2周目 ~記憶~
ミライ姫の言ったとおり、エンディングが終わったと思ったらオープニングが始まった。
帰り道は退屈だったので、またキャンプ感覚の旅ができると思うとワクワクする。毎回同じメンバーというのも気楽でありがたい。
「勇者とその仲間たちよ。今日そなたたちを呼んだのは他でもない、魔王討伐の依頼についてじゃ。昨夜、私の大事な娘が魔王に攫われた!」
王様が前回と全く同じ言葉を言う。
「なんだって!?ミライ姫が!?」
「王様、なんとおいたわしや……勇者様も、婚約者がこんな目に遭ってさぞお怒りでしょう。心中お察しします」
ケンとハリーも同様。
そこでようやく、俺はそのことに気が付いた。
「二人とも、前回の旅の記憶が無いのか?」
「前回の旅? おいおい、緊急事態がそう何度も起こってたまるか。笑えないジョークは時と場所を選んでくれ」
「やめなさい戦士・ケン。慎重な勇者様のことだ、おそらく、こういった事態を想定した脳内シミュレーションをあらかじめ何度もしていたのでしょう。その結果、妄想と現実の区別がつかなくなり……」
「な、なるほど。そこに気付くとはさすが魔導士・ハリー……」
記憶のリセット。考えたら当たり前だ。ゲームを『最初からはじめる』というのはそういうことだ。
まぁ人間関係なんて煩わしいし、それならそれで別に構わないけど。
ただ、「待ってるから」と言ったミライ姫もそのことを忘れてしまったのだと思うと、なぜか少しだけ寂しい気はした。