第89話 エルダーワイバーンのお願い
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俺はドーナさん達にも焼きダイナマイトコーンを渡した後、自分の分を1本手にとって、その茂みに近づけてみた。すると、激しくその茂みががさがさと上下に揺れ始めたのだ。そして唐突にべろんと真っ赤で長い舌が茂みから飛び出してきた。
「まったく、欲しいなら欲しい、お腹が空いてるなら何か食べさせてほしいって、お願いしてくれればそれなりに協力するんだけどなぁ。」
そう言いながら、俺はその舌の上に焼きダイナマイトコーンを置いた。すると、くるんとダイナマイトコーンに舌が巻き付き、茂みの中に吸い込まれていった。
直後、ボリボリ……むしゃむしゃと咀嚼音が茂みの中から聞こえ始める。それをドーナさん達も不思議そうに眺めていた。
「これ……食ってるのかい?」
「みたいですね。」
「ってことは、これも食肉植物ってことかねぇ。」
「あ、それは多分違うと思います。」
俺は茂みからちょっとはみ出している尻尾を指さすと、ドーナさんもこの茂みが何なのかを察したらしく、やれやれと大きなため息を吐いた。
「はぁ~……なるほどねぇ。」
「これどうします?」
「どうするって言ってもねぇ……ま、いずれいなくなるさ。まさか町までついてきたりはしないだろうしねぇ。」
「そ、そうですよね。」
その後、焼きダイナマイトコーンをみんなで味わい、俺達はカーズラへとむかって歩いて行く。そんな俺達の後ろをこそこそと茂みに隠れながらエルダーワイバーンがついてくる。
ドーナさん達とそれをちらちらと見ながらカーズラの町に何とか辿り着いたのだが、いよいよ町に入ろうとすると、その茂みが物凄い勢いで俺の方に近寄ってきて、そこからようやくエルダーワイバーンが顔を出した。
「ひ、ひどくないっすか!?絶対気付いてたっすよねぇ!?」
「い、いや……まぁ確かに気づいてはいたけど、なにもお願いしてこなかったし。」
「じゃあお願いするっす。なんか食わせてほしいっす。お腹が減りすぎて他の魔物を倒す力もないんすよ。」
「無料で?」
「うっ、何をしてほしいんすか?」
「それはまだ決めてないけど、まぁご飯を食べさせる代わりに何か俺達の役に立ってくれるなら、何か食べさせてあげるよ。」
「それなら任せてほしいっす!!自分、力には自信あるっす!!」
「ん、じゃあそういう約束にしよう。ドーナさん、この町でどこか料理とかできる場所知りませんか?」
「そういう事なら、ギルドの仮宿舎を使えばいいよ。あそこなら小さいけどキッチンがある。なんなら今から帰ると夜になるし、そこで一夜を明かしてもいいんじゃないかい?」
「そうですね、今から馬車に揺られるとまた疲れちゃいそうですし……。」
そうドーナさんと話していると、シアが俺の腕をぎゅっとつかみながら、俺の目をじっと見つめて口を開く。
「夜ご飯はヒイラギお兄ちゃんが作ってくれるんだよね?」
「もちろんだ。」
そう答えると、シアは嬉しそうに笑った。
「アタシらはそこで一夜を過ごしてもいいけど、流石にギルドが所有してる宿舎でもこんなデカいワイバーンは匿えないよ。どうするつもりだい?」
「あ、そこを考えてませんでした。ど、どうしましょっか。」
「自分のことなら大丈夫っすよ。」
茂みの中からエルダーワイバーンがそう言うと、次の瞬間……ミカミさんと同じ大きさ位にまで小さくなったエルダーワイバーンが茂みの中から飛び出してきた。
「へぇ、そういうスキルを持ってるのか。」
「そうっす。縮小っていうスキルっすね。」
「便利なもんだねぇ。ま、これなら全然問題なさそうだ。」
そしてそのエルダーワイバーンは、ミカミさんが納まっている俺の胸ポケットに同じくスポッと潜り込んだ。
「ちょっと、キミっ!!ここは私の特等席なんだけど?」
「ここぐらいしか隠れられそうな場所がなかったんすよ~。許してほしいっす。」
ぺこぺことミカミさんに謝りながら、エルダーワイバーンはミカミさんと一緒に胸ポケットから顔を出している。なんかこの光景は可愛らしくて悪くない。
「さて、じゃあ早速宿舎に向かうかい?」
「あ、そのまえにちょっとその辺で買い物をしてもいいですか?せっかくなら、夕食にはここで採れた食材を使いたいなって思って……。」
「そういうことなら、八百屋にでも行ってみようか。このカーズラには国で2番目に大きい八百屋があるんだ。」
「あ、良いですねそこ行きましょう。」
そう行き先を決めていると、胸ポケットにミカミさんと一緒に納まっているエルダーワイバーンが首を傾げながらミカミさんに質問を投げかけていた。
「妖精さん、やおやって何すか?」
「八百屋っていうのは、野菜を売ってるお店のことだよ。それと、私の名前は妖精じゃない。ミカミっていうちゃんとした名前があるんだよ。」
「ミカミちゃんって呼んだらいいっすか?」
「呼びやすい呼び方で読んだらいいよ。で、キミには名前は無いのかい?」
「一応グレイスって名前があるっす。」
「グレイス君ってよんだらいいかな。」
「あ、自分一応メスなんで、ちゃんって呼んでほしいっす。」
「メスだったんだね……。ワイバーンの性別は区別しにくいなぁ。」
なんだかんだミカミさんと、グレイスという名前のこのエルダーワイバーンは仲良くやれそうな雰囲気だな。そんな2人の会話に耳を傾けながら、俺達はその八百屋さんへと向かって歩き出した。
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