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29話

「セレーネ様。お手紙です」


お城から戻ってきて数日後。

今日も1日ユリウスと共に過ごしていた彼女の元に、少しだけ慌ただしくルートンが訪ねてきた。

彼の手には手紙。セレーネ宛のものだった。


「レオンお兄さまからですね」

「なんと書いてあるんだい」


封を開け、セレーネは一文字一文字丁寧に文章を読んんでいく。その顔はひどく驚いていたが、とても嬉しそうな表情をしていた。


「無事に子供が産まれたそうです」

「おぉー!」

「そうなんですね。おめでとうございます」

「生まれたのは男の子だそうで、顔を見に実家に帰ってこいとのことです」

「そういうことなら帰るといいよ。僕も行けたらいいんだが」

「……呪いが解けたら、優しく触れてあげてください」

「……あぁ」


ふわふわとした二人の空間に、そばに立っていたルートンはなんともままならない気持ちになっていた。

軽い身支度の後、ソルネチア家の人たちに事情を話して許可をもらい、魔法を使用して一瞬で実家に戻った。


「お兄様、戻りました」

「っ!セレーネ!?」

「おまっ、いつ帰ってきた」

「さっきです」

「さっきって……まさか魔法を使ったのか」

「はい。早く甥っ子に会いたくて」


セレーネが後ろを覗くと、ベットの上にいるエフィニアの腕の中には布の塊が。あの中に赤子がいるんだと、セレーネは少し目を輝かせる。


「あら、セレーネちゃん。お帰りなさい」

「ただいま戻りました。お姉様、無事の出産。おめでとうございます」

「ありがとう。それじゃあセレーネちゃん。この子のこと抱っこしてあげて」

「あ、はい」


ゆっくりと、恐る恐るエフィニアに近づくと、遠くからはただの布の塊だったそこには、確かに小さな命が存在していた。

セレーネはルーンナイト家では末っ子。自分よりも小さな身内ができるのは初めてだった。

エフィニアにサポートしてもらいながら、ゆっくりと甥っ子を抱き上げる。

ずしりとくる重さ。そして、腕に感じる暖かさ。新しく、ルーンナイト家に生まれた子供。セレーネにとっては、弟ができたようで嬉しかった。


「お姉様。この子に守りの祝福を与えてもいいですか?」

「まぁセレーネちゃんの?それはとても素敵だわ」

「いいのか?セレーネ」

「はい。お兄様の大事な子供ですし、私にとっても愛しい子です」


エフィニアに子を渡し、セレーネは額に指先を当てて呪文を唱える。

どこからか金の音が響き、赤子に光が降り注いだ。

しばらくして指先を話し、セレーネは優しく甥っ子の頭を撫でてあげた。


「お兄様のような立派な子になるのよ」

「ありがとうセレーネちゃん」

「ありがとうセレーネ」

「いいえ。改めてお二人とも、第一子の誕生。おめでとうございます」


それから数日間、セレーネは実家に帰ることになった。

ソルネチア家からも、実家に帰るならしばらくゆっくりしてくるといいと言われていたからだ。

セレーネは1日のほとんどをエフィニアと甥っ子と過ごしていた。

自分よりも下の子ができて嬉しいのか、彼女は必要以上に子に構っていた。


「セレーネがあんなに魔法以外のことに夢中になるなんてな」

「末っ子だったからな。それに、あの姿を見ていると、あの子がちゃんと人間なんだと思い得て嬉しいよ」


小さい頃から魔法の研究ばかりで、それを見ていると少しだけ家族全員が不安を抱いていた。だから今、あのようにセレーネが甥っ子を可愛がっている姿を見ていると、とても安心する。


「あ、あう……」

「こら、目に手を伸ばさないの。危ないでしょ」

「……もしかして、私の目が違うってわかるんでしょうか?


実家だし、今ぐらいいかと思い、セレーネは魔法を解いて宝石眼を甥っ子に見せてあげた。すると、さっきよりも嬉しそうにキャッキャと笑い、目に手を伸ばしてくる。


「あはは、そんなに嬉しそうにして」

「こーら、ダメでしょ」

「ありがとう。そうやって嬉しそうにしてくれて」

「うー?」


なにが?と言いたげな表情をする甥っ子に、セレーネは笑みを浮かべて抱っこをしてあげる。優しく頭を撫で、そのままするりと頬を撫でてあげれば、幸せそうな顔をする。


「……セレーネちゃんの子供も、きっと素敵な子が生まれるでしょうね」

「私の……子供……」

「ユリウス様とセレーネちゃんの子供。きっと優秀で優しい子が生まれてくるわね」

「……そう、でしょうか」


ユリウスとの子。つまり、彼とそういうことをするということ。あまり考えてはいなかったが、いざそれを聞いて想像してしまうと、セレーネはの顔は真っ赤になる。

そんな彼女の顔を見てエフィニアはニヤニヤと笑みを浮かべていた。


「セレーネ様!!」


その時、使用人が急いだように二人の元へとやってきた。

何事かと尋ねれば、急いで来たメイドは洗い息をなんとか落ち着かせ、すっと背筋を正すが、表情はひどく険しいものだった。


「それが……」

「なに?」

「セドリック様とメルフィー様がいらしゃってます」


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