72話
狂愛の魔女、アンジュ・ルージュ・アムネシア。
彼女は世界に知られる悪き魔女。数多ある国々の一つでしかないエストレアが簡単に捌いていい人物ではなかった。
そのため、彼女の処罰については魔塔に任せることになった。
各国にある魔法学会の大元である魔塔。その最高権力者である大魔塔師の判決により、アンジュは「封印」されることになった。
ただ封印されるのではなく、首を落とされた瞬間に封印が行われ、現在肉体と魂が分離した状態になっている。
封印が解けなければ、アンジュは生まれ変わることはできない。しかしこの封印は大魔塔師による特別せいで、簡単に解くことはできない。時が経てば経つほど体の腐敗は進んでいき、やがて肉体は朽ち果て、魂だけが永遠にここに止まり続ける。
ハートん侯爵家が罪に問われることはなかった。あくまで今回の事件はメルフィーの単独行動。だが、当然セドリックの婚約はなくなり、エトワール公爵がすでにメルフィーが家門から除名していることから、公爵からの支援は当然ながらない。
「俺は騙されたんだ!」
セドリックはそう絶叫していた。だが、そんな彼に同情するものはいなかった。むしろ関わりたくないと、当時の同級生たちも距離をおく。当然だ、彼ら彼女らもまた、メルフィーの言葉に乗せられていたのだから。
彼女に乗せられ、ずっとセレーネを虐げてきた。すでに当時のことは世間に知れ渡り、同級生やセレーネが学院に在籍していた時の生徒たちはみな、後ろ指を指されていた。
中には、手のひらを返したり、黙っていればバレないと思ってセレーネの肩を持つ者もいた。だが残念なことに、そんな言葉を信じる者はいなかった。周りのものが信じるのは、本人の言葉だけ。周りがどんなに嘘を、真実を口にしても、信じる者はいなかった。




