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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
2章 皇宮へGO
18/21

第18話 今宵、貴女と踊る栄光を

夜の舞踏会――煌めく光の中、ラミアと貴族たちが優雅に踊る。祝宴の裏には、視線と密やかな思惑が渦巻く。

夜、舞踏会


皇宮の大広間は、昼とはまるで別世界の装いを見せていた。


天井から幾重にも垂れ下がるシャンデリアが柔らかな光を降らせ、磨き上げられた床は鏡のようにそれを映す。壁際には青と白の花々が飾られ、甘い香りがほのかに漂っていた。


集うのは、帝国中枢を担う貴族と、その子弟たち。


今宵は祝賀の舞踏会――だが、この場が社交界最大の戦場であることを、彼らは誰よりも理解している。


やがて、楽団の音がぴたりと止んだ。


「皇帝陛下、皇后陛下、ならびに皇族方のご入場です」


大広間の扉が開き、皇帝を先頭に皇族が姿を現す。


皇太子、第二王子、皇女ラミア、そして側近たち。


一斉に貴族が跪く。


「陛下に、永遠のご加護を――」


皇帝は静かに頷いた。


「楽にせよ」


空気がわずかに緩む。


宰相が進み出る。


「それでは、祝賀舞踏会の始まりです。まずは皇族による、ファーストダンスを――」


その瞬間。


皇太子と第二王子が、同時に一歩前へ出た。


「俺が主役だ」


「何を言う、次期皇帝は俺だ」


「だから俺だ!」


「だから俺だ!!」


一触即発。


「……お前、女役やれ」


「は!? 何で俺が!!」


「背が高い方がリード役だろ!」


「貴様の方が肩幅広いだろ!!」


「見た目の問題じゃない!!」


「何の問題だ!!」


ルードが額を押さえる。


「……陛下、止めますか」


皇帝は深く息を吐いた。


「……いや、もういい。好きにさせろ」


結果。


二人は互いに腕を取り合い、真顔のまま中央へ。


楽団は困惑しつつ演奏を再開。


「踏むな!」


「踏まれる方が悪い!」


「そっちが女役やれ!」


「絶対嫌だ!」


――完璧に噛み合わない、地獄のワルツ。


会場は凍りつき、貴族たちは言葉を失った。


「……仲、良いんですね」


ラミアがぽつり。


「どこがだ」


ルードが即答した。


ようやく二人の意味不明なダンスが終わり、舞踏会は本格的に始まる。


音楽が変わり、貴族たちが一斉に動き出す。


「皇女殿下」


「ぜひ一曲」


「この栄誉を私に」


高位貴族の令息たちが、一斉にラミアへと殺到した。


「え、えっと……」


戸惑うラミア。


そのときだった。


令息たちが、ふっと道を譲る。

そこを颯爽と歩いてきたのは、黒に近い濃紺の正装の男性だった。

夜の光を受け、落ち着いた佇まいが周囲の視線を引きつける。

長身で均整の取れた体躯に、静かに微笑む瞳。


「今宵、貴女と踊る栄光を――

私にいただけますか?」


優雅な礼、柔らかな微笑み。整った顔立ち。


「ロエル様……!」


ラミアはほっとしたように笑い、差し出された手を取った。


名前を呼ぶと、男性は微笑みを返し、手を握り返す。


令嬢たちも、思わず息を呑む。

小声で囁き合いながら、視線をそらせない。

ラミアの笑顔とドレスの華やかさに、男性貴族も目を見張っていた。


「俺が言った通りのこと、そのままやってるじゃないですか!!」


キドが小声で叫ぶ。


「いや、ロエルは助けただけだ」

ルードは冷静に言う。

「俺たちが間に合わなかった。借りができたな」


「え……?」


キドは遠い目になる。

「俺、関係ないのに視線が痛すぎる……

うわ、息するだけで緊張する……!」


音楽に合わせ、二人は静かに踊り始めた。


「昼とは、ずいぶん雰囲気が違いますね」


「そう? ありがとう。ラミアも夜の装いがよく似合ってる」


「ふふ、ありがとうございます」


ロエルは一瞬、周囲を見渡す。

その目が、ほんの刹那、鋭く細まった。


「……大丈夫。次は、ルードと一緒にいな」


穏やかな笑顔。


「……はい」


やがて曲が終わる。


入れ替わるように、ルードが歩み寄る。


「ラミア、疲れていないか?

これが終わったら、少し休もう。

さすがに令息たちも、連続で誘いはしないだろう」


「はい」


満面の笑み。


「……俺は?」

キドがぽつり。


「端で息してろ」


「扱い雑すぎません!?」

キドは心の中で絶叫する。

「俺、完全に置いてけぼりじゃん!!

しかも関係ないのに視線が痛すぎる……!」


――その瞬間、令嬢たちがざわりと声を潜める。


「……あの人、かっこいい……」

「本当に……美しい姿……」

「侯爵家のロエル様よ」


キドは目をひん剥く。


「嘘だろ!? あれが!?

騙されてる……!いや、可哀想に……!

どう考えてもあれ、過大評価だろ!!」


令嬢たちは怪訝な顔でキドを見つめる。


「何この人……?」


キドは視線をそらすこともできず、心の中でさらに絶叫した。


その背後、ロエルは少し離れた場所から杯を傾けていた。

視線の先には――ザグル侯爵。


貴族たちと談笑しながら、着実に皇族へ距離を詰めていくその姿。


(……始まったな)


華やかな音楽と笑顔と祝福。

その裏で、確実に動き出す思惑。


今宵の舞踏会は、ただの祝宴では終わらない。


いつか、社交界デビューしてみたい。

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