28話
女は鼻歌混じりに街中を歩いていた。
見目麗しいその姿は、すれ違う男たちを魅了した。
「一つもらっていいかしら」
「ぇ……あぁはい」
女が微笑めば、露店の店主はその美しいように魅了されて呆然とした。
見かけない、ルビーのような真っ赤な髪と瞳をした女性。男が好きそうな凹凸のある体。スカートのスリットから伸びる白く長い足。
男たちは足を止めて、みなじっと彼女を見つめていた。
「み、見ない人だね。外から来たのかい?」
「えぇ。長年ここを離れていたの。随分と変わったみたいね」
「あんたがどれぐらい外に出ていたかは知らないが、まぁ色々と少しずつ変わっていったよ」
「ふーん。そういえば、次の王はもう決まっているの?」
渡された商品をその場で食べながら、女性は露店の男に尋ねる。
見た目は随分と若く見えるが、彼女の言葉から長年の意味をなんとなく理解し、もしかしたら長寿の種族かもしれないと悟った。
「次期国王は当然アルヴィス様だ。噂じゃ、すでに公務も行なっているとか」
「へぇー。まぁ兄が死んだのだから仕方ないか」
「兄?何を言ってるんだ?現国王の息子はアルヴィス様だけで、ご兄弟はいないぞ?」
「………それは本当?」
「あぁ。兄弟がいるなんて話、聞いていない」
「……」
「あ、アルヴィス様だ」
その時街に王族の紋章のついた馬車がやってきて、その中からアルヴィスが出てきた。
視察で街にやってきた彼は、街の人々に囲まれ、笑顔を浮かべる。
「婚約者もすでに決まっていて、二人ともとても優秀な方達だよ」
「……どういうこと……」
「ん?どうし……ひっ!」
様子がおかしな女に声をかけようとしたが、男は女の目を見て悲鳴を上げた。
それは怒りだった。女は目の前にいる男。次期国王となるアルヴィスに怒りを向けていた。
女は体を翻し、その場を後にした。
そして、長く美しい爪をガリっと噛み砕いた。
「あれから私の魔力が感じない。そんなあり得ない。呪いを解いたというの?人間如きが、私の呪いを。いいえ、あり得ないわ」
女は早歩きで人並みをかき分けて進む。
込み上がる感情は、呪いと同じ。愛とは言えないものだった。
「解けるはずがない。私の呪いは……愛は……絶対に消えることはない……」




