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22話

翌日の早朝。身支度を整えたセレーネは、公爵家の者たちに見送られながら、王都へと向かった。

護衛として、ルートンが付いてきており、彼が不在の間の別邸警備は、他の騎士たちが務めることになった。

ユリウスにもしっかりと挨拶をしたが、セレーネはもうすでに寂しさを感じていた。


「滞在の間は、王城の書庫を自由に見ていただいて構いません。もしかしたら、ユリウスの呪いを解く方法があるかもしれません」

「お気遣いありがとうございます」


しかし、セレーネは少し緊張していた。

今まで一度として王城に足を運んだことがなかった。

セレーネ自身のことを知っている者がいるかもわからない王城で、次期国王であるアルヴィスと一緒に歩くことでよからぬ噂が立たないか不安だった。

特に、彼の婚約者に対して。


「あの、今回のことはロサ令嬢はご存知なのですか?」

「今回のこと?君が王城に来ることか?」

「はい。その、一応殿下は婚約者がいらっしゃる身。ほかの令嬢と一緒にいるところを見られては、良からぬ誤解が生まれるのではないかと」

「気遣い感謝する。とはいえ、今回は陛下の命令だから仕方がない。俺自身は普段そういうのは気をつけている」


確かに、セレーネの耳にアルヴィスが婚約者以外との不貞疑惑の噂が流れることはなかった。兄であるサイラスからもそう言った話はないし、むしろ奪ってやろうと令嬢たちの方からアルヴィスに突撃する者がいると。


「まぁ、もしかしたらクローディアからお茶会の誘いがあるかと思うが、その時は参加してやってくれ。きつい言い方をされると思うが、根はいい子なんだ」

「はい。兄から話は聞いております。殿下が、ロサ令嬢を慕っていると」

「うっ……サイラスのやつはそんな話までしているのか」

「はい。まぁ私が魔法の研究をしている時なので、基本的に話半分ではありましたが」


ソルネチア領土を出て、馬車に揺られて数時間。休憩のため、一度馬車を止めて軽い食事をとった。

王都に行ったことがあれば、テレポートを使って移動することもできたが、一度として足を運んだことがなかった。

というのも、元婚約者であるセドリックがそれを禁じていたということもあった。


「お前みたいな人間が王都に行けば、婚約者である俺が笑いものになってしまう!」


そういうこともあり、セレーネは自分の領土とハーストン侯爵の領土しか足を運んだことがなかった。

ソルネチア領土から王都までは1日と半日かかる距離。その間小さな町があるためそこで一泊するという話だったが、少しでも早く向かうべきだといい、セレーネ自身が野宿することを了承した。


「大丈夫ですよ。幼い頃、魔法の実験をするための材料集めで、夜中に森に入ったことがあって、いつもそこで寝ていたんです」

「そ、そうなのですか……」

「私はほかの令嬢と違って、随分と逞しいので。なので、気を遣わないでください」


日が暮れたこと、予定通り野宿を行い、セレーネは馬車の中で仮眠をとった。

最初はアルヴィスも馬車の中でと言ったが、お互い婚約者がいる身だからあらぬ誤解があってはいけないと、気を遣って彼は外で寝ることになった。

ではせめてと、空間魔法で収納していた野外用のテントを差し出した。

ならセレーネがこっちにと言ったが、自分は大丈夫だからと馬車で仮眠をとった。

日が登り、朝食を済ませてまた馬車は動き出す。

特に魔物や賊に襲われることもなく、セレーネたちは無事に王都へと辿り着いた。



◇◇ ◇


王城についてすぐ、セレーネは国王陛下との謁見が行われた。

アルヴィスの後ろをついていき、多くの騎士に囲まれながら歩いているが、当然セレーネの存在を知らない者たちはコソコソと誰だろうと口にし、中にはセレーネのオッドアイについて口にする者もおり、その度にアルヴィスが咎めていた。


「陛下!アルヴィス殿下とセレーネ=ルーンナイト伯爵令嬢がお越しになりました!」


扉の前の騎士の声かけと同時にゆっくりと扉が開き、2人は中に入っていく。

向かい側、椅子に座る国王陛下に2人は挨拶をする。


「表をあげよ。アルヴィス、ご苦労であった」

「いえ、滅相もありません」

「ルーンナイト嬢も、遠いところ王都まできてくれて感謝する」

「陛下の命とあれば、馳せ参じます」

「うむ。今回主を呼んだのには理由がある。主は、わしに妹がいることを知っているか」


その言葉を聞いて、アルヴィスの表情が変わる。

その様子を横目に見た後、セレーネは陛下の言葉を肯定した。

現国王には、兄と妹がいた。

兄は、現在ユリウスが受けている呪いによって亡くなり、妹はある日を境にその姿を見なくなった。


「主が、わしの元剣であるリュシュリシュの足を治したと聞いてな、君にぜひ頼みたいと思ってな」

「頼み、というのは……」

「主に、妹の治療をしてほしいのだ」


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