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47話

「そういえば、お二人はお聞きになりましたか?」


楽しい会話を続けている仲、ふとアナスタシアがある噂を耳にしたと話した。

それはクラッセン家の子息が戻ってきたということだった。

クラッセン家といえば、ユリウスの幼馴染であるルーアの家。そこの子息は12年前に行方不明になっており、どこを探しても見つかることはなかった。

ただ、その子息がいたと思われる場所には見たことない花がたくさんあったと言われている。

そんな、行方不明になっていた息子が戻ってきた。12年間一体どこで何をしていたのかわからないまま。


「しかも不思議なことに、12年前と見た目が変わっていないそうなの」

「まぁ」

「見た目が変わってない……魔法かなにかなの?」

「さぁ。そこまではわかりませんわ。でも、変わらないって羨ましいですわ。私も若いままでいたい」

「アナスタシアは十分若いわよ」

「まぁ。ありがとうございます、アニエス様」


そんな夫人たちの話を聞きながら、セレーナは考えていた。

12年行方不明だった息子が、昔と変わらぬ姿で戻ってきた。いたと思われる場所には見たことない花。それらから、セレーネはある可能性を導き出した。


「セレーネ、貴女はこれについてどう思うかしら」

「クラッセン家のご子息についてでしょうか」

「えぇ。魔法が関係してると思う?それとも、別の何か」

「……おそらく、と思いますが……【チェンジリング】かと」

「チェンジリング?」

「それって、もしかしておとぎ話とかである、妖精の……」


チェンジリング。通称「取り替え」。

妖精が人間の子供を攫い。身代わりに妖精の子供を置いていくというもの。

おとぎ話とされているが、実は実際にそういうことが過去にも何度か起きているそうだ。

セレーネはクラッセン家のご子息もまたチェンジリング被害に遭い、今回12年ぶりにこちらに戻ることができたのかもしれない。

おそらく、おとぎ話に書かれている身代わりである妖精の子供は、今回の場合「見たことない花」なのかもしれないと推測をした。


「それが事実かどうかはわからないけど、そうね。書物にも記録は残っているもの。ありえない話ではないわ」

「妖精なんて素敵ね。私も誘拐されないかしら」

「チェンジリングは子供だけ。大人には起こらないわ」

「それは残念ですね。流石に子供には見えませんもの」

「それにしてもセレーネは、そういうものも読んでいるの?」

「はい。どんな書物でも、新たな魔法のヒントになりえますから」

「いい考えね。知識は、あればあるだけ幅を広げるものよ」

「情報と同じね。あればあるだけ手札が増える」


お茶会はまた和やかな会話に戻った。

セレーネも夫人たちの会話に混じりながら、お茶会を楽しみ、あっという間に時間は過ぎ去った。


「今日は楽しかったわ」

「はい。セレーネちゃん、よければまた一緒にお茶会をしましょ」

「是非。私も、お二人とお話しできて光栄です」

「学会の話も、忘れないでちょうだいね」

「はい!ご招待いただければ」


二人を見送り、セレーネはアニエスと共に屋敷の中に戻った。

小さな息が無意識にこぼれ、結構和んで話をしていたと思っていたが、やはりどこか緊張していたんだと思った。

そんな様子を見てアニエスは笑みを浮かべて肩を叩き。次も是非参加してほしいとお願いをした。


「お茶会は楽しかったかい」


その時、ユリウスが二人のもとにやってきた。

今日は一日、勉強をしているとセレーネは聞いていた。邪魔してはいけないと思い部屋に行かなかった。が、随分と疲弊しているようで、会うなり彼はセレーネを抱きしめた。


「ユリウス。そういうのは、人目のないところでしなさい」

「申し訳ありません母上。今日一日セレーネと顔を合わせていなかったので」

「そう。疲れているだろうし、夕飯前に少し休みなさい」

「はい。あ、それと。君宛の手紙を預かっている。念の為、中身は確認させてもらったけど」

「どなたからですか?」

「………クラッセン家からだ」


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