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6/30

2周目 ~予兆~

 例の如くウンコのキレが悪くて遅れてきたライトと合流し、魔王城を目指す。

 今回は前回とは違う道を選び進んだ。気分転換に散歩コースを変える感覚だ。道一本違うだけで、景色も違えば出てくる敵も違う。イベント順も拾えるアイテムも、何もかも。これぞまさしくRPGの醍醐味だろう。


 またあっさり魔王を倒してしまうのも興醒めなので、今回は無駄な戦闘は回避してレベルを上げすぎないよう気を付けた。

 勝てるか勝てないか、ギリギリの緊張感を楽しめるのもやり直しのきくゲームの良さだ。一つの失敗も許されない人生などというクソゲーとは違う。恐ろしい魔物に対し、生身の身体を使って文字通り決死の戦いを挑むことで、普段やるゲームの数倍の高揚感が得られた。


「ハッハッハッ! よく来たな勇者よ!」


 約二日ぶりに出会った魔王は二日前と全く同じ口上で俺を迎えた。同じなのに、違う道を通ってきた俺にはそれも新鮮に映った。


 ミライ姫は、今回は「キモい」と言わず、ひたすら懸命に助けを求めていた。


 二、三度のやり直しはあったが無事魔王を倒した。なんならもう少しレベル上げをセーブしても良かったかもしれない。


 帰り道。今回も二組に分かれて歩きながら俺はミライ姫に話題を振る。

 彼女の方には記憶が無かったとしても、俺は前回彼女が見せた笑顔が忘れられなかった。


「姫。ご趣味は?」

「何よそのお見合いみたいな振り方は。……別に、趣味なんて無いけど」

「えっ、本当に?」

「逆に何を期待してるの? 私はゲームキャラよ?」

「でもケンやハリー、ライトを見ていると、みんな自意識があってすごく個性的だし、好き嫌いもはっきりしてるから」

「私はあの人たちと違うの。一緒にしないでくれる?」

「そ、そうですか」


 相変わらずつれない物言いに肩を落とすと、姫はしょうがないなぁといった感じで息を吐いた。


「料理……は、好きだったかも」


 ぶっきらぼうに言った姫の頬がほんのり朱に染まる。照れながらも話を広げてくれた彼女の気遣いに、俺の心はパァッと明るくなる。


「なんだ、やっぱりあるじゃないですか! 料理好きなんて、お姫様なのに家庭的ですね!」

「好きだった、よ。最近はもう作ってないし、今後作る予定もないわ」

「そういう設定ですか?」

「そ、そうよ。大体、シナリオの最初からずっと魔王城にいて、王様の城に帰ったら即エンディングなんだから、料理なんて作る時間がそもそも無いの」

「あっ! じゃあ姫の得意料理はなんですか? ちなみに俺はカレーライスが一番好きです! ふひひ、いつか食べたいなぁ姫の手料理」

「人の話を聞きなさい! この世界にいる限りいつかなんて来ないし、仮に時間があったとしてもあなたのために作る義理はないわ。ちなみにカレーライスは大の得意よ」


 姫は毒舌で能面だけど、冷血とはちょっと違うかもしれない。そんなことを思って帰りの道程を歩けば、同じ距離のはずなのに前回よりもずっと短く感じた。



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