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20話

セレーネはアルヴィスの乗ってきた馬車に乗って公爵家へと戻って行く途中であった。

アルヴィス・イグニス=エストレア。

エストレア王国の唯一の王子であり、元々ユリウスが受けている呪いを受けるはずだった男。

セレーネは実際に彼と話したことはなかったが、学院の模様しもので何度か訪れている姿を見たことがあった。


「それで殿下、なぜ公爵領に?ユリウス様に会いに来られたのでしょうか」

「確かにユリウスにも会いにきたが、今回そっちはおまけみたいなものだ」

「おまけ?」

「俺がここにきたのは、君に用があったから」

「私、ですか?」

「あぁ。父上が君と話をしたいと言われている」

「陛下、が、ですか?」


なぜ国王陛下が自分を呼ぶのかわからなかった。面識も当然ないし、なにか問題を起こしたりなどもしていない。

アルヴィスも、なぜ国王がセレーネを呼んだのかわからず、彼がこうやってお使いを頼まれたのはあくまでもユリウスと友人関係にあるからだと言うことだ。


「何か悪いことではないと思うよ。父上はむやみやたらに人を切り捨てるような人じゃない。そう怯えることはないよ」

「……はい」

「ところで、その薬草はなんだ?」


アルヴィスの視線は、隣に腰掛けているルートンの腕の中にある薬草に向けられる。

セレーネが魔法薬をつくための材料だと答えると、興味深く見つめてきた。


「サイラスから、妹は本当に魔法の才能に恵まれていると、まるで自分のことのように話していたが、あながち間違いではないようだな」


お互いに面識はないものの、共通の知り合いは存在した。それが、セレーネの兄であり、アルヴィスの護衛騎士であるサイラスだった。


「兄は、護衛騎士としてちゃんとやってますか?」

「ん?あぁ、まぁそうだな。少し単純な性格だが、だからこそそれに救われることはある。剣の腕もいいし、優秀な護衛だよ。今日は君に会いに行くから、護衛から外したが」


何かと妹のことになるとすぐに兄としてのスイッチが入ってめんどうになるからと、笑って答えるアルヴィス。その過保護に火がついたのは、おそらくセドリックとの婚約破棄がきっかけだろう。


「ところで令嬢。ユリウスは元気か?」

「え?あ、はい。元気に過ごされています」

「そうか……なにか、俺のことを言っていなかったか?」

「いえ、特には」

「そうか……」


先ほどまでの表情からいっぺん。彼の顔には不安が張り付いていた。目を逸らし、自信を抱き締めるような姿勢。

アルヴィスとユリウスが友人関係だと言うことは当然知っている。とても仲のいい友人同士で、だからこそユリウスはその友人を守るために、呪いを代わりに受けたのだ。


「ユリウス様は殿下を恨んでいません。そう言う方だと、殿下が一番よく知っているのでは?」

「……そう、だな……あいつはそう言うやつだ。だからこそ、俺は罪悪感でいっぱいになる」


普通王族は、人前で涙を流すことはなかった。だけど、彼らもまた人間。感情がないわけではない。突然として込み上がってくる感情をそう簡単に止めることはできない。


「俺のせいで、ユリウスが外に出れなくなった。悪い噂を流されている。それを耳にするたびに、俺の感情がズタズタになっていく。会いたくても、会えないんだ」

「……殿下。安心してください。ユリウス様の呪いは私が解いてみせます」

「セレーネ嬢」

「元々私は、ユリウス様の呪いを解くために婚約しました。だけど、今は心の底から彼を愛しています」

「……蛇の姿でもか」

「もちろんです。どんな姿でも、ユリウス様が素敵な方ということには変わりありません。


そもそもセレーネは一目見た瞬間からユリウスに恋をしていた。

彼を愛し、彼に寄り添い、彼の幸せを願った。

今までのどの令嬢よりも、ユリウスのことを愛している人物だ。


「……ユリウスは、素敵な令嬢に出会えたのだな」

「光栄です。ユリウス様のご友人である殿下にそう言ってもらえて」


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