54話
「この度は、ルーアが申し訳ありませんでした」
応接室に戻ると、クラッセン夫妻は深々と頭を下げた。
セレーネは特に気にしてはいない。会った時から、セレーネは彼女のことを嫌っていた。
理由はもちろん、ユリウスに関することだった。
ユリウスも、セレーネが気にしないのであればと口にする。
結果をいえば、ルーアは1番過酷な修道院に行くことになった。
本当であれば、クレーフルトでの一軒の後、すぐに行かせるつもりだったが、当時後継者がいなかった侯爵家としては、後継を失うのは痛いと思い、彼女の更生を期待していたが、その判断が甘かったと侯爵は口にする。
「何よりフェネルへのひどい拒絶。フェネルのためにも、もっと早く動くべき出した」
「父上。あまりルーアを怒らないでください。ルーアの僕に対する怒りは尤もなのですから」
「庇う必要はない。そもそも、お前が戻ってきた時点であれには期待していない。お前のためにも、あれはどうにかするべきだったのだ」
「しかし……」
あれだけひどいことを言われたと言うのに、フェネルはルーアのことを庇う。
先ほど言ったように、彼にとって妹の怒りは正しことで、当然のことだと思っているのだろう。
あれでも、彼にとっては大事な妹。いや、きっと彼の記憶の中では昔のルーアの姿がひどく鮮明に残っているのだろう。
「さて、では本題に戻りましょう。フェネル様を元に戻す話ですが……ご両親の意思だけではなく、フェネル様の意思も確認しましょう」
「え……でしたら先ほどすでに……」
「いいえ。私が言っているのは、彼の本心です。フェネル様……貴方の本心をお聞かせください」
不安げな表情。フェネルは一度両親の顔を見るが、彼らの浮かべるかを見てそのまま俯いてしまう。だけど、セレーネが「大丈夫です」と口にして、優しい笑みを浮かべたのを見て、彼は温室で口にしたことをもう一度両親に話した。
「なので、僕は……」
「すまないフェネル」
侯爵夫妻は、そのままフェネルを抱きしめた。
息子の本心を聞いた夫妻は、自分たちの愚かさに悔い、何度も彼に謝罪の言葉を口にした。
その様子に、セレーネもユリウスも笑みをこぼした。
「ユリウス様、セレーネ様。わざわざ我が家までお越しくださって申し訳ないのですが……」
「はい」
「私たちは、フェネルをこのままに、また1から後継者として教育していこうと思います」
「……わかりました」
その後、晩餐をご馳走になって帰宅することに。
泊まっていくように誘われたが、2人はそれを断った。
薄暗い道のりでも、セレーネの魔法があればあたりは明るくなり、馬車が襲われでも撃退ができる。
「セレーネ」
「はい。フェネル様」
「ぜひ、またいらしてください」
「もちろんです」
「随分と、仲良くなったようですね」
「あ、もちろんユリウス様も」
その時、フェネルがユリウスに耳を貸して欲しいといい、そのまま目線を彼に合わせて耳打ちをする。
「安心してください。ユリウス様からセレーネ様を取る気をありません。だって、セレーネ様がルーアに怒ったのは、ユリウス様のためなのですから。すごく愛されていて、素敵です」
ニコッと笑みを浮かべるフェネルの顔を見て、ユリウスの顔が赤くなる。
なんの話かとセレーネは尋ねるが、「男同士の秘密」ということで、彼女に教えることはなかった。




