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64話

現れたアンジュはもう一度笑みをこぼすと、唖然として座り込んでる彼女の耳元で囁いた。それはきっと、どんな人間でも言われたくない最悪な言葉だった。


「貴女は私と似ている。だからこそ、気に入って協力したの」


狂愛の魔女、アンジュ・ルージュ・アムネシアに言われた言葉により一層メルフィーは動揺した。

彼女がどんな存在なのかは小さな子供でも知ってる。そんな存在から自分と似ていると言われるということは、それは自分が普通ではないこと。特別ではあるが、それは純粋な美しさではなく、純粋な狂気。


「貴女が彼女に抱くのは純粋な愛情じゃない。相手を泣かせたい、傷つけたい、壊したい、けがしたい、苦しめたい。膝まづかせたい、縋らせたい。そんな澱んだ感情」

「ちがっ……」

「魔女様!お嬢様から離れてください!」

「黙りなさい」


アンジュの一言に、かけようろうとしたメイドは萎縮した。

女とはいえ相手は長年生きてきた魔女。彼女が纏うもの、抱くもの、放つものは、普通の人間にはただただ恐怖でしかなかった。


「安心しなさい。それもまた愛であることには変わらない。でも、普通のものじゃないのは事実。貴女のご両親が恋愛結婚かは知らないけど、普通の男女の愛とは違うだけ。ふふっ、貴女のことだからきっと、いつか嬉々として彼女の四肢をバラバラにして、人形の手足をつけたりもするかもしれない」


立ち上がり高らかに笑うアンジュ。そばでは、ついに地面に手をついて項垂れるメルフィー。

そんな目の前の光景を関心でセレーネは見つめる。


「私がセレーネを好き?そんな……私はあの子のことなんで嫌いなの……大っ嫌いなの。だって、容姿も身分も私より下で、なにより欠陥令嬢で……」

「どうしても認めたくないみたいね。まぁそうよね。貴女のそれは、まるで好きな子をいじめる幼稚な男の子みたいだもの」

「っ!」


より一層動揺と混乱をするメルフィー。

その時、その雰囲気に割って入るようにメイドが声をかける。

内容は、ユリウスたちがハーストン侯爵家にやってきたというものだった。

その時初めてセレーネが反応をし、それをみたメルフィーは一呼吸を置き、「そう」と呟いてスッと立ち上がった。


「焦ることはないわ。だって、あの家に行ってもなんの意味もないもの。ふふっ」


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