71話
それから時は流れ、何か問題が起きることもなく裁判は開かれた。
最初に裁かれるのはルーアだった。
彼女は誘拐の協力をしただけで重い罪に問われることはなかった。
彼女は、クラッセン侯爵家から一生出ることを許されなかった。一度家から脱走したこともあり、彼女は特別性の首輪と鎖に繋がれて、自分の部屋で生活することになった。
繋がれた首輪も鎖も、腕に自信の人間では壊すこともできない。その上、魔法も受け付けない代物。一度嵌めれば、誰も外すことはできない。性格には、それを外すための魔法や、壊せるほどの鉱石が存在しない。
しかしそれから長い時が立ち、ルーアが死を向けようとした時にやっと、とある魔法使いがこの首輪を外す魔法を生み出すことになる。
当然それはずっと先の話。今の彼女にはどんなに願っても意味のないことだった。
次に裁かれたのはメルフィーのメイドだった。
彼女もまたルーアと同じ協力したという立場ではあったが、メルフィーの考えを肯定し、常に彼女のそばに居続けた。もちろん、セレーネに殺意を持って刃も向けた。
それだけではなく、
彼女には3つの選択肢が与えられた。「鞭打ち」か「過酷な修道院」に行くか、「自害」か。
メイドの前に小瓶が置かれる。中身は毒薬だった。
メイドはじっとそれを見つめたあと、それに手を伸ばして一気に飲み干した。
悲鳴は上がらなかった。この国では、こういった結果も日常的にある。大体のものが自分の命可愛さに選んだりしない。彼女はメルフィーのために命を捧げた。だがおそらく、目の前でその姿を見ても、メルフィーの心には何も響かないだろう。本人もきっとそれをわかっている。だからこの自害はおそらく、彼女の自己満足でしかなかった。
最後はメルフィーの番だった。
すでに親子としての関係は切れているため、この場にエトワール家の人間は誰1人としていない。もちろん、彼女が歪んだ愛情を抱いていたセレーネも。
メルフィーは魔女に唆されたとはいえ、彼女に協力してセレーネを攫い、売買の準備も行おうとしていた。
彼女の罪について、一部の貴族たちがエトワール家も責任を取るべきだと非難の声を上げるものたちもいたが、この場でやっと彼女が除名されたことが公になり、そのことを初めて知ったハートン家の者たちは膝から崩れ落ちた。
メルフィーが受けた罰。彼女もまたルーアと同じで、自由を与えられたが、多くの制限が彼女に絡みつく。
王城の西の塔最上階での生活。視界を奪われ、声を奪われ、足の自由を奪われ、死ぬ自由を奪われた。
魔法により、彼女は自害をすることも、他人に頼んで殺してもらうこともできない。
彼女を殺すのは、彼女に向ける純粋な悪意だけ。誰かが塔に侵入し、彼女に憎悪を抱いて殺す以外に、彼女は死ぬことができない。
もしずっとそんな人間が現れなければ、メルフィーはただあっけなく寿命で死ぬだけだった。誰に見守られることもなく、1人でただ寂しく………




