第87話 捕まっていたエルダーワイバーン
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いざエルダーワイバーンを拘束している茨を切ろうとすると、頭上に咲いている巨大な花の部分からドロリと粘性のある液体が滴り落ちてきた。
それと同時に、俺の危険察知がとてつもない危険を知らせてくる。
「アレはヤバそうっ!!」
その場から咄嗟にシアを抱えて飛び退くと、次の瞬間……先ほどまで俺達が立っていた場所にその液体が落下してきて、その地面をジュウジュウと音を立てながら溶かしていた。
「強酸性の液体……あのでっかい食肉植物の消化液か。」
「ドーナさん、アイツを助けるよりも先にあの花の方をどうにかしたほうが良いかもしれません。」
「同感だねぇ。つってもどうする?」
「あの花のところから液体が垂れてくるなら……あの部分だけ凍らせればなんとかなると思います。」
「わかった。じゃあそっちはヒイラギに任せるよ。」
「はいっ。」
まずは大きな水の塊であの薔薇全体を覆うイメージ……。
周りの状況に気を配りながら、頭の中で想像魔法のイメージを構築していく。すると、まずは最初に思い浮かべた通り、巨大な花の部分だけが水の塊に包まれた。
「後はこれを凍らせる!!」
その水を一気に凍らせるイメージを頭の中で思い描くと、水の中に魔法陣が浮かび上がり、そこを中心に一気に凍りついた。
「ドーナさん、出来ました。」
「あいよッ!!」
ドーナさんは抉れるほど強く地面を蹴ると、くるくると回転しながらエルダーワイバーンの元に急接近した。
「動くんじゃないよ!!」
そうエルダーワイバーンに忠告した後、ドーナさんは回転の勢いが加わった足を振り抜いて、拘束していた茨を切り裂いた。
「た、助かったっす〜!!……ぶべぇっ!?」
助かって安堵の表情を浮かべていたエルダーワイバーンだが、急速に迫ってきていた地面に気が付かず、ビターン!!と激しく地面に激突してしまった。
「アンタ、やっぱり間抜けだねぇ……。ワイバーンなん だから飛べばいいのに。」
「も、もうお腹も減りすぎて、魔力も底をついてて飛べなかったっす……。」
「言いたいことはたくさんあるけど、とにかく今は時間がないからとっととこの樹海を抜けるよ!!」
そう言ってドーナさんは、おもむろにエルダーワイバーンの尻尾を両手で持ち上げた。
「え、え!?な、なにしてるっすか!?」
「アンタを抱えてこの樹海を抜けるのは無理だからねぇ……。」
そしてハンマー投げの要領で、ブンブンとエルダーワイバーンを振り回していく。
「オラッ、ぶっ飛びなァッ!!」
「ぎゃあああああああっ!!!!」
最後には、エルダーワイバーンは放物線を描きながら遥か遠くまで放り投げられてしまった。
「うっし、アタシたちも行くよ。」
「わかりました。」
ここまで来た道を戻って、なんとか樹海の外にたどり着くと同時に、ドーナさんが腕につけていたタイマーのようなものが、ピピピ……と音を鳴らした。
「ふぅ、時間ギリギリ。なんとか効果が切れる前に樹海を抜けれたねぇ。」
「いろんなことが頭の中で渋滞しすぎて、すっかり時間を忘れちゃってたよ〜。」
「特に最後のエルダーワイバーンのは強力でしたね。」
「ね〜?思わずフリーズしちゃったもん。」
そうミカミさんと話していると、シアが俺の手を離れてどこかへ駆け出した。
「シア?」
「ヒイラギお兄ちゃん、あそこ……。」
シアが指差した先には、さっきドーナさんに放り投げられたエルダーワイバーンがいて、頭から地面に突き刺さっているようだった。
「死んでる?」
恐る恐る近くに歩み寄ってみると、バタバタと慌ただしく手足を動かし始めたので、どうやら生きているようだ。
「〜〜〜〜〜っ!!」
「ったく、世話焼かせるねぇ……。」
ドーナさんはエルダーワイバーンの首根っこを鷲掴みにすると、勢いよく引っこ抜いた。
「ぶはっ!!ほ、本当に死ぬかと思ったっす……。」
「アタシらが駆けつけなかったら、あの花に食われてたんだからねぇ?感謝しなよ。」
「いやぁ~、まさか人間に助けられるとは思ってなかったっすよ〜。感謝感謝っす。……じゃ、じゃあ自分はこれで〜……。」
そして、そそくさとその場から逃げ出そうとしたエルダーワイバーン。当然それを逃がすはずもなく、ドーナさんは、背中に飛び乗った。
「逃がすわけないよねぇ?さっきの約束忘れたのかい?」
「いやーーーッ!!喰われるっすーーー!!」
「アンタみたいな不味そうなやつ食うわけないだろ。」
「うぅ……自分に何をさせるつもりっすか。」
「なぁに、簡単さ。人間の飼ってる家畜とか、そういうのを襲わず、人間に迷惑をかけずにこれから生きるって約束してくれれば良い。」
「……ホントにそれだけでいいっす?」
「あぁ。ただし、コイツは契約だよ。良いね?」
「う、契約っすか。」
「当たり前だろ?口約束なんていくらでもできる。こういうのは確実性が必要なのさ。」
「わかったっすよ……命を助けられたんで、それは受け入れるっす。」
そうワイバーンが頷くと、ドーナさんの頭上に魔法陣が現れて、そこから1枚の紙がひらひらと落ちてきた。
「ん、これで契約は完了。じゃ、行っていいよ。」
「うぅ、今日は散々な目に遭ったっす〜。」
少し悲しそうにしながら、エルダーワイバーンはその場からゆっくりと歩いて去っていった。
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