第85話 パンドラオレンジのジュース
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俺の頭上から襲い掛かってきたパンドラオレンジは、奇声をあげて大きな口を開けながら襲い掛かってくる。
「キシャアァァァァッッ!!」
「うぉぅっ……声を出せるのかお前。」
後ろに一歩飛びのきながら、落ちてきたパンドラオレンジの擬態部分を鷲掴みにして、ミカミさん達のところに戻った。
「捕まえてきましたよ。」
「近くで見ると結構凶悪な顔なんだね。」
「なんか鮮度が良いうちにジュースにすると美味しいみたいですよ。」
「ほぇ~、ちょっと喉乾いてるし、せっかくだから搾ってみようよ!!」
「……でもこれどうやって搾ればいいんですかね?」
未だに俺の腕の中ではパンドラオレンジの擬態部分が逃れようと必死に体をくねらせている。
「その方法も鑑定してみたら?」
「そうですね。」
ミカミさんの助言通り、鑑定を使ってこのパンドラオレンジを搾る方法を調べてみると、とんでもない方法が表示された。
鑑定結果
・パンドラオレンジの擬態部分は死亡するとすぐに果肉部分が腐ります。生きているうちに強烈な圧力をかけて一瞬で果汁を搾りましょう。新鮮さが美味しさを引き立てます。
「…………。」
「どう?何かわかったぁ?」
「ルカ、ちょっとこれを持っててくれるかな?」
「かしこまりました。」
ルカに大きなボウルを手渡して、俺はその上にパンドラオレンジの擬態部分を移動させた。
「じゃあ、行きます。」
そして両手で思い切り押しつぶすように、圧力をかけていく。
「ミギャァァ……ァァ。」
パンドラオレンジの生々しい悲鳴と共に、ドボドボと黄色い果汁がボウルの中に滴り落ちていく。それを見たミカミさんたちは思わず絶句していた。
「ちょ、柊君っ!?ほ、本当にその方法で合ってるのかい!?」
「鑑定によると新鮮さが美味しさを引き立てるらしいので仕方なく……。それに、死んじゃうと急速に果肉が腐るって鑑定で分かっちゃったんで。」
「そ、そうなんだ。」
「そう聞かされてもめちゃめちゃ見てる側は、目をそむけたくなるねぇ。」
「やってる俺が一番目を背けたいですよホント……。」
そして煎餅のようにぺちゃんこにパンドラオレンジを搾りきるとほぼ同時、俺の手にしていたパンドラオレンジが腐り始めた。
「あ、本当にすぐに腐った。」
手の中にあったパンドラオレンジはまるで空気に溶けるようにボロボロと崩れて消えてしまう。
「でもでも、かなりたっぷり果汁は搾れたね。」
「ですね、あれ1個から3Ⅼぐらい果汁が搾れました。」
ルカが抱えているボウルのメモリを見ると、3Ⅼの表記のところまで果汁がなみなみと満ちている。
「さっそく味見してみようよ~。」
「シアも飲みた~い!!」
「わかった。ドーナさんも飲んでみますか?」
「まぁ、ちょっと気になるよねぇ。」
「ご主人様、私の分もお願いします。」
全員分のコップを用意して、そこにパンドラオレンジの果汁を注ぎ入れた。
「それじゃあかんぱ~い!!」
そしてミカミさんに乾杯の音頭で軽くコップを合わせてから、みんなで一斉にその果汁を口にしてみた。
「んっ!?これ美味し~!!」
「へぇ、あんな見た目のわりに美味しいじゃないか。」
「シアこれ好き~!!」
「美味です。おかわりを所望します。」
パンドラオレンジのジュースは、苦みのないグレープフルーツのような味で、甘酸っぱくとても爽やかで美味しかった。
「あんまり飲みすぎるとトイレに行きたくなっちゃうと思うので、残りは後に取っておきましょうか。」
「そうだね~。樹海の中でお花を摘みに行って、そのまま自分がお花に摘まれちゃったら元も子もないもんね。」
「その通りだよ、あんな危険な樹海の中でトイレなんて、自殺行為だからねぇ。」
このパンドラオレンジの果汁は美味しくて、もっともっと飲みたくなるが、利尿作用を考えるとコップ一杯ぐらいで止めておくのが無難だろう。ルカはおかわりが欲しくて少し不服そうな表情をしていたが、ここだけは少し我慢してもらおう。
「さてと、じゃあ寄り道はこの辺にして、日が暮れる前に樹海に入ってエルダーワイバーンを倒して帰るよ。」
気を取り直し、俺達はまた樹海の方へと歩みを進めた。パンドラオレンジのあった場所から10分ほど歩くと、いよいよあと数歩踏み出せば樹海の中に入ってしまうような場所にやってきてしまった。
「さ、ここに入る前にみんなアタシの前に一列に並んでおくれ。」
ドーナさんは食肉植物を避けられる効果時間が一時間の薬品を取り出して、霧吹きができる容器に詰め替えていく。
「目に入んないように目は瞑ってなよ?」
「はーい。」
目を瞑ると、順番にドーナさんが俺達にその薬品を振りかけていく。俺の番が回ってくると、霧吹きで薬品をかけられたときに、柑橘系のような香りが鼻をくすぐってくる。
その香りを鼻で感じていると、不意にクンクンとドーナさんに顔の周りを嗅がれた。急なことに驚きながらも、なんとか平静を貫いていると、どんどんドーナさんの吐息の熱が近くなってきたような……そんな感じがした。
これは多分、俺が内心滅茶苦茶恥ずかしがっているからかもしれない。でも実際のところはどうだったんだろう……結局ドーナさんが全員に薬品をかけ終わるまで目を開けられなかったから、真実はわからなかった。
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