第88話 お腹を空かせたシア達
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どんどん遠ざかっていくエルダーワイバーンの背中を見送っていると、俺の腕をシアがくいっと引いてくる。
「ん?シア、どうした?」
「あ、あのね、いっぱい歩いたらお腹空いてきちゃったの……。」
「町に着くまで我慢できなさそう?」
そう問いかけると、シアはこくんと小さく頷いた。すると、それに便乗するようにルカが自分のことを指さしながら口を開く。
「ご主人様、私もお腹が空きました。」
「2人ともさっきの昼食じゃあんまり満足してなかったからかなぁ……。ん、まぁ良いや、それじゃあ軽くお腹を満たせるものでも作ろうか。せっかくだし、ミカミさんとドーナさんもどうですか?」
「私はもちろんもらうよ~。」
「アタシもちょっと腹空いてたとこだったし、作ってくれるならありがたくもらうよ。」
「わかりました。じゃあ早速準備しますね。」
「周りはアタシが警戒しとくよ。この辺は割と安全だけど、油断は禁物だからねぇ。」
「ありがとうございます。」
ドーナさんが周りを警戒してくれてる間に、俺はさっそく料理の準備を始めた。
「今回使うのは、さっきあの樹海で採取してきた、ダイナマイトコーン。」
これは、さっき樹海に入って歩き回っているときに、道すがらで採取したトウモロコシのような野菜だ。普通のトウモロコシには髭が生えているが、これにはその代わりに導火線のようなものがついている。
鑑定で調べたところ、調理法としてはこの導火線に火をつけるだけで良いらしい。この導火線に点けた火がダイナマイトコーンに届くと、内側から一気に過熱されて火が入る仕組みらしい。
「フライパンの上に並べて、全部の導火線に火を点ける。」
魔法でダイナマイトコーンの導火線に火を点けると、すぐに導火線が燃えていき、あっという間に実の方へと届いた。すると、ダイナマイトコーンの内側から甘い香りのする煙が噴き出し始めた。
「おぉ~、美味しそうな香りが漂ってきた。」
煙が収まったところで、ダイナマイトコーンの皮をべりべりと剥がしてみると、中から真っ白で張りがあって、つやつやしているトウモロコシが現れた。
「おぉ~っ、めっちゃ美味しそ~!!そのままかぶりつきた~い!!」
「味見したいので、少し食べてみますかミカミさん。」
「うんうん!!」
「シアもこっちおいで。」
「やったー!!」
シアのこともこっちに呼んで、ダイナマイトコーンの味見をしてみることにした。ドーナさんと一緒に周囲の警戒に当たってくれてるルカが、こちらにじっとりとした視線を向けてきているような気がするけど、きっと気のせいだと思う。
「それじゃ、いただきます。」
「「いただきま~す。」」
適度な大きさの輪切りにしたダイナマイトコーンにかぶりつくと、プチっと口の中で弾けながら、フルーツのように濃厚な甘さの果汁が口いっぱいに広がった。
「うんっ、すごく甘くて美味しい。」
「あま~い、これ3時のおやつに丸かじりしたいなぁ~。」
「シアこれは大好きっ!!すっごく甘くて美味しいの~♪」
ダイナマイトコーンの美味しさは、日本にいたときに一度食べたことのある、一本の値段が500円を超える高級なホワイトコーンに似ていた。
もちろんこのまま食べても十分に美味しいけど、今回はこれを焼きトウモロコシにしてみんなのお腹を満たそうと思う。
「まずはフライパンにバターを落として、ゆっくりと温める。」
フライパンに落としたバターがふつふつと泡立ってきたら、そこにダイナマイトコーンを入れて、溶けたバターを流しかけながら、表面が軽く色づくまで焼いていく。
「良し、このぐらいになったら一気に火力を強くして、醤油をひと回し。」
醤油をフライパンの外側から回しかけると、その場に香ばしい焦がし醤油の香りが漂い始めた。その香りを嗅いだミカミさんは、思わず涎を垂らしそうになっている。
「ふぉぉ……この軽く焦がした醤油の香りと、バターの香り……。暴力的だぁよぉ~。」
「最後にこのダイナマイトコーンの芯に棒を刺してあげたら……はいっ、焼きダイナマイトコーンの完成です。これはミカミさんとシアの分。」
「ありがと~柊君。」
「ヒイラギお兄ちゃんありがとう!!」
「こっちはドーナさん達の分…………え?」
2人に焼きダイナマイトコーンを手渡した後、ドーナさんとルカにも手渡しに行こうと思い、その場から立ち上がると、後ろで突然ガサッと音がした。
後ろを振り返ると、いつの間にか背後に不自然なほど大きな茂みがあった。ドーナさんとルカの2人もその茂みをジッと近くで見つめている。
「これ、俺が料理を始めたときありましたっけ?」
「いや、無かったよ。アタシが最初見つけたときは、向こうの遠くの方にあったんだけど、気づかれないようにゆ~っくり向こうの方から近づいてきてたんだよねぇ。」
「う~ん……ん?」
俺に危険察知にも何も反応しないし、害はないんだろうな……と思いながらその大きな茂みをまじまじと眺めていると、茂みの下から見覚えのある緑色の尻尾がはみ出しているのが見えてしまった。
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