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63話

あれからどれだけ経っただろう。

セレーネがクローディアの開いたお茶会に参加してから、ユリウスは落ち着かない気持ちでいっぱいだった。

彼女の魔法の才能を考えれば、心配するのは失礼かもしれない。しかし、世の中魔法も日々進歩している。魔法を使えないようにする魔法や道具も存在するかもしれない。そんな時、セレーネはどうすることもできないだろう。それを考えるだけで、早く彼女を助け出したいと気持ちが前へ前へと進んでしまう。


「あぁユリ!」


セレーネを捜索し始めて数日。捜査中だった騎士がルーアを発見して拘束したと連絡が入った。

拘束されたルーアがいる部屋には、ユリウス以外のソルネチアの面々。お茶会を開いたクローディア。そして、その婚約者である、第一王子であるアルヴィス。

ルーアの両親にも連絡を入れたが、あまりのショックに夫妻共に倒れてしまい、ここまでくることができなかった。


「あぁユリ。やっと私を迎えにきてくれたのね。ねぇ早くこの無礼な騎士たちに命令して。この拘束を解くようにって」


ひどく陶酔状態の彼女は、いまだにユリが自分に好意を抱いていると勘違いしている。媚びる声に、本人以外、みな同じように眉間に皺を寄せ、嫌悪の視線を向ける。そんな視線など気にしていないかのように、ルーアは変わらずユリウスに縋りつこうと彼に近づく。

しかし、寸でのところで騎士に止められ、彼女は彼らに無礼だと罵声を浴びせた。


「ルーア」

「え?なにかしらユリ」

「セレーネはどこだ」


ユリウスが彼女に向ける視線は、ただただ純粋な怒りだった。

愛する人がいなくなった。どんなに探しても見つからない。やっと手掛かりとして見つけたのは幼い頃、幼馴染だった女。平気で人を傷つける、過去を消したり他意と思うほどに憎くてたまらない存在。


「もう一度聞く。セレーネはどこだ」

「ゆ、ユリ?ねぇ……なんでそんな顔するの?私を迎えにきてくれたんでしょ?」

「すでに調べはついている。あの日、君がロサ家にいたことは。答えろ。あの日、ロサ家に侵入してセレーネに何をした」


ルーアは戸惑った。こんなはずじゃない。

セレーネがいなくなればユリウスが迎えにきてくれる。セレーネじゃなくて、自分を愛していると。私と結婚してくれる。

なのに、目の前にいる彼は怒りに満ち溢れており、今にも自分の首を勢いよく掴んで締め殺そうとする勢いだった。


「そもそも、君が生きていること自体がおかしい。襲撃を受けたと聞いたが、君のような人間が何もなく、無傷で生き残れるはずがない……協力者がいるのだろう?」

「ねぇ、ユリ。私の話を聞いて。私はずっと、貴方のことを……」

「ルーア・クラッセン。君は状況を理解しているのか?今の君は貴族令嬢でもなんでもない。それどころか、平民以下の罪人だ。許可なく勝手に喋ることは許されない」

「違う!私は罪人じゃない!あれは全部セレーネのせいよ!あの欠陥令嬢が私を陥れたのよ!そうなのユリ、あの女が全部悪いの!私は何も悪くない。だからねユリ。あの女じゃなくて、私のことを愛して。大丈夫。あんな女よりも、私の方が」

「……もう、何も言っても無駄みたいだな。どちらにせよ、残り短い命だ。少し痛いことをしても大丈夫だろう」

「え?」


その時、やっとルーアは周りに目を向けた。

ユリウスだけじゃない。彼らも彼女らも、自分に向ける目がおかしかった。


「なんで……言われたようにやれば……ユリウスは自分のものになるって……そう言われたから、やったのに……なんで……なんでなんで……なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

「っ!おい!」


ルーアは目の前の騎士たちを振り払ってユリウスに縋った。

自分は騙されただけだと。命令されただけだと。ただユリウスに愛されたかっただけだと。それにはセレーネが邪魔だったと。本当ならそこは私の場所なのに、あんな女、いなくなって仕舞えばいいのよ!

最初は懇願するように、泣きながら言葉を口にしていた。だけど徐々に溢れる言葉は怒りと恨みの言葉だった。

ユリウスは自分の服を握りしめるルーアの手を払いのける。

そのままその場に尻餅をついたルーアはそのまま彼を見上げる。だけど彼はルーアをみなかった。


「ルキ!」


次にルーアはルキウスに視線を向け、助けを求めた。

だけど、当然彼が視線を向けることはなかった。

ルキウスだけじゃない、その場にいた全員が誰1人としてルーアを見なかった。


「なんで……こんなはずじゃない……私は間違ってなんてない……騙された……騙された……あの女に……あの、女狐に……」


込み上がる怒りに顔を歪ませ、ルーアは勢いよく地面を叩きながら協力者の名前を叫んだ。


「メルフィー・エトワール!!!!」


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