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14話

翌日、セレーネは別邸の使用人と本邸から手伝いに来た数名の使用人たちとともに、花壇の制作を行っていた。

花壇のデザインは、セレーネとユリウスの2人ですでに決めており、窓から顔を出したユリウスの指示のもと、みんなで協力して花壇作りを行った。

使用人たちには、セレーネもユリウスと一緒に屋敷の中にいるように言われたが、ユリウスのための花壇でもあるため、自分も制作に携わりたいと、一緒になって土を掘ったりレンガを並べたりした。


「レーネ、鼻に土がついてるよ」

「え、本当ですか?」

「うん。タオルを取ってくるから、少し待っていて」


ユリウスはそのまま窓から首を部屋の中に戻していき、セレーネは彼がくるのを待った。

多くの使用人たちのおかげで、花壇は早い段階で完成し、あとは種を植えるだけとなった。

今は、別邸の使用人が作った軽食をみんなで一緒に食べているところだった。


「セレーネ様、お疲れ様です」

「あ、クリフさん。クリフさんもお疲れ様です」

「セレーネ様。どうか私のことは、クリフと呼び捨てで。貴方様は、ユリウス様の婚約者様なのですから」


セレーネに声をかけてきた老紳士、クリフは手にしていたグラスをセレーネに手渡した。よく冷えたフルーツの香りがする紅茶は、疲れた体をひどく癒す。

彼は、セレーネが初めてソルネチア家に訪れた際に案内をしてくれた人物。

長年公爵へに仕えており、その振る舞いはとても洗練されている。


「年甲斐もなく、私も張り切ってしまいました」

「それはよかっったです」

「はい。それにしても、ユリウス様があのように窓から顔を出されている様子をまた見れるとは……手伝いに来てよかったです」


クリフも、彼がなぜ窓から顔を出さないのか、その理由を知っている数少ない人物の1人。

長年支えているのであれば、当然生まれた時からユリウスのことをみていただろう。

クリフからすれば、ユリウスは仕える相手であり、孫のような存在なのだろう。


「セレーネ様がいらっしゃってからは、ユリウス様はとても楽しそうです」

「そう、でしょうか……なんだか、私が振り回してるようにも感じますが」

「よろしいのです。ユリウス様は、自分よりも他人を優先されますから、セレーネ様がユリウス様を優先されるのは、彼の方にとってはよいことだと私は思います」


クリフの言葉に、セレーネは少しだけいいのかなと思ってしまうが、自分の行動がユリウスのためになっているなら嬉しいなとも思った。


「レーネ、タオルを……あれ、2人で何の話をしていたの?」

「いえいえ。年寄りの世間話に付き合ってもらっていたところです」

「年寄りって……クリフはまだまだ元気だろう」

「そうですね。叶うことなら、ユリウス様やルキウス様のお子様を拝んでから死にたいものです」

「縁起でもないことを……」


◇◇◇


休憩後、種をそれぞれ指定の場所に植えた後、セレーネが魔法を発動する。

その魔法は、植物の成長を早める魔法で、まるで時がそこだけ進んでいるように、蒔いたばかり種から芽が出始め、どんどん成長していって蕾ができ、そのまま色鮮やかな花を咲かせた。


「これは見事な」

「とても綺麗ですね」


それは、まるで花でできた絵画だった。

四角く仕切られた花壇の中、敷き詰められた花によって窓からは一つの絵のように見える。

青いアネモネが空を描き、色とりどりの花が地上を鮮やかに彩る光景。


「綺麗だね」

「ふふっ。今でも十分綺麗ですが、夜はもっと綺麗ですよ。なんたって、特別な魔法をかけているんですから」

「特別な魔法?」

「夜まで秘密です」

「ほぉ、これは美しいな」


その時、突如としてリュシュリシュとアニエス、ルキウスが別邸へとやってきた。

使用人たちは頭を下げるが、すぐにリュシュリシュが頭を上げるように指示を出した。


「父上、母上……」

「ユリウス、変わりないか」

「……はい。こんな姿のご挨拶申し訳ありません」

「よい。私こそ、会いに来れなくてすまない。どうしても私は、お前の自己犠牲を受け入れられなくて……」

「自己犠牲なんて……僕はただ、友人を守りたかっただけです」

「……そうだな、お前はそういう奴だったな」


リュシュリシュはゆっくりとユリウスに近づき、彼の頬に手を伸ばして優しく撫でてあげた。


「今のお前は、こんな感じなのだな」


呪いにかかってから、会うのはもちろん、今のように触れることもなかった。

今こうやって、ソルネチア家全員が揃うのは、随分と久々なことだった。

リュシュリシュに続き、アニエスもユリウスに触れる。

家族の感動的瞬間を、セレーネは嬉しそうに眺めていた。


「セレーネ、何をしている。こっちに来なさい」

「あ、えっと……」

「遠慮することはない。お前はもう、私たちの家族なのだ」

「家族……」


その言葉を聞いて、セレーネは自身の瞳に触れた。

ずっとこのオッドアイのせいで欠陥令嬢を言われ、人々に忌み嫌われた。

元婚約者も嫌悪し、自称親友にもこの目を理由に貶められたことは何度もあった。

だけど、今目の前にいる家族は、噂のことも気にせず結婚もしていなくてただの婚約者であるセレーネをすでに家族として認め、受け入れてくれている。


「隠し事は……しちゃダメだよね」


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