぜ騎士爵である俺に声をかける?

まさか引き抜きか?

それとも公爵家の詮索か?

いや、ルード様狙いか?

――いや、それなら毅然とした態度で――


「失礼」

戦場で部下を見るように、軽く令嬢たちを見下すようにして道を開けさせる。

令嬢たちはおずおずと道をあけた。


遠くでロエルは肩を揺らして笑っている。

「あれは、下級貴族、または跡取りがいない家の令嬢なのに。令嬢達が可哀想なのか、キドが勿体無いことしたのかわからないな」


ルードとラミアはダンスを終え、キドの元へ歩み寄る。

キドは副団長の顔をしていた。


「……どうした?」

「いえ、何でもありません。戦時下だと思い、任務を全うするのみです」


ルードとラミアは首を傾げた。


しかしルードの周囲にも、令嬢たちが数人まとわりつくように近づいていた。

「あの、公爵様。私―」

「お初にお目にかかります―」


ルードは少し面倒そうに、しかし優しく令嬢たちに応対する。


「まぁ……ロエル様も令嬢達に囲まれていますね。優しくお話しされるから、常に囲まれてしまいますね」


微笑ましく眺めるラミアに対し、ルードはロエルに視線を向け心の中で否定する。

いや、それは違う。

ロエルはただ笑顔を貼り付けているだけだ。侯爵家として動くか、追い払うか、判断している最中だ。


ラミアは微笑んだまま、令嬢たちに気を配る。

「お兄様、私の事はお気になさらず令嬢達とお話ください」


それを聞き、令嬢たちは少し遠慮しつつもルードにさらに集まる。

キドはラミアを守るように前に出た。


帝国唯一の公爵であるルードから離れかけたラミアに、令息達が群がり始める。

キドは今にも襲いかかるような鋭い目線を令息達に向ける。

令息達はビクッと肩を振るわせ固まった。


(俺不敬じゃないよな?

陛下からも言われてる。そうだ、大丈夫だ。


俺は今日これ以上の負担を胃に与えるつもりはない!


さぁ離れろ!虫からどもめ。俺の胃を荒らす者は誰であっても許さん!)


あまりの気迫に令息達は後退りしていった。


令嬢たちはその様子を、思わず息を呑んで見つめる。

「……あの人、すごく厳格で格好いい……」

「まるで戦場の騎士……目が離せないわ」

少し離れた位置から、互いに小声で囁き合う声が漏れる。


キドは令嬢達の視線に気づかず、ただ前を見据えたままだった。


ルードは令嬢達の相手をしつつも、(令嬢たちの相手は、手短に済ませるべきだな)と考えていた。


ロエルは笑顔を貼り付け、穏やかに会話している。

「侯爵家のロエル様……素敵……」

「本当に、ため息が出るほど……」

小さく囁き合い、顔を赤らめる令嬢たち。表面上は優雅に振る舞い、目を見張る。

だが、その視線の端には、遠くの状況を見極めていた。



その時、空気が一瞬、凍りついた。

「これはこれは、皇女殿下。ご挨拶させていただいてもよろしいですか?」


遠くで気付いたロエルの瞳が鋭く細まる。反射的に令嬢たちは息を飲み、足を引いた。

舞踏会の華やかな音楽やざわめきが、まるで遠い世界の出来事のように消え、空間に重く張り付く沈黙だけが残る。


ルードは背筋に冷たいものを感じ、無意識に肩を引いた。

キドもまた、その存在感の異常さに息を呑む。威圧――いや、圧力にすら似たものが、体の奥まで染み渡る。


「私は、ザグル侯爵家当主、ロエルの父です」


その声は低く、しかし場内に鋭く突き刺さるように響いた。

微笑の裏に、計り知れぬ力と狡猾さを隠した瞳。立っているだけで、空気を支配する圧倒的存在感――。



その視線は、夜の舞踏会の華やかさをも一瞬で凍らせ、戦場のような緊張を生む。

誰もが息を潜め、静かに侯爵の動きを見守る。


華やかな音楽と笑顔の祝福の裏で、確実に思惑が動き出していた。


次回は番外編です。

よろしくお願いします。

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