第93話 腹ペコグレイスは大食漢?
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大掃除を終えて、部屋中の窓を全て開け放ち、換気をしている最中、俺はキッチンに立って、せっせと夕食の準備を始めた。
「まずはお米を炊くところからだな。」
今回はダイナマイトコーンを使った、トウモロコシご飯を作ろうと思う。
「ダイナマイトコーンは導火線に火をつけずにそのまま剥いちゃって、芯と実を切り離す。」
トウモロコシは芯から出汁が出るって農家の人から話を聞いたことがあるから、今回は芯も一緒にご飯に入れて炊こう。
「今回出汁は、鰹節と昆布で引いた一番出汁に塩と日本酒で味をつける。」
ダイナマイトコーン自体がめちゃくちゃ甘いから、少し塩味は強めに調整しておこう。
「後はこれを鍋で炊いておく。」
トウモロコシご飯を炊いている間に、他の料理を仕込んでいこう。
「今日使うのは、以前買っていたオークのロース肉の余り。匂いは……うん、問題ない。」
マジックバッグに施した時間停止の魔法は上手く働いてるみたいだ。
「これを分厚くスライスして、塩と胡椒で下味をつけたら、表面をカリッと焼き上げる。」
肉を焼いていると、俺の胸ポケットから顔を出していたグレイスが、今にもよだれを垂らしそうになりながら、肉が焼ける様子を見つめていた。
「う、美味そうっす〜……。」
「言っとくが、まだこれで完成じゃないぞ。」
全体的に焼き色がついたら、オーブンの中で買ってきたキノコと一緒にじっくりと火を入れる。
こうすることで、キノコの香りが肉に移って、溢れ出した肉の脂とか肉汁はキノコが全部吸ってくれる。
「で、この間にスポンジマッシュルームをゴロゴロと乱切りにして、オニオスとポタットというジャガイモのような野菜と一緒にバターで炒める。」
全体的にしんなりとしてきたら、それらを深底の鍋に移して、コンソメを加えた水で煮込んでいく。その間に、今度はホワイトソース作りだ。
「振るった小麦粉と、同量のバターを焦げないようにじっくりと炒めて……温めた牛乳を少しずつ入れて練っていく。」
この作業を何回か繰り返していると、トロリとしたホワイトソースが出来上がる。コツとしては、牛乳は入れすぎないこと……それと入れる牛乳はしっかりと温めておくことかな。この2点を押さえておくだけで、ダマが出来にくくなる。
そしてホワイトソースが出来上がったら、さっきのスポンジマッシュルームとかを煮込んでいる鍋に、少しずつ入れて大きく混ぜていく。
「よし、後はここに残っていたシュベールサーモンをソテーしたものを入れて、粉チーズと塩胡椒で味を整えて更に煮込めば……シュベールサーモンとスポンジマッシュルームのシチュー完成っと。」
シチューの完成とほぼ同時刻、先ほどオーブンに入れたオーク肉も、トウモロコシご飯も炊き上がった。
「よし、じゃあ仕上げよう。」
先ほどのオーク肉とキノコは、オーク肉だけを先に盛り付けて、キノコには水溶き片栗粉でとろみをつけたポン酢をまとわせる。それを餡としてオーク肉のステーキの上にかけてあげれば……。
「オークステーキ、キノコ餡かけの完成だ。」
続いてトウモロコシご飯。出汁として一緒に入れていた芯を取り出して、全体を潰さないように混ぜる。
「おっ、お焦げができてるな。」
鍋底には軽く茶色いおこげができていた。きっとダイナマイトコーンの糖分のせいだろう。
「まずは味見。」
トウモロコシご飯を一口口にほおばってみると、ダイナマイトコーンの濃厚な甘さと香りが口いっぱいに広がった。
「うん……うん!!甘いだけじゃなく、最後塩っけも効いてて、飽きが来ない味だ。」
そうやって味見していると、グレイスがもう我慢できなさそうに言った。
「う〜、自分もう我慢できないっすよ〜。早く食いたいっす!!」
「わかったわかった。もう食べれるから、待っててな。」
そして急いで盛り付けと配膳を終わらせて、俺達は席に着いた。
「よいしょっと、おまたせしました。」
「う〜ん、今日のご飯も美味しそうだね〜。こっちはもしかしてトウモロコシご飯ってやつ?」
「そうです、ミカミさんは食べれます……よね?」
「もちろん、トウモロコシご飯は大好きさ。」
「なら安心しました。それじゃ、食べましょうか。……いただきます。」
「「「いただきま〜す!!」」」
「うぉぉっ!!食べるっす〜!!」
いただきますと食前の挨拶を終えるなり、みんな勢いよく料理に飛びついていた。
「んふ〜っ、やっぱりシアはヒイラギお兄ちゃんのご飯が好きっ!!」
「同意します。」
シアとルカの2人はシチューを頬張りながら何度も頷いている。他の人の様子はどうだろう?
「んまっ、このトウモロコシご飯、今まで食べた中で一番美味しいよ。」
「脂っこいはずのオーク肉もさっぱりしてて、美味いよヒイラギ。」
「ありがとうございます。」
すると、突然グイグイと俺の袖を引っ張るものが一人……いや一匹?
「んっ!!」
リスのように口いっぱいに料理を頬張りながら、グレイスは空になったお皿をこちらに差し出してきている。
「おかわりってこと?」
そう問いかけると、グレイスは何度も頷いた。
「わかった。今持ってくるよ。」
グレイスの食べっぷりは凄まじく、先ほど作った料理では足らず、新しく別の料理を作り直すことになってしまったのだった。
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