18/28
聞こえてしまう声
ネットの片隅。
小さな投稿が、
想槍の目に留まる。
「父が、
事故で死にました
前科はありました
でも、
家では優しかった」
「これって、
相殺ですか?」
想槍は、
画面を見つめたまま、
動けなくなる。
相殺は、
世間にとって
**“便利な言葉”**になり始めていた。
誰かを切り捨てるための。
「……違う」
小さく、
呟く。
「それは、
ゼロになる行為じゃない」
「増えてるんだ」
憎しみも。
諦めも。
そして――
沈黙させられた声も。
想槍は、
スマートフォンを握りしめた。
逃げているだけでは、
足りない。
止めるだけでも、
足りない。
“相殺じゃない答え”を、
言葉にしなければならない。
それを、
世界に。




