表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/65

38話

三大公爵家の一つ、ソルネチア家で開催された長男ユリウス=ソルネチアのパーティーは大々的に行われた。

多くの交流のある貴族たちが足を運び、彼とその婚約者の姿を今か今かと待っていた。

本人たちが顔を出すまで、会場は多くの噂話が飛び交う。

セレーネの悪い噂。ユリウスの呪いのこと。今回の婚約パーティーはあくまでも建前などなど。

心からお祝いするものもいれば、失脚させようと企むものもいた。


「皆の者、今日は我が息子とその婚約者の婚約パーティーに参加してくれてありがとう。ここにいるものも、噂を耳にして真偽を確かめにきたものもいるだろう。だからこそ、まずは私から私の気持ちを話そう」


後ろに控える息子、そして未来の娘を見た後、再び彼らにリュシュリシュから二人への祝福の言葉を述べる。


「私は誰よりも二人の幸せを願っている。二人が幸せになるためであれば、私は私ができることを全て行うつもりだ。私は……あの二人は幸せになるべき人間だと、そう思っているからだ」


ふわりと笑みを浮かべるリュシュリシュの顔を見て、会場がざわつく。かつて王の剣だった彼があのように笑っているところを見たことがなかった。だからこそ、答えは明白だった。公爵は、二人を愛しているのだと。


「では皆の者、我が息子とその婚約者であるセレーネ=ルーンナイトに拍手を」


会場に響く拍手の音。

緊張で表情が硬くなるセレーネ。そんな彼女の顔を見て、ユリウスが「大丈夫だよ」と声をかけ、一緒に前に出た。

歓喜の声が漏れる。

令嬢やご婦人はユリウスの姿に。令息と男性たちはセレーネの姿に。

美しい青白色せいはくしょくの二人をただただ神秘的なもののように見つめる。


「みなさん、この度は僕らの婚約パーティーに来てくださり、ありがとうございます。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、僕はつい先日まで、呪いによって蛇の姿になっており、屋敷から、部屋から一歩も外に出られない生活を送っていました」


ユリウスの言葉をセレーネはただ黙って聞いていた。

今までの彼との日々。それが今ではなんだか懐かしくも感じる。それと同時に、蛇の時とは違う感情を、今隣で話をする彼に抱いていることにも。


「セレーネは、自分にとって恩人であり、そんな僕でも愛してくれた人です」


ゆっくりとセレーネの手を取り、ユリウスは彼女の手の甲に口づけを交わす。

顔を上げた彼と目があい、浮かべた笑顔にセレーネの胸がどきりと大きく脈を打つ。


「僕は生涯、彼女に僕の愛情の全てを注ぎ続けるつもりです」


女性陣の黄色い声がある。それはまさにプロポーズのような言葉だった。

その言葉に何人のものが、二人の愛の深さを感じるだろうか。何人が、あの二人を引き裂くべきじゃないと感じただろうか。


「ではみなさん、パーティーを楽しんでください」



◇◇ ◇



「ルーンナイト令嬢」

「クローディア様!」


パーティーが開始されてすぐ、たくさんの貴族たちにそれぞれ囲まれて話をした。

人混みに疲れて主役にも関わらず隅にいる彼女に声をかけたのは、三大貴族の一つ、ロサ家の令嬢、クローディアだった。


「正規な婚約おめでとう。それと、彼の呪いが解けたことも」

「ありがとうございます。お一人ですか?」

「殿下も一緒。ほらあそこ」


クローディアが視線を向ける先には、令嬢たちと話をしているアルヴィスの姿が。

大丈夫かと視線を向けるが、彼女は特に気にした様子はない。が、どこか優越感に浸っているように見えたため、セレーネは何も言わなかった。

隣に立ち、一緒になって会場を見つめる。

もう一人の主役であるユリウスは、リュシュリシュたち家族と共に挨拶回りをしていた。セレーネも一緒になって回るはずだったが、予想以上に人に酔ってしまい、泣く泣く壁際に退散してしまった。


「それで、呪いが解けた原因はわかったのですか?」

「……さぁわかりません。あの時はいろいろなことが起きたので」


すでに、ソルネチア家がアンジュ・ルージュ・アムネシアに襲われたことは広まっている。

そして、その時にユリウスの呪いが解けたことも。

しかし、その原因についてまでは話していない。セレーネはなんとなくその原因を察していた。だが、それは決して口外する内容ではなかった。


「そう。まぁでも、いつかは知れ渡る可能性もあるし、ずるずる引きづらないようにね」

「はい。ありがとうございます。クローディア様」


ツンとした態度をとるが、どこか柔らかい雰囲気を漂わせる彼女にセレーネは思わず笑みをこぼした。


「クローディア」


その時、彼女を呼ぶ男性の姿があった。

クローティアと同じ髪色をした男性。学園の模様しもので何度かセレーネは目にしたことがある相手。


「あらお父様。いらしていたのね」

「あぁ。リュシュリシュに招待状をもらってな。初めましてセレーネ嬢。この度は正式な、というのはおかしいか。元々婚約はしていたのだから」

「いえ。パーティーにご参加いただき、ありがとうございます。ロサ公爵」


三大公爵家が一つ。ロサ家の現当主であり、次期王妃になるクローディアの父親。

娘のクローディアとは異なり、感情が表情に出る彼を見て、セレーネは心の中でクローディアは母親似だろうかと考えた。


「それと、まさか貴方様も来られるとは思っておりませんでした」

「……私も、リュシュリシュに誘われたのだよ。セレーネ嬢」

「ありがとうございます。エトワール公爵」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ