表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/65

55話

早朝。薄汚れた馬車が森の中を走っている。

中には、馬車にお似合いの薄汚れた服を身につけた、かつての令嬢。ルーア=クラッセンが乗っていた。

彼女はこれから、もっとも過酷と言われる修道院に届けられる。

今まで令嬢として生活していた彼女にとっては三日。いや、その日のうちに逃げ出すかもしれないほどの環境。

しかし、そんな場所に贈られていると言うのに、彼女は悲鳴ひとつあげず、ただ茫然と馬車に乗り、自分の右手首を見つめる。

愛しい人に握られた。嬉しいはずなのに、彼が自分に向ける視線は怖いほどの怒りと拒絶。今でも身震いしてしまうほどのそれの原因は、自分が彼の婚約者を気づつけたから。

深い深い愛情。本当なら自分に向けられるはずだったそれは……結局は自分の夢物語だった……


「ユリ………っ!」


その時、馬車が大きく揺れた。

同時に、悲鳴も聞こえる。何事だと不安に感じている時、馬車の扉が開いた。


「あ、よかった。みつかったみつかった」


ローブを身に纏った人物は、ルーアの姿を見つけると、明るい声をあけげる。

誰だろうと不安を感じていたが、その声には聞き覚えがった。

自分の記憶を辿り、必死に答えを出そうとしたが、それよりも前に本人が自分で答えを教えてくれた。


「ひどいなぁ。貴族令嬢にこんな服着せるなんて」

「……メルフィー……様?」

「助けに来たよ、ルーア=クラッセン令嬢」

「助け?」


状況がよくわからないルーア。その時、彼のそばにやってきた男が、知らない男の首を持っていた。

はなしによれば、この馬車を引いていた男だそうだ。

メルフィーは適当に指示を出し、再びルーアに視線を向ける。


「ねぇルーア様。このままでいいの?」

「な、なにがですか?」

「……取り返しましょう。貴方の居場所を」

「私の……居場所?」

「えぇ……ソルネチア家の公爵夫人……ユリウス様の隣」


その時、諦めていたルーアの心が、徐々に熱を持ち始める。

本当に彼の隣に戻れるのか。彼の愛情を彼女から奪うことができるのか。

期待していいのだろうか。

期待したい。

彼女から。あの女から。欠陥品から。

彼の愛情を全て私のものに……

セレーネへの怒りや嫉妬。ユリウスへの強欲がルーアの中に込み上がっていく。

その姿にメルフィーはひどく満足げで、馬車に入って彼女の手を取る。


「その代わり、貴女にお願いしたいことがあるの」

「私に……ですか?」

「えぇ……貴女にしかできないことよ」


ふいに、ルーアは視界の端に赤い髪が揺れたような気がした。

だけど、すぐにメルフィーに視線を向け、彼女のお願いについて話を聞いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ