15話
「では、早速正式に発表しよう」
本人の心からの同意も得て、陛下は婚約の発表は早めにしておいた方がいいと思い、会場に戻って貴族たちに伝えるべきだと提案した。
リュシュリシュもそうするべきだと伝え、同時にセレーネと同様に婚約者となったから、今後はソルネチア家で生活するべきだとも伝えた。
これからは、公爵夫人となるため、そのマナーや作法を身につける必要があるからと。
フラーグムは戸惑いながらも、「不束者ですが、頑張ります」と、今日1番の声を上げていた。
会場へと戻る廊下。1番前を陛下とリュシュリシュが歩き、後方をアルヴィスとルキウスが。挟まれるようにセレーネとフラーグムが歩いていた。
「そうだ、フラーグム様。一つお尋ねしたいのですが」
「はい、なんでしょうか」
「……もし、お母様の体を治すことができると知ったら、貴女はどうされますか?」
「……それは、お母様がまた子供を産めるようになるということですか?」
「はい」
「……そうですね。もしお伝えしても、信じてはくれないと思います。でも、もし本当に治せるのであれば、治して欲しいです」
「では、婚約の報告をする際に陛下に母親の体を治せる魔法使いがこの国にいることを伝えてほしいと頼む。何もなければそのままだし、もし紹介してほしいということがあれば、本人の要望で自分も同行してほしいと言われていることも書いてほしい」
「構いませんが、どうしてセレーネ様がお尋ねになられるのですか?」
「それは、セレーネ嬢がその魔法使いだからですよ」
すっとフラーグムの隣に立ったルキウスが、なぜか誇らしげにそう答えた。
彼女がこの国1の魔法使いであり、多くの実績を残していること、父であるリュシュリシュの足を治したことも話した。
呪いのことはあえて伏せ、後ろにいるアルヴィスも叔母であるラベンダーの目を治したことも話した。
それを聞いたフラーグムは無邪気な子供のように目を輝かせながらセレーネのことを見つめる。なんともいたたまれない気持ちになり、セレーネは恥ずかしい気持ちを必死に抑えながら、彼らの話を黙って聞いていた。
そして会場に戻り、陛下の口からルキウスとフラーグムの婚約が発表され、翌日には国中に話が広がった………
◇ ◇ ◇
《お父様、お元気でしょうか。
国を出て随分経ち、現在の状況をお伝えするために手紙を送りました。
すでにご存知かと思いますが、私はエストレアの公爵家の一つ、ソルネチア家のルキアス・ソルネチア様と婚約をいたしました。
彼には兄であるユリウス様がいらっしゃり、その婚約者であるセレーネ様にはよくしていただいております。
屋敷からも国からも出たことのない私は、他のご令嬢に比べて劣るところが多いため、毎日マナーや作法、歴史などの勉強で忙しくしていますが、とても楽しい日々を送っております。
時々お母様のことを心配に思います。私だけが幸せでいいのだろうかと。
何があっても、どんなことがあっても、私にとってはお母様はお母様なので。
だから、今からお伝えすることを聞いてどうするかはお父様……陛下にお任せします。
エストレアには優秀な魔法使い様がいらっしゃいます。
その方は、とある方の無くなった足を元に戻し、視えなくなった視界を再び視えるようにされたお方です。お話をお伺いしたところ、お母様のお身体を治すことも可能とのことです。
もし、治す意思があるのであれば、私の同行を条件にファータに足を運んで治療をしたいとのことです。
ただ、陛下の意思よりもお母様の意思を尊重したいそうで、お母様が望まないのであれば治療はされないとのことで。
私個人としては治していただきたいですが、本人の意思が重要だとその魔法使い様はもうされております。
陛下。どうかご検討ください。
もし返信をされる場合は、エストレアの王城にお願いいたします。こちらはエストレアの国王陛下からのご要望です。
それでは、陛下もお体にお気をつけください。
フラーグムより》




