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10話

「そうか、ユリウスが……」


朝食を終えた後、セレーネはそのままリュシュリシュの元に足を運んだ。

彼が別の方法での呪いを望まず、嘘か本当かわからない、話通りの解き方を信じると。


「確かに、セレーネには無理をさせていると思っていた。ユリウスがそれを望むなら、私からは何も文句はない」

「申し訳ありません。私の力不足で」

「いや、気にする必要はない。それに、もし話通りの解き方であれば、私は2人であれば問題ないと思っている」


キョトンとするセレーネに反し、リュシュリシュはわずかに苦笑いを浮かべる。

今まで、使用人に他の令嬢もユリウスの姿を受け入れる者はいなかった。

セレーネだけが彼を受け入れ、寄り添い続けている。

2人の様子は、別邸の使用人たちが随時彼に報告している。

見た目はさておき、雰囲気は愛し合う者同士のそれだと聞いている。

きっと、ことはいい方向に進むかもしれないと思っている。


「さて、あまりお前をここに引き留めては、ユリウスが寂しがるな。下がっていいぞ」

「はい、失礼致します」


一礼をし、セレーネはそのままリュシュリシュの元を後にした。

今日も今日とて天気がいい。もしユリウスが外に出れるのであれば、一緒に散歩がしていなと、セレーネはふと思った。


「あら、セレーネ」

「あ、奥様。おはようございます」

「おはよう。主人のところに行っていた?」

「はい。実は……」


別邸に戻る途中、アニエスと顔を合わせたセレーネは、リュシュリシュに話したことと同じことを彼女にも話した。反応は彼と同じで、彼と同じように2人なら大丈夫だと笑みを浮かべていた。


「ところで奥様、とても綺麗な花をお持ちですね。確か、真珠草でしたよね」

「まぁ、さすが博識ね。実は、お友達にいただいたの。昼間は日光に。夜は月光に照らさないといけないから、お世話が大変なのだけど、とても綺麗でね」


図鑑でセレーネ自身も見たことがあった。

枝に真珠のような球体の花が咲いていることから名付けられた者だった。

双子の女神が愛した花と言われており、どうしてそのように言われるようになったのか。それは、アニエスも話した通りその育て方。

日光と月光を浴びることでその美しさを保ち続ける。

昼間に女神ディースが日の光を注ぎ、月夜に女神のクスが月の光を注いで育てたと言われていている。


「太陽の位置に合わせて、場所を移動させないといけなくて、敷地内を歩きっぱなしなの。まぁいい運動になるからいいのだけれど」

「そうなのですね」

「セレーネはお花に興味ある?」

「そうですね。植物は魔法の実験でもよく使いますし、学生時代は香水も作ったことがあります」

「まぁそうなの。だったら、別邸で育ててみたら?スペースはあるはずだから」

「よろしいのですか?」

「えぇ。ちょうどルキウスが護衛を連れて街に行くから、それについて行くといいわ。あの子には私から伝えておくから」

「ありがとうございます。もし、満開になったらぜひ奥様も見にきてください」

「えぇ。その時は足を運ばせてもらうわ」


その後、アニエスと別れたセレーネはすぐに別邸に戻った。

別邸の外をぐるぐると歩き回って、良さそうな場所を探した。


「あ……ここ」


一番日の光を浴びる場所。そこは、ちょうどユリウスの部屋がある場所だった。

セレーネの頭の中に光景が広がる。ユリウスの部屋の窓を開けて広がる、花畑の光景が。


「ユリ様!」


外から窓を開けて、中にいるユリウスに声をかける。

突然のことで一緒んびっくりしたが、すぐに頭を窓のほうに伸ばして彼女元へと向かった。


「どうしたんだい。外からなんて珍しいね」

「ユリ様。好きなお花はありますか?」

「花?」

「はい、ここにお花を植えようと思うのですが、せっかくならユリ様の好きなお花を植えたいと思いまして」

「……ありがとう、レーネ。なら、君の好きな花も植えてくれないかい?」

「私の、ですか?」

「もしかして、魔法ばかりで花には興味がないかい」

「そんなことありません。好き花ぐらいあります」


セレーネは少し考えるそぶりを見せる。

頭の中にはたくさんの花の種類の知識がある。しかし、ただ好きだから知っているのではなく、あくまで彼女にとっては実験の材料としての知識だった。

一般的に人々が心奪われるような花に対する感情はあまりない。とは思った。


「アネモネ……」

「え?」

「アネモネが好きです。色もたくさんありますし、それによって意味も異なりますし」

「……こんな偶然もあるもんだね」

「え?」

「僕も、一番好きな花はアネモネなんだ。特に、青色が好きだ。花言葉は……



「「固い誓い」」



2人の言葉が重なる。

ユリウスはもちろん、セレーネもその花言葉は一番好きな言葉だった。

ずんと心に響き、自然と背筋が伸びる。


「それでは、ここにアネモネを植えましょう。せっかくですし、全部の色を植えましょう。きっと綺麗ですよ」

「とても楽しみだ」

「せっかくですし、花壇の形も拘りましょう。ユリ様、一緒に考えましょう」

「あぁ。しかし、君が外にいては話しにくい。早く部屋に戻ってきてくれないかい?」

「はい、わかりました」


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