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相殺式  作者: 冴白
17/28

相殺という言葉

最初は、

匿名掲示板の一行だった。


「偶然にしては、

悪い奴同士の事故、多くないか?」


誰も、

本気にはしなかった。


次に、

まとめサイト。


・煽り運転常習犯×無免許運転

・詐欺受け子×恐喝常習

・傷害前科者×違法改造車


“被害者ゼロ”の死亡事故が続いている


それでも、

陰謀論の域を出なかった。


だが――

決定的だったのは、

一本の動画だ。



切り取られた真実


深夜のニュース番組。


「こちらをご覧ください」


司会者の声が、

わずかに緊張を帯びる。


画面に映し出されたのは、

監視カメラ映像。


交差点。

信号待ちの二台。


次の瞬間、

互いに急発進し、

正面衝突。


だが――

映像は、

その直前で止まる。


「この事故ですが、

 専門家によると」


「両者とも、

 過去に複数の危険運転歴があり」


「偶然とは、

 考えにくいという声が

 上がっています」


テロップが流れる。


【“相殺”という言葉が、

 SNSで拡散】


想槍剛は、

古いスマートフォンで

その映像を見ていた。


ネットカフェ。

身を隠す場所。


隣の席では、

誰かが呟く。


「いいじゃん、

 悪い奴同士なら」


その言葉に、

想槍の指が止まる。



世論 ――割れる正義


SNSは、

一晩で燃え上がった。


「被害者がいないなら、

それでいい」


「むしろ、

税金の節約では?」


「神の裁きかよ」


一方で。


「誰が決めてるんだ」


「次は、

“気に入らない奴”

じゃないのか?」


「これ、

完全に殺人だろ」


正義は、

割れた。


完全に。



組織の焦り


地下会議室。


古谷直也は、

無言で資料を見ていた。


「リーク元は、

 特定できていません」


部下の声が、

硬い。


「内部の可能性は」


「否定できません」


古谷は、

静かに言った。


「“相殺”という言葉が

 独り歩きしている」


「これは、

 想定していなかった」


小谷とおるは、

モニターから目を離さず、

ぽつりと言う。


「……世間は、

 数字で見る」


「“悪人が減った”

 それだけだ」


田村しずくの席は、

空いている。


その空白が、

やけに大きかった。


古谷は、

小さく息を吐く。


「想槍剛が、

 生きている限り」


「この話は、

 終わらない」


それは、

追跡命令でもあり、

警告でもあった。

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