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25話

クローディア・ロサ公爵令嬢。

三大公爵家が一つ、ロサ家の娘であり次期国王であるアルヴィスの婚約者。つまり、次期王妃となる令嬢。

文武両道で、魔法は水魔法とそこから派生した氷魔法を得意としている。

優秀で、淑女としての気品もあり、次期王妃として申し分ない女性ではあるが、彼女の淑女としての振る舞いは少しばかり冷徹できつい印象を与えており、人々を少しだけ遠ざけていた。


「クローディア様。ルーナイト伯爵令嬢をお連れいたしました」

「……ご苦労様」


朝早く、メイドがセレーナを迎えに行き、ルートンと共にその後をついていく。

送られてきた招待状は、彼女からのお茶会だった。

王城内にある複数の庭園。その一つであるバラの庭園に送り主であるクローディアの姿があった。

優雅にお茶を飲むその姿は、まさに貴族として美しい立ち居振る舞いだった。

セレーネも、後ろに控えるルートンでさえ彼女に見惚れていた。


「突然招待状を送ってごめんなさい、ルーンナイト令嬢」

「いえ、本日はご招待ありがとうございます。改めて、ルーンナイト伯爵家長女、セレーナ=ルーンナイトと申します」

「貴女のことは聞いているわ。さぁ、座って」


セレーナは、空席になっているクローディアの向かいの席に腰を下ろした。

お茶会といわれ、他にも令嬢がいると思ったが、招待されたお茶会に参加しているのは主催者のクローディアと招待されたセレーネの二人だけだった。


「好きに食べて構わないわ。紅茶はお好き?」

「はい」

「私のお気に入りなの、貴女も気に入ってくれると嬉しいわ」

「いただきます」


出された紅茶はたくさんのフルーツの香りが漂い、特に桃の香りが強かった。

セレーネは紅茶を一口飲んだが、今まで飲んだどの紅茶よりも深く、そしてその甘さに驚いた。


「気に入ってもらえたようで良かったわ。貴女の好みがわからないから、私の好きなものばかり準備させてしまったから」

「いえ。クローディア様にご招待していただき、とても光栄です」


通常、次期王妃であるクローディアとセレーネが顔を合わせることも言葉を交わすこともはない。身分の違いもあるが、そもそもセレーネはあまり社交場を好まない。そんな時間があるなら、魔法や薬草の実験に時間を使いたいタイプの人間だからだ。

同じ貴族でも、二人は対極的な存在なのだ。


「……本当に、オッドアイなのね」

「……すみません、不快にさせてしまったでしょうか」


クローディアから溢れた言葉に、セレーネはすぐに苦笑しながらそう返した。

セレーネを招待した彼女が、彼女にまつわる噂を知らないはずがない。

彼女は次期王妃。目障りな人間を処理するために、もしかしたら自分は呼ばれたのではないかと、少し不安になる。


「貴女の噂は聞いているわ。しかし、悪意があって今の言葉を言ったわけではないわ。素直な感想よ。誤解させるようなこと言ってごめんなさい」

「っ!クローディア様が謝るようなことではありません!オッドアイは珍しいですから、つい口にしてもおかしくありません」

「……私はね、この国に広がる差別を将来的に無くしたいと思ってるの」


クローディアは語る。

昔に比べればオッドアイや双子の差別は少なくなったが、無くなったわけではない。

まだ、差別はこの国に根強く残っている。彼女は王妃になったら、その差別を少なくではなく、完全に無くしたいと考えている。


「どうして私が無くしたいと思うか、わかるかしら」

「……弟君のこと、でしょうか」

「まぁ、有名な話だから貴女も知っているわよね」


ロサ家の双子の令息。クローディアの実の弟である彼らは、家族や使用人からはたくさんの愛情をその身に受けたが、親戚やその他の貴族からは忌み嫌われていた。それは、彼らが双子として生まれたからだった。

セレーネのオッドアイ同様、双子もまた人間としての不完全と言われており、差別の対象だった。

しかし、双子の女神の存在によってその差別は神殿により大きく悪であることが国としても認められ、その差別は少なくなった。だが、当然人の考えがそうすぐに変わるはずもなく、令息たちは未だに親戚や一部の貴族に忌み嫌われている。


「弟たちのためにも、私は王妃にならないといけない。何がなんでも。だからこそ、少しの不安要素もあってはいけない」


クローディアはカップを置くと、真っ直ぐにセレーネをみた。

その瞳は真剣で、同時にひどく警戒しているようにも見えた。


「セレーネ=ルーンナイト。貴女は何しにこの王城に、アルヴィス様とやってきたのかしら」


その言葉でセレーネは察した。

彼女が自分をお茶会に誘った理由。クローディアは、セレーネが自分の立場を奪おうとしているのではないかと疑っている。

伯爵令嬢である彼女が王太子と共に城に来るなど普通はあり得ないことだ。だからこそ彼女は焦り、確かめずにはいられなかったのだろう。

ただ、セレーネもそれを誤解だといいたいが、その誤解を解くためには事情を話さないといけない。それをセレーネの一存で口にしていいものかと、彼女自身がおしだまる。だが、それが余計にクローディアに誤解を与える。


「やはり……殿下は私ではなく、貴女を……」

「誤解です、クローディア様。私にはすでに婚約者であるユリウス様がいます。今回私が王城に来たのは、王命によるものです。殿下は、それをソルネチア家まで伝えに来たのです」

「なぜ陛下が貴女を?確かに婚約しているとはいえ、貴女は伯爵家の娘。陛下が貴女個人に用があるとは思えません」


彼女の警戒は増すばかり。セレーネはルートンに視線を向けるが、彼は首を振る。やはり、勝手に口にすることはできない。


「素敵なお茶会ね、私も混ぜてくれないかしら」


不意に聞こえた声に、セレーネとクローディア。その場にいた使用人たちの視線が一気に同じ方向をみた。

メイドに大きな日傘を持ってもらい、別のメイドに車椅子を押してもらいながら優しい笑みを浮かべる女性。


「ラベンダー様……」


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