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転生料理人の異世界探求記  作者: しゃむしぇる
第一章 新たな生と異なる世界~ヒュマノ編~ 一節 職業魔物ハンター
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第86話 樹海の奥で声が……

ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。


 体に薬品をふりかけてもらった後、俺達はこの食肉植物の樹海へと足並みを揃えて踏み込んだ。この中で襲われない保証があるのは一時間だけ。この間にエルダーワイバーンをこの広大な樹海の中から探し出して倒さないといけない。


「うへぇ~、周りはとんでもないことになってるね~。」


 俺達は襲われないが、周りでは小さな小動物から牛のような大きな動物、果てには魔物までもが植物に食べられていた。


「まだ樹海に入ってちょっと歩いただけなのに、これはなかなか凄まじい光景ですね。」


「これが食肉植物の樹海の中での日常だよ。ここじゃ普通の食物連鎖が逆転するんだ。食物連鎖の下位である植物が、普段は連鎖の上の方にいる魔物まで食っちまう。」


「もしかしたらエルダーワイバーンも植物に食べられたりとかしてませんかね?」


「そいつはどうだろうねぇ。エルダーワイバーンってのはかなり知性の高い魔物だし……でもまぁよっぽど今回のエルダーワイバーンが間抜けで、尚且つ空腹で魔力もない状態で食肉植物の擬態とかに引っかかっていたとしたら……ありえない話じゃないかもねぇ。」


「それ、もうほぼほぼありえないって言ってるようなもんだよドーナちゃん。」


「ま、期待するだけ無駄ってことさ。ほら、足を止めてる暇はないよ。時間はないんだからねぇ。」


 周りの景色に圧倒されながらも、俺はシアと手を繋ぎながらドーナさんの後に続いて、樹海の中を進んでいく。その道中はこの樹海に驚かされてばっかりだった。


 急に足元の地面を突き破って、植物の若葉が芽吹いてきたかと思えば、みるみるうちに成長してあっという間に花を咲かせたり。新しく生えてきた食肉植物に、元から生えている食肉植物が自分が捕まえた動物をあげていたり。果てには、自分の根っこを地面から引っこ抜いて、その根っこで地面を走り、日光の当たる場所に移動している植物も見た。


 もう驚くことも無くなってきた頃、俺達が進んでいる方向の奥の方から、助けを求める声が聞こえてきた。


「だ、誰かいないっすかーーーっ!?助けてほしいっす~!!」


「え!?柊君っ今の聞こえた?」


「バッチリ聞こえました。誰かが助けを求める声が。」


「それ本当かい?アタシには魔物が叫んだ声にしか聞こえなかったけどねぇ……。でも誰かがいるなら放ってはおけないよ。どっちから聞こえたんだい?」


「この先です。結構遠くの方だと思います。」


「よし、じゃあ走るよ!!」


「はいっ、シアはちょっとこっちおいで。」


「うんっ!!」


 シアのことを抱きかかえて、俺は声の聞こえた方向へと走った。声のもとへと走っている最中、俺は一つある疑問を抱いていた。


(あんなにハッキリと声が聞こえたのに、俺とミカミさんにしか助けを求める声だとわからなかった……。何でだ?)


 そんな疑問を抱きながら、草木をかき分けて声のした方へと近づいて行くと、また声が聞こえてくる。


「あっ!?誰かの気配がするっす!!おーいこっちっす〜!!」


「あ、また聞こえたよ!!」


「……やっぱりアタシには魔物の咆哮にしか聞こえないけど。な〜んか変な感じがするねぇ……。」


 目の前を塞いでいるカーテンのような蔓を引き千切って飛び出すと、そこには巨大な薔薇が咲いていた。


「これは……薔薇?」


「柊君っ、あそこ!!」


 ミカミさんが指差した先……そこには太い茨に絡め取られたワイバーンがいて、オドオドしながらこちらを見ていた。


「や、ヤバイっす〜。まさかの人間だったっす!!もう体を動かす力も残ってないし……終わったっす。」


 何かを悟ったように、そのワイバーンは天を見上げながら滝のような大量の涙を流していた。


「アイツはエルダーワイバーン!?なんであんなところに!?」


「アレがエルダーワイバーンなんですか?」


「そうだよ。通常種のワイバーンよりも鱗が深い緑色をしてるし……なにより体がデカい。でも、それなら尚更どうしてあんな風に食肉植物に捕まってるのか……。」


 不思議そうにドーナさんが考えていると、シアがエルダーワイバーンの頭上にぶら下がっていたあるものを見つけた。


「あっ!!ヒイラギお兄ちゃん、あそこにお肉がぶら下がってる!!」


「え?あっホントだ……。まさか、アレにつられて捕まった……とか?」


「いやいや、エルダーワイバーンがそんな間抜けな事するわけないと思うけどねぇ……。」


 そんなことを話していると、捕まっているエルダーワイバーンがこちらを見下ろしながら、申し訳なさそうに口を開いた。


「あの〜……あんまり冷静に分析しないでほしいっす。めちゃくちゃ恥ずかしいっすよ?」


「やっとアタシにも声が聞こえてきたよ。」


 そう言いながら、ドーナさんはエルダーワイバーンへと視線を向けると、俺達がどうしてここにきたのか語り始めた。


「一応アタシ達はアンタの討伐依頼を受けてやって来たんだけど……そのまま放っておいても依頼成功になりそうだねぇ。」


「ちょ、ま、待ってほしいっす!!自分このまま草の餌になるなんて嫌っす!!エルダーワイバーンの恥っす〜!!」


「じゃあどうして欲しいのさ。」


「そ、それは……その〜、できれば助けてほしいな〜?なんて……。」


「助ける代わりに条件がある。そいつを飲むってんなら、助けてやるよ。」


「何でも飲むっす!!だから速く助けてほしいっす〜!!」


「ってわけだから、人助け……あいや、ワイバーン助け?に依頼変更だよ。」


「わかりました。」


 あのエルダーワイバーンがどうしてあぁなったのか、非常に気になるところではあるが、それはアイツを助けてからゆっくり聞くとしようかな。



この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。

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