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その手に、エデンを~ドイツ教会軍特殊作戦部隊~  作者: コダーマ


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20話 再会と惨殺(5)

 声を張り上げる司祭と聖騎士に背を向け、大司祭は自らの手でロックの体に巻いてある縄をほどく。ヴェルツは無言で頭を下げた。


「と、とにかく猊下、ここから逃げましょう。俺がお守りします」


「そ、それなら窓から」


 ゴーチェの言葉にマナーワンも頷いて、自らが入ってきた窓辺へ身を寄せる。

 ロックを助け起こしてから、ヴェルツも暗い窓の外へ目を凝らした。

 月明かりもない。襲撃にはもってこいの夜だった。

 頼りない足取りで窓枠に足をかけた僧の細い肩がピクリと震える。


「伏せろっ!」


 窓の外。教会の庭。闇の中を動く黒い影を認めた瞬間、背後からゴーチェに頭を押さえられた。

 ダシュ。ショットガンの炸裂音──続け様に。


 音の度に部屋の窓枠が飛び、家具が壊れ、壁の額が吹き飛んだ。「ギャア―!」という凄まじい悲鳴はマナーワンのものだ。どこか怪我でもしたのだろうか。いや、自分も同じような声をあげているのかもしれない。銃撃が止むまでヴェルツは頭を抱えて床に蹲っていた。

 弾を交換しているのか。一瞬、飛来する弾が途絶える。恐る恐るヴェルツは顔を上げた。


「い、今のうちに……」


 逃げましょうと言いかけた時だ。廊下をパタパタ駆ける音。開け放たれた扉から飛び込んできたのはキルスティンだった。


「みんな、こっち! 早く早く!」


 言うなり、危険を悟って身を引く。真っ先にマナーワンが駆け出した。続いて大司祭を抱えたゴーチェが。それからロックとヴェルツ。ぞろぞろと廊下へ流れ出た五人。


「こっちだって!」


 マナーワンの居た大部屋手前の廊下で姉が手招きしている。傍らにはモリガンが立っていた。両手に小銃を持ち、僧房入口の侵入者たち目掛けぶっ放す。


「大聖堂が火を噴いてるものだから、驚いて駆けつけたぞ。猊下も皆も無事ですか」


 廊下の隅に隠れてたら、モリガンが助けてくれたの。

 キルスティンが軽く説明する。彼女が話している間も、どこか呑気な口調とは対照的に銃は爆音を鳴らしていた。


「建物は完全に囲まれている。今、レオンが突破口を開いているところだ」


 遠くで近くで響く銃声は、その戦いを示しているようだ。


「ちょっと待って……」


 ヴェルツは銃声の度に身を縮めながら叫ぶ。

 展開に付いていけない。何でこんな事態になっているんだ。一体誰が──何者の集団がこんな事を?


 カトリック軍か? それとも別の何か? どうせなら明日にしてくれよと思う。明日の今頃であれば、自分たちはここには居ない筈なのに。自分はただ平穏に生きたいだけだというのに。


「おい、ヴェルツ」


 友人が腕をつかむ。


「この街は終わりだ。じきにカトリック軍に占領される。隙を見て逃げよう」


「う、うん……」


 言われなくともそのつもりだ。ヴェルツは我に返った。そうだ、ここに──こんな人達に関わったせいで酷い目に合ったんだ。ロックの言う通り早く逃げよう。

 しかしどう前向きに考えても、今この人達から離れるのは正しい選択肢ではなかった。自分に力がないのは分かっていたから。そして彼らは力も武器も、戦う術も持っている。


 ──力って何なのだろうか。一部の人だけが強大な力を持っている現実って、果たして正しいのだろうか……。


「ヴェルツ、何言ってるの! しっかりしなさい」


 おでこを叩かれ、今度こそ彼は我に返る。


「あ、ああ、ごめん。姉ちゃん……」


 かなり意識が朦朧としているようだ。ヴェルツは自ら頬を叩いた。

 爆発の炎が回ってきて、ここら一帯も煙が充満している。見るとマナーワンの目も焦点が合っていなかった。


「みんな無事か? こっちだ」


 白い靄の向こうから銃声が近付いて来る。よく通る声はレオンのものだ。


「退路は確保した。早く……って、随分頭数が増えてるんだけど?」


 坊主はともかく、何で暗殺屋が居るんだ。あと一人、あのメガネは誰──? いや、まぁいい。そんな事は気にしない。僕は銃を撃てればそれでいいんだ。

 なんて物騒な台詞を吐いている。昼間の如く全身に銃火器を抱えて、生き生きと顔を輝かせるその表情。この場で会うに一番ほっとする人物であると同時に、人間これでいいのかと思えてヴェルツは頭を抱えた。

 それでルートは? との問いに、弾丸小僧はこう答えた。


「大聖堂を突っ切って、正面扉から出る。それが一番早い。敵の数は減らしておいた」


 うわぁ、最悪なルート。喉元まで出かかった言葉を、ヴェルツは慌てて飲み込んだ。


「猊下、大丈夫ですか」


 ゴーチェの制止を押し止めて大司祭がモリガンの元へ進み出る。剣しか持たぬ聖騎士より、銃を抱えた特殊部隊EDE.の側の方が余程安全だと判断したのだろうか。


「それで猊下、奴らは何者なのです」


 大司祭を背に庇いながら、モリガンの声は詰問する響きを秘めていた。聖騎士と司祭がたちまち反論する。


「猊下がご存知の筈がないだろう」

「猊下のお命を狙う不遜の輩です」


 思わぬ反撃にモリガンは肩をすくめる。


「いや、オレは奴等の武器が気になっただけだ。銃を改良した……EDE.うちの上をいく威力の銃器を持っていやがる。《死天使シュテルベン・エンゲル》の武器が他に流出しているとか……」


 言いながら、ジャキッと音をさせて弾倉を交換する。


「そんなこと、今はどうでも……」

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