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37話

翌日、セレーネとユリウスは昨晩のことについて、両親とルキウスに説明をした。同時に、セレーネは自身の目。宝石眼であることも彼らに伝えた。


「そうか。まさか魔女が本当に生きていたとは……」

「自分も信じられません。まさか本当に、セレーネ様のいっていた通りだったとは」


同席していたルートンは王城でのことを思い出し、彼女の可能性が真実だったことに驚いた。

昨晩セレーネがユリウスの体を調べたところ、魔女の呪いは完全に消えていたことも報告した。今後、彼が再び白蛇に変わることはおそらくない。


「ふむ。となると、我々がやるべきことは一つだな」

「やるべきこと?」

「それは一体?」

「何をいっておる。お前らの婚約パーティーだ」


すでに二人は婚約していることは大々的に報告していたが、その特別な事情により、パーティーは開催されなかった。

本当なら結婚式を開きたいところだが、まずは正式に周りの貴族たちに二人のことをお披露目する必要があると考えたそうだ。


「そう不安がらなくてもいい。あくまで今回のパーティーはおまえたち二人のお披露目だ。長男の呪いが無事に解けたこと、その呪いを未来の妻が解いたという事実を伝えるのだ」

「依然、セレーネ嬢の評判は変わりません。しかし、父上の足のことや、王妹様の視力回復の功績は、多くの貴族に知れ渡っています」

「セレーネのありもしない腹立たしい噂を払拭するいい機会だ」


パーティーの主役であるユリウスやセレーネよりも、企画した本人たち並びに使用人たちの方が燃えていた。

セレーネは小さく「婚約か」と呟いた。

以前のセドリックとの婚約パーティーはまだ幼い頃に行われた。その時は、大々的に開かれたが、それ以降に開催されたパーティーにはセドリックの指示でセレーネは参加してない。久しぶりのパーティーに、ただただ不安を感じていた。


「では父上、一つお願いがあります」

「なんだ、ユリウス」

「パーティーで着る衣装は、僕の方で用意していいでしょうか。僕とセレーネの分」

「え……」

「あぁ構わない。では、それ以外はこちらで行おう」

「ありがとうございます」

「あ、あの!ユリウス様」

「クリフ、秘密裏にデザイナーを呼んでくれ。うんと口の固い相手を」

「かしこまりました」

「じゃあ僕らはお先に失礼します」


ユリウスに手を引かれ、セレーネたちは部屋を出た。

長い長い廊下を、ぎゅっと手を握りながら歩く。

不意に、ユリウスの歩みが止まり、ゆっくりと振り返る。その表情はどこか切なげというよりも、申し訳ないといっているようだった。


「勝手なこと、したかな?」

「え?」

「ドレス。セレーネがいやなら、やめるけど」

「いえ!そんな、ユリウス様に選んでもらえるのは、とても光栄です」

「ホント?」

「はい。ただ、久しぶりのパーティーで少し緊張していて」


その言葉を聞いて、ユリウスはくすくす笑った。

彼もまた、久々のパーティーだ。

それ以前に、部屋からも出たことがないから、セレーネよりもうんと緊張しているとユリウスは口にする。


「大丈夫。そんなに不安がらなくても、セレーネはみんなを魅了するほど美しい人だよ」

「それは、ユリウス様の方が……」

「なら、そんな僕を君は独り占めできるわけだ。いいね」

「っ!……なんだか、人になったユリウス様は、意地悪です」

「そうかな。でもたぶん、あの時よりもセレーネへの愛情が大きくなったからかもしれない」


ユリウスはそのままセレーネを抱き寄せ、口づけを交わす。

人間同士の口付け。蛇の時とは当たり前だけど違うその感覚に、酷く胸がいっぱいになる。



◇◇ ◇



「ご無沙汰しております、ユリウス様」

「マダムシャーリー。久しぶり。よく僕だってわかったね」


数時間後、クリフが呼んだデザイナーが屋敷を訪ねてきた。

マダムシャーリーと呼ばれる彼女は、国で最も有名なデザイナーで、貴族の間では彼女ドレスを身に纏えば、そのパーティーの花になると言われている。

ソルネチア家とは以前から交流があり、ユリウスも幼い頃に何着か服を作ってもらったことがあった。


「当時の黒髪も素敵ですが、今の白髪もよくお似合いです。セレーネ様もとても美しい青緑の髪です」

「あ、ありがとうございます」

「話は聞いてるかな」

「はい。今度、お二人の婚約パーティーがあり、それに着るお二人の衣装。と伺ってます」

「うん。できれば、お揃いがいいんだけど、いいものはあるかな」

「少し、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。部屋を訪ねてすぐ、お二人の姿を見てデザインが浮かびまして」

「構わないよ。クリフ、お茶の準備をお願い」


向かいの席に座ったマダムシャーリーは自前で持ってきた紙とペンと色付きの鉛筆を走らせて衣装をデザインする。

完成するまで、ユリウスとセレーネは黙ってお茶とお菓子を口に運ぶ。そして1時間後、ペンを置いた彼女は、テーブルに2枚の紙を置いた。


「いかがでしょうか」

「わぁ……素敵ですね……」

「実はここに来る前に、離れのお庭を拝見しました。お二人とも、青いアネモネがお好きとのことで。衣装にもそれをいれてみました」

「いいね。白と青色。僕は青多めで、セレーネは白多め。とても綺麗なデザインだ」

「ご満足いただけたようで嬉しいです。問題なければ、早速作業に取り掛かろうと思います。サイズの方、計らせていただきますね」

「あぁ頼むよ」


セレーネとユリウスのサイズを測り終わった後、マダムシャーリーは屋敷を後にした。

フッと一息つくが、まだ緊張は消えてない。

久々のパーティーは、そんな彼女の心情などお構いなしに、あっという間に訪れた。


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