水晶の無垢
幸せは
希んだから手に入るものではなく
悲しみは
嫌がったってやって来ない訳じゃない
ただ背中に背負い
その重さにみあった水晶の無垢を
心の闇につみかさねてゆく
それが嬉びだろうが
切なさだろうが
日々を生きる歩みの中で
心の通じあわない
異国を生きる辛さを苦しいと想ったとして
まっすぐに遠くだけをみつめて
明けない夜が無いように
目覚めない夜が無いように
なんておさない夢だけ夢と知ったうえで
けして曖昧にはしない覚悟で
無垢を知ることを祈ろうと想う
いつだって北風は
刺すように瞳に吹きつけたし
みあげれば雁の群れたちが
矢印みたいに何処かへ向かっていたし
それでも必ず訪れるあしたの中に
幸せが絶対無いとは
だれにも云い切れないように
それが不確かな手触りだとしても
水晶の無垢をこの手でたしかに
触れたのだという虹をつかむような夢をみる
それでもよければ
なにかさまざまな生きる歩みの意味が
この胸にうっすらと浮かびあがる気がする
今になって
ただ佇んでいるだけという訳にはいかない
白い光を吐く唇を
黙ってみつめつづけたのは
おさないころ
あのひとに憧れていた冬の朝
すこしもの憂げにみえたからか
それだけでなく
きっとあのひとは
水晶の無垢のその重さを
意にも介さず
薄氷のうえを飄々と
歩くように生きていたのだと想った
あえてそんな生き方を
してみたいものだと
ほんとうのことなど
なにもしらないくせに
心の深いところで
すごく切実に祈ったのは
恥ずかしいくらいまっすぐな瞳で




