48話
セレーネ宛に届いたクラッセン家からの手紙には、セレーネに頼みたいことがあると書かれていた。
どうも、セレーネがユリウスの呪いを解いたこと、そして優れた魔法使いであることを耳にしてのことらしい。
そして、ルーアのことも書かれている。
娘が迷惑をかけたのに、手紙を送ったことへの謝罪。
「どうしてセレーネに手紙なんかを……」
「……おそらく、子息のことではないでしょうか?」
「子息って、お茶会で話していた、行方不明になっていた?」
それ以外で、今クラッセン家がセレーネに手紙を送ってくるとは思えなかった。
どういうお願いをしたいのかまでは書かれていなかったが、セレーネにお願いするということは、彼女の魔法を頼っているということだ。
「いくのかい?」
「そうですね。私は、クラッセン家はルーア様しか関わりがないのですが、ご両親はどのような方でしょうか」
「いいご夫婦よ。むしろ、あの夫婦からどうしてあんな子が生まれたのかと疑いたくなるほどに」
「母上、言い過ぎですよ」
「あら、我が家で好き勝手に振る舞ってた子だもの。このぐらいいいでしょ」
アニエスやユリウスの反応から、ルーアとは違って良い夫婦のようだ。なら、とりあえずお願いの内容を聞きに行き、その場で聞くか聞かないかを決めればいいとセレーネは判断した。
それでも、ユリウスやアニエスは心配だった。
クラッセン家にいくということは、ルーアに会う可能性もある。
今彼女は部屋で謹慎中だと聞いたが、セレーネが来ていることを耳にして逃げ出さないとも限らない。
一人で行かせるのは心配だ。
「僕もいくよ」
「え、そんな。ご迷惑では」
「婚約者を一人で行かせるわけにはいかないよ。何かあれば、僕がレーネを守るから」
「ユリウス様……」
「そうね。ユリウスがいれば安心ね。でも、油断しちゃダメよ。貴方がもとに戻ったことで、ルーアが何をしでかすかわかったものじゃないから」
「わかってます。それでも、セレーネが傷つかないことが優先です」
ユリウスはグッとセレーネを抱き寄せながらそう言ってきた。
夕食を終えた後、自室に戻ったセレーネは、クラッセン家に手紙を書いた。
頼みの内容を聞きに、ユリウスと共に屋敷を訪ねることを。
使用人に手紙を預け、彼女はそのままベットに入った。
ベットの中で、セレーネは今日のお茶会のことを思い出していた。
「そういえば、お二人とも目のことには触れなかったな」
魔法で宝石眼であることを隠しているものの、オッドアイであることには変わりない。だというのに、二人は特にそこに触れることなく、セレーネが楽しめる話をたくさんしてくださった。
「ケイシー様とお話しできたのは嬉しかったな。同性で、あんなに魔法の話ができたのは初めてだった」
アナスタシアも、恋愛の話だけではなく、ドレスや装飾品、人気のお店についても色々教えてくださった。
魔法にしか興味がなかったセレーネだが、ユイリウスと婚約してからは、彼の喜ぶ顔が見たいと思い、魔法以外のことにも興味を持ち始めていた。だから、おすすめしてもらったお店に、彼の喜ぶものがあればと考えたりもした。
今まで同世代の同性とは、メルフィーのこともあり全く話したことがなかった。
一回りほど違うとはいえ、同性と楽しい時間が過ごせたのは、セレーネにとっては初めての経験であり、忘れられない思い出になった。
「次のお茶会も、楽しみだな」




