21話
「陛下の命であれば致し方がないな」
屋敷に着いてすぐ、アルヴィスはリュシュリシュに訪問の理由を話した。
馬車の中でも話してた通り、アルヴィス自身も詳しい内容を聞いておらず、セレーネを王城に連れてくるように言われているだけだった。
「もちろん、セレーネ嬢を傷つけるような行為は致しません」
「殿下や陛下がそのようなことをするとは思っていません。セレーネのことを頼みます」
「わかりました」
今から王城に行くにはもう時間は遅すぎるため、出発は明日。アルヴィスは公爵家の本邸で一泊することになった。
「こちらです。殿下」
食事を終えた後、セレーネはアルヴィスを連れて別邸へと戻ってきた。
ユリウスにはすでにアルヴィスが公爵邸にき来ていることや、その理由も伝えてもらっている。
セレーネは軽く扉をノックし、ゆっくりと扉を開く。
「おかえりレーネ」
「ただいま戻りました、ユリ様。帰宅してすぐに戻れずすみません」
「いえ」
「それで、お客様をお連れしました」
セレーネが扉の方に目をむければ、影に隠れていたアルヴィスがゆっくりと姿を表す。
「……久しぶりだね、アルヴィス」
「……あぁ……変わりないか、ユリウス」
「あぁ。僕は変わらず元気だよ」
蛇の姿でもわかるほどの笑顔。
その顔を見て、アルヴィスは「そうか」と呟きながらも、どこか罪悪感を感じていた。
セレーネが声をかけようとしたが、それよりも先に口を開いたのはユリウスだった。
「アルヴィス、僕に申し訳ないと思わないでくれ。この姿になることを選んだのは、僕の意思だ」
「……しかし」
「僕はこの選択をして良かったと思ってる。おかげで僕は、素敵な婚約者に巡り会えた。君にそんな顔をされては、自分の選択が間違ってたと思ってしまう。だから……」
ユリウスはゆっくりと首を伸ばして、アルヴィスに顔を近づける。
急に来た顔に、アルヴィスは一瞬びくりと体を震わせた。
「……僕が怖いかい?」
「……いや、怖くない。お前は……どんな姿でも、俺の知っているお前だ。すまない……すまないユリウス」
「だから謝らないでくれ。とはいえ、その謝罪は違う意味だとわかっているから、受け入れるよ」
涙を流すアルヴィス。そんな彼を、ユリウスが優しい顔で、優しく慰めていた。




