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6話

翌日、ユリウスとセレーネの婚約は大々的に宣伝された。

しかし、それは愛のあるものではなく、書かれている新聞にはどれもセレーネがユリウスの生贄に捧げられたと書かれていた。

すぐにリュシュリシュが公爵家の権力を使って、その新聞社を潰しに行こうとしたが、書かれている本人がこのままでいいとその怒りを沈めた。


「よかったのかい。新聞社に抗議しなくて」


別邸のユリウスの部屋。

サークス状に体を巻く彼の中に腰を下ろして新聞を読むセレーネと共にユリウスは新聞の内容に目を向ける。

書かれているものはどれもいいものではない。

セレーネは哀れな生贄。

ユリウスは悍ましい化け物。


「いいんです。たとえ抗議したところで何か変わるわけではありません。それに、ユリ様がこんなに素敵な方だと知っているのは私だけでいいのです」


ユリウスの顔に頬を当て、幸せそうな表情をするセレーネ。そんな彼女に、なんとも言い難い感情に襲われ、体が熱くなってしまうユリウス。

相手は自分よりも4つも下だと言うのに、なんだか彼女に振り回されているような気分になる。


「それにしてもいい天気ですね。せっかくですし、外に出ませんか?」


セレーネがそう提案するが、ユリウスは首を横に振った。

この姿になってから、一歩も外に出なかった。それは、自分の姿を見た者、みな怯えて逃げ出す。怖がらせないためにも、部屋から出ない方がみんなのためになる。

彼は、誰よりも自分よりも相手に優しい人物だった。どんな態度を取られようと、ユリウスは相手のことを思いやる。だからこそ、友人である王太子の呪いを代わりに引き受けた。

そんな健気で可哀想な彼がセレーネは愛おしくてたまらなく、そっと彼の顔に手を添えて口付けをする。


「れ、レーネ!?」

「仕方ありません。では、部屋で日向ぼっこしましょう。今日は暖かいのでこのまま寝てしまいましょう」


小さなあくびをし、体を少し前に傾けて眠る準備をするセレーネ。

ユリウスは彼女が全くキスについて何も言ってこず、自分だけがオーバーに反応してることに恥ずかさを感じ、しかし弄ばれているようで少し拗ねてしまい不機嫌な顔をしていた。


「レーネ。ここで寝るなら、ベットで寝ないと」

「ユリ様のそばで寝ていたいのです」

「……それなら、僕の体に体を預けるといい」

「ありがとうございます」


スッとユリウスの体の一部がセレーネの背中のすぐ後ろに移動し、倒れてくる彼女の背中を支えた。

軽いなと、ユリウスは心の中でそう思った。

いくら魔法の才能に恵まれているとはいえ、セレーネも普通の令嬢を何一つ変わらない。自分のような存在と婚約……将来的に結婚させてしまうことに申し訳なさを感じていた。すぐにでも解放してあげるべきだと思うが、彼は今まで自分にむけていた暗くて冷たくて、鋭い言葉や視線ではなく、明るくて温かくて、柔らかい言葉と視線を向けてくれる彼女を手放したくないと思ってしまっていた。

これが愛なのかどうかはわからないが、少なくともユリウスの中でセレーネという存在は大切な、いわば特別な存在になっていたのは確かだった。


「まだ出会って2日だというのに、こんな気持ちを抱くなんておかしなことだな」


小さな寝息を立てて眠るセレーネの横に、自身の体を置いて、ユリウスもまた眠りについた。



◇◇ ◇



2人の婚約が国民や貴族、王族にまで知れ渡る結果となり、当然あの2人の耳にもその事実は届いていた。


「あぁセレーネ。なんて可哀想なの」


顔を多い、嘆くメルフィーを隣に座るセグリットが慰めた。

婚約破棄をしてそんなに日も経ってもいないというのに、大々的に元婚約者の新しい婚約が発表された。しかも相手は噂の「白蛇公爵」。

セグリットは、セレーネにお似合いの相手だと内心喜ぶと同時に、彼女が自分と同じ公爵家と婚約したのが許せなかった。


(欠陥品のくせに、俺と同じ立場だと!?いや、こっちはメルフィーがうちに嫁いでくるから爵位はそのまま。あっちはセレーネが嫁ぐ形になるから、セレーネの方が立場が上……!!)


グッと奥歯を噛み締めながら、手にしている新聞を握りつぶす。

しかも、同じ公爵家であるメルフィーの婚約派票よりも大きく報じられていたのも彼の気に触っていた。

何から何まで、セレーネが自分の上に行っているのが彼には腹立たしくて仕方がなかった。


「ねぇセドリック様。どうにかして、セレーネを公爵家から解放できないかしら。あの子では、公爵家での生活は耐えられないと思うの」

「……そうだな……あぁそうだ。あいつか公爵家でやっていけるはずがない。あぁメルフィー、親友想いのなんて優しい子なんだ」

「あの子は必要ないと言ったけど、やっぱりあの子の幸せのためにも、新しい婚約者を紹介してあげなくちゃ」

「そうだ。あいつにはもっと、相応しい相手がいる」


そう。公爵家の人間ではない。セドリックがセレーネに相応しいと思う結婚相手は、自分よりも身分が低くて醜い年配の男。そんな相手が欠陥品のセレーネにはお似合いだと思っている。

そして、それを実行するための権力を今、彼は持っている。それが愛しい自分の今の婚約者。


「メルフィー。あいつのために、最高の婚約者を手配しよう。お前なら当然できるだろう」

「えぇ、もちろんよ。早速準備をしましょう。お互いの顔わせはもちろん、私たちの婚約パーティーよ」


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