327~591周目 ~停滞~
三二七周目。
「ミライ、今日は『伝説のゴマ団子』を見つけたよ!」
「は? 前回と同じところ行ったの? 確かに食べたいとは言ったけど、そんなことしてる場合じゃ……」
「違う違う。前回のは黒ゴマ団子で、今回は白ゴマの団子だよ。効果も違うけど、何より味が全っ然違う! 白ゴマは苦味のある黒ゴマより甘さに優れ、風味も強い! 料理が趣味なのにそんなことも知らないの?」
「ハァ? マウントの取り方キッモ!」
「……」
三二八周目。
「今日は『勇者のパフェ』を見つけた!」
「勇者のパフェ?」
「違う違う! 勇者のパフェじゃなくて勇者のパフェ!」
「……いや、全然わからないんだけど。何が違うの?」
「イントネーションが違うんだよ。もっとこう、語尾を上げる感じで。はい、勇者のパフェ!」
「そんな『勇者の盾』みたいに言われても……」
三二九周目。
「今日は『甘美なる黒き刀』を見つけた!」
「ただのチョコバナナじゃない。っていうかそのキモい名前は何? ススムが付けたの?」
「別に、元からそういう名前のアイテムだよ。そんなことよりほら、早く食べて食べて! 根元までパクッと!」
「……あなた最低ね。本当に気持ち悪い」
「すんません調子乗りました。あの、反省してるんでさらっと呼び方を『あなた』に戻すのはやめてください。マジで傷付くんで」
三三〇周目。
「今日は普通の白玉ぜんざい!」
「……あのさぁ、甘味処巡りでもしてるの? いい加減にしないとさすがにキレるわよ」
「ち、違うんだって! このゲームのアイテムがそっち系に偏り過ぎなんだよ! スイーツを食べたいからじゃない! 本当に! 断じて違う!」
「ふーん、じゃあ別に要らないのね? 私貰っていい?」
「えっ? い、いやそれは……」
「ベタな反応っ! 全く、漫才やってるんじゃないのよ! もうええわっ!」
三七六周目。
「今日は『クラーケンのタコ焼き』を見つけたよ」
「あら、スイーツシリーズは終わったのね。食べ物なのは相変わらずだけど。……ところで、出口の手掛かりは見つかりそう?」
「……ごめん、まだ」
「ちょっと、謝るのなんてやめてよ。心配しなくてもきっと近いうちに見つかるわ」
「そ、そうだよな。……あっ! そういえば今日はいかにも何かありそうな地下迷宮を見つけたんだった! 次回からはそこを探索してみるよ!」
「了解。いつも動けない私の代わりに頑張ってくれて、ありがとう」
四一五周目。
「結局地下迷宮の中にあったのはコレだけだったよ。『セレブの勝負水着』だってさ。一応、この世界の水中装備の中では最高クラスらしいけど……」
「凄いじゃない! これでもし出口が水の中にあったとしても安心ね!」
「そうだね」
「う……あっ、でもかわいい私がこんな際どいビキニ着たら、ススムにエッチな目で見られちゃいそう。いやーん」
「……」
「ちょっと、何か言いなさいよ」
四六八周目。
「『希望の聖剣』を見つけた。ハリーが言うには、これがこの世界で最強の武器らしい……たぶんもう、見つけてないアイテムも行ったことない場所も、ほとんど無いと思う」
「そうなの? 凄いわ! ススムはもうこのゲーム世界のマスターね!」
「だけど、これだけ探しても出口はおろか、その手掛かりすら……」
「だ、大丈夫! 出口が見つからないなら、アイテムを使って脱出する方法を考えましょ! 私がきっと何か作戦を考えるから! ね?」
「うん……」
五二五周目。
「ごめん。今回も出口どころか、新しいアイテムさえ見つからなかった」
「もうほとんど探し尽くしたんだし、仕方ないわよ。……むしろ私の方こそごめん。せっかくいろんなアイテムを見つけてくれたのに、作戦が全然立てられなくて。
必ず何か良い方法を見つけてみせるから、もう少しだけ時間をちょうだい」
「……」
五九一周目。
「お疲れ様ススム。その、今回はどうだった?」
「……ごめん」
「ススム……」




