第95話 グレイスに最適な仕事
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色々あって、グレイスを俺たちが雇うことになったのは、ひとまず良しとして、買い物をしながらグレイスには何ができるのかミカミさんと一緒に考えていこうと思う。
「ミカミさん、グレイスには何をさせたらいいですかね?」
「ん〜、普段のお使いとかそういうのならできるんじゃないかな?それこそ、グレイスちゃんに毎日三食食べさせるなら、それなりに食材も買っておかないとじゃない?」
「そうですね。でも、問題はグレイスにお店の人が物を売ってくれるかどうか……。」
「あ〜、そういう問題もあるのかぁ。グレイスちゃん人間の姿とかにはなれないもんね?」
「無理っす。人の姿に化けれるのは上位のドラゴンだけっすよ。」
「ん〜、そうだよね。まぁ、その辺はどうにか上手くやるしかないかぁ。例えば知り合いのお店に買い物に行ってもらうとか?」
「それなら問題ないかもしれませんね。」
「ただ、お使いだけじゃ毎日のグレイスちゃんの食事代を賄えないから、それ以外にも何か考えないとね。」
そう話し合いながら、買い物を終えて俺達はドーナさんと待ち合わせている関所へと向かう。すると、すぐに馬車の運転手と話しているドーナさんを見つけることができた。
だが、何やら様子がおかしい。少し運転手の人の顔色も難しそうに見える。
「ドーナさん、何かあったんですか?」
「あ、来たかいヒイラギ。……実は昨日馬車の馬が盗まれちまったらしくてねぇ。」
「えっ!?馬が盗まれた?」
「あぁ、昨日の夜のうちにやられちまってたらしい。」
「じゃあ……ど、どうします?」
「まぁ、馬を借りるしかないねぇ。ただ当日借りれる馬があるか……。」
困っていると、ミカミさんがあることを思いついたらしく、声を上げた。
「あっ!!馬がいないなら、グレイスちゃんに引っ張ってもらうっていうのはどう?」
「ワイバーンに馬車を引かせるって?」
「グレイスちゃん、力には自信あるんでしょ?」
「めちゃくちゃあるっす!!」
胸ポケットの中で、グレイスは自信満々に両腕を突き上げた。
「……できるかはわかんないけど、まぁ試しにやってみるかい。」
馬車のあるところへと移動して、早速グレイスに元の大きさに戻ってもらうと、運転手の人が恐る恐るといった様子で馬車とグレイスを繋げていった。
ただ、馬用の装備ということもあり、ところどころ装着できない装備もあったようで、かなり苦戦している様子だ。
「グレイス、どうだ?引けそうか?」
「全然余裕っすよ〜。馬なんかと比べられちゃ困るっす!!」
あらかた装備をつけ終わったグレイスは、軽々と馬車を引いてみせた。
「ワイバーンが町中にポンッで出てこられたら、騒ぎになるからねぇ……。一応これを首からぶら下げときな。」
そう言ってドーナさんは、ギルド公認と判を押された即席で作った看板をグレイスの首からかけた。
「ま、驚かれることは間違いないだろうけど、これで幾分マシだと思うよ。」
そしていよいよグレイスの引っ張る馬車に乗ることになったのだが……運転手の人がグレイスを怖がってしまっているので、仕方なく俺が手綱を握ることになってしまった。
「よいしょっと……。」
運転席に座って手綱を握ると、胸ポケットからミカミさんが飛び出して肩の上に座った。
「さて、じゃあグレイスちゃん。まずは関所を出るところからおねが〜い。」
「了解っす!!」
いざグレイスが馬車を引いて大通りに出ると、予想通り大きな騒ぎになったのだが、ドーナさんの作ったギルド公認の看板と、ドーナさん自身が危険はないと説明してくれたおかげでその場は切り抜けられた。
「な、なんとか行けましたね。」
「後はこの道をま〜っすぐ突き進んでくれるかな。」
「全力で走ってもいいっすか?」
「あんまり馬車と、私達に負担がかからないぐらいの速度で頼むよ。」
「じゃあ徐々に速度上げてくっすね。」
そしていよいよグレイスが馬車を引き始めると、初速から普通の馬車の速度を軽々と上回って、とんでもないスピードで進み始めた。
「おぉぉぉっ!!速い速いっ!!」
「まだまだ速くなるっすよ〜!!」
速すぎて、後ろの馬車がとんでもないことになっていないか心配だったが、意外にもガッタンガッタンと揺れている様子はないようだ。
「柊君、グレイスちゃんの使い道……見つけたんじゃない?」
「ですねミカミさん。」
これからグレイスには、お使いと俺たちの移動手段になってもらおうかな。グレイスはワイバーンだからもちろん飛べるだろうし、飛んで移動するっていう手段もロマンがある。
ただ、グレイスにどんな移動手段になってもらうとしても、何かしらの用意は必要だな。
「エミルに帰ったら、また準備しなきゃいけないことがたくさんですね。」
「ね〜っ、目標の白金貨300枚からはまた遠ざかっちゃうけど、それでも人生ってのは、寄り道をたくさんするぐらいが楽しいさ。」
「間違いないですね。」
そしてグレイスは、カーズラまでの行きにかかった時間の半分ぐらいの時間で、エミルへと俺たちのことを送り届けてくれたのだった。
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