第90話 カーズラの名物八百屋
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ドーナさんに案内されて、国で2番目に大きい八百屋さんへとやってきたが……俺はその規模に思わず開いた口が塞がらなくなっていた。
「でっっっか。」
八百屋というよりは、もはや市場だ……。とんでもない数の野菜がズラッと、何列も目の前に並んでいる。チラリと案内板に目を向けると、ここはまだ入り口で、奥には果物専門の売り場もあるようだ。そこも目の前に広がる野菜専門の売り場と同じぐらい大きいみたいだな。
ちょっとしたスーパーぐらいの規模かなと、高をくくっていた分、この大きさには驚かされた。
「なっ?初めて来たやつはみんなこのデカさに驚くんだ。」
「まさかこんなに大きかったとは思ってませんでしたよ。」
「町の面積の2割弱を占めてるのがこの八百屋だからねぇ。」
「そう聞くと、もっと大きく見えてきたような……。」
「もともとこのカーズラって町は、物流の中継地点として作られた町なんだ。この店も、一応八百屋とは名乗ってるけど、実際は野菜とかそういう物の一時保管所みたいな感じなのさ。」
「へぇ……なるほど。」
「全部の物が集中する王都で、受け入れ切れないものとかもここに流れてくるから、意外な掘り出し物もあるかもしれないねぇ。」
ドーナさんからこの場所の説明を聞いた後、早速野菜を見て回ることにした。せっかくなら掘り出し物も見つけたいし、この町の特産品とかも狙いたいところだな。
「あっ、これはお昼に食べたサボニアかな?」
目の前の台には、サボテンのようなトゲの生えた葉っぱが山積みになっていた。
「シアこれ嫌い……。」
露骨に表情を歪ませながら、シアは憎たらしそうにそれを見つめている。
「大丈夫だよ。嫌いなものは買わないさ。」
シアの頭を撫でながら、また目を引くものを探して歩いていると、さっき食べたダイナマイトコーンが売り場に並んでいるのを発見した。
「今度はダイナマイトコーンか。」
「シアこれは好きっ!!」
「自分もさっき食べさせてもらったっすけど、美味かったっす〜。」
みんな美味しそうにこれを食べていたし、何本か買っていっても良いかもな。と、そう思って俺は値札に目を向けた。
「どれどれ値段は…………い、1本金貨1枚?」
「わ〜ぉ、1本1万円だよ柊君。美味しさに見合った超高級品だね。」
「こ、これならあの樹海に行って採取してきたほうが安いような……。」
「そもそもあの樹海で採れたものだからこんなに高いのさ。」
ドーナさんがダイナマイトコーンの売り場のところに貼ってあった紙を指さしている。その紙には、樹海産と大きく書いてあった。
「なるほど、納得です。」
これめちゃくちゃ美味しかったしなぁ……。高いけど、何本か買って行こう。俺はカゴの中にダイナマイトコーンを5本ほど入れた。
「さて次は……。」
また目を引くものを探して歩いていると、今度はキノコをたくさん売っているところを見つけた。
「あったあった、キノコ類。」
キノコの売り場に着くと、胸ポケットに納まっているグレイスが嫌悪が浮かぶ表情に変わる。
「自分、キノコはあんまり得意じゃないっす。」
「ありゃ、グレイスちゃんキノコ嫌い?」
「何回かおっきいキノコ食って、お腹ぐるぐるになって動けなくなった事があるっす。」
「それ毒キノコでしょ。ちゃんとキノコは毒があるかないか確認してから食べるんだよ。ここにあるのはちゃんと食用になってると思うから大丈夫だと思うけど……。」
「なら安心っすかねぇ……。」
不安そうな表情を浮かべているグレイスに目を向けていると、シアが近くにあった大きな白いキノコを1つ手に取っていた。
「ふわぁぁ……これおっきい。」
「シアの顔と同じぐらい大きいな。」
「これ美味しいかな?」
「どうだろう、鑑定してみようか。」
俺はそのキノコに向かって鑑定を使った。
~鑑定結果~
名称 スポンジマッシュルーム
備考
・傘の中には、吸水性の良い菌糸がみっちりと詰まっています。
・生食はできませんが、油を用いた調理法や、調味料で煮る調理法に相性が良く、しっかりと調理されたものは食感も香りも良く美味です。
「なるほどなるほど……美味しいみたいだな。値段も安いし、買って行こう。」
「やった!!それ今日の夜ご飯!?」
「あぁ、使ってみよう。え〜……あとは、このキノコの盛り合わせを買って行こう。いろんなキノコを食べ比べできる。」
念の為盛り合わせのキノコ一つ一つを鑑定して、毒がないことを確認した後、それもカゴに入れた。
「よし……少しずつ献立が固まってきた。」
頭の中で今しがた買ったもので何を作るのか献立を組み立てている最中、俺の目にあるものが飛び込んできた。
「ん?あれは……昆虫?」
野菜売り場の一角に、昆虫などを売っている場所を見つけ、近づこうとするとミカミさんが悲鳴を上げた。
「ぎゃあああっ!!無理無理っ!!柊君、それに近づかないで!!」
「あ、そういえばミカミさん虫苦手でしたね。」
「無理っ!!」
全力で拒否するミカミさんの姿を見て、ドーナさんがニヤリと笑った。
「ははぁ~ん?そういえばそうだったねぇ。」
そしてドーナさんは売り場にいたカブトムシみたいな昆虫をつまみ上げると、目をキラリと光らせながらコチラににじり寄ってくる。
「どどど、ドーナちゃん!?お、落ち着こうよ〜。そ、その虫売り場に戻そ?ねっ?」
「このチャンスを逃すバカは居ないよ。日頃の怒り……晴らさせてもらおうかねぇ!!」
「いやーーーーーッ!!」
耐えきれなくなって俺の胸ポケットからミカミさんは飛び出すと、それを逃がすまいとドーナさんが虫を片手にダッシュで追いかけていく。
「そういえばダンジョンでミカミさん虫見て悲鳴上げてたなぁ……すっかり忘れてた。」
「ヒイラギお兄ちゃんは虫さん嫌い?」
「俺か?まぁ、食べれるかって聞かれたら、躊躇すると思うけど、触るぐらいなら大丈夫かな。」
「ん〜……でも、美味しい虫さんもいるよ?」
「え゛っ?」
シアのその言葉を聞いて、俺は改めていっぱい美味しいものを食べさせてあげようと、心に誓ったのだった。
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