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61話

セレーネがここに囚われてどれだけの時が経っただろうか。

窓から何度も日光と月光が入れ替わる。最初はしっかりと数えていたが、だんだんと面倒になってきて、セレーネは牢屋でただ大人しく日々を過ごしていた。


「それでね、候補が何人かいるんだけどね。そのうちの1人に面白い人がいて」


メルフィーは1日1回、セレーネの牢屋に足を運んでは彼女を売り飛ばす候補の話を口にする。

口にする候補たちはどれも悪い意味で有名なものたちばかり。

金を持ってる者もいれば、金は持っていないが扱いがメルフィーにとってはよい者。などなど。


「くり抜くとしたらどんなふうに売ろうかしら。瓶に特殊な液体をいれて、その中に目を入れるとか。それか、特殊な魔法加工をして、眼球そのまま飾れるようにするとか」

「メルフィー様。くり抜かれた場合、お身体はどうされますか?」

「あぁそうね。んー……公爵家でいい暮らしをしているのかしら体の発育もいいし、体目当ての方に売るのもいいわね……あ、魔力だけ抜き取ってそれを魔力が低い方に売ると言うのもいいと思わない」

「流石メルフィー様です」

「そうかしら。あぁでも、やっぱり目をくり抜くのは痛いしかわいそうよ……。あ。いっそ宣伝に渡すのはどうかしら。あそこは宝石眼の持ち主を保護してるのでしょ」


毎日毎日、無邪気な笑顔で残酷なことはを話すメルフィー。そんな彼女のことをさも当然と言うように同意したり、相槌を打つメイドもいかれているなとセレーネは思った。

特に反論もせず、ほぼ無感情に近い状態でじっと彼女を見るメルフィーに、セレーネは言葉をこぼした。


「楽しそうだね」


久しぶりに彼女が声を漏らしたことで、2人が驚い顔でセレーネを見つめる。

愛くるしい丸く大きなメルフィーの瞳が驚きでより一層大きく見えた。

そして、きらりと瞳を輝かせながら彼女は、無表情な彼女に、妖精姫のような、だけどどこか狂気じみた笑みを浮かべた。


「だって、セレーネを苦しませられると思うと楽しいの」

「へぇー……」

「ねぇセレーネ、いいのよ。そんな顔してるけど、内心は怖くてたまらないのでしょ。泣きたいなら泣いていいのよ。叫びたいなら叫んでいいのよ。縋ってももちろん構わないわよ」


自分でやっておいて何を求めているんだと思った。

彼女の口にしたような感情はセレーネには一切ない。泣きたいと思わないし、叫びたいとも思わない。もちろん、メルフィーに縋りたいとも思わない。

彼女は惨めな自分を求めてる。……いや、違う。セレーネはずっと前から違和感を感じていたメルフィーに対する違和感。


「そうだ!いっそ私がもらってあげるわ」

「………」

「目をくり抜いて、綺麗なレースの布で目元を覆ってあげる。綺麗に着飾って、私だけのお人形にしてあげる。お人形だもの、何されても問題ないわ。四肢をもがれても、他の子に貸しても。セレーネ。貴女は私のものなのだから」


その目はあまりにも異常で、正気ではなかった。

だけど、視線はまっすぐセレーネを見ていた。セレーネだけを見ていた。

いや視線だけじゃない。今のメルフィーは……いや、ずっと前から彼女の頭のなかは、メルフィーでいっぱいだった。


「ねぇメルフィー」

「ん?なーに?」

「貴女………」




「私のことが好きなの?」


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