第84話 拡大する樹林
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昼食を食べた後、また馬車に戻っていよいよ食肉植物の樹海へと向かって進み始めた。その車内でミカミさんがポッコリと膨らんだお腹をさすりながら、さっき食べた食事について語り始める。
「いやぁ〜、サボテンのステーキは初めて食べたけど、不思議な味だったね。火を通したキュウリを食べてる感じっていえば良いのかな?それでいてちょっと酸味があって~、悪くなかったね。」
「それに意外とネバネバしてましたね。」
「んね〜、オクラみたいだったよ。」
そうミカミさんと感想を語り合っていたが、シアとドーナさん、そしてルカはあまり良い表情をしてなかった。
「シア……アレ嫌いかも。」
「アタシもあんまり美味しいとは思えなかったね。あのラップチョップっていう挽き肉と野菜を包んだやつは美味しかったけど。」
「ご主人様の作った料理の方が、断然美味しいものでした。」
「シアもヒイラギお兄ちゃんが作ったごはん食べたかったぁ〜……。」
「あはは、じゃあ今日の夜は俺が作るからな。」
「やった!!」
ポンポンとシアの頭を撫でながら、馬車の窓から見える景色を眺めていると、向こうの方に見える深い森林が文字通りざわざわと蠢いているのが見えた。
「森が……動いてる?」
「見えてきたね。アレが食肉植物の樹海だよ。現在進行系で樹海の面積がどんどん増えてるんだ。」
「えっ?じゃあいずれ……。」
「あぁ、時間が経てば、アタシらが今いる場所も、あの町も……果てにはこの世界全部があの樹海に飲み込まれるだろうねぇ。」
「大問題じゃんそれ。」
「だから腕利きの魔法使いの連中が、何とかしてあの樹海の拡大を止めようと必死になってるのさ。」
「あ、一応ちゃんと危機感持ってそこは対処しようとはしてるんだね。」
「そりゃあそうさ、あんなのが世界を追いつくしちまったら、アタシ達の生きる場所が無くなっちまうからねぇ。」
そんなことを話していると、急に馬車がガクンと急停止した。
「おっと!!」
咄嗟にシアのことを抱きかかえて、衝撃で怪我をしないように保護していると、馬車の中にハエトリグサに鋭い牙を生やして、より見た目を凶悪にした植物が入ってくる。
「前はまだこの辺は危険地域じゃなかったはずだけど、もうここまで危険地域になっちまったか。」
ぽつりとそう呟きながらドーナさんはその植物を鷲掴みにすると、綱引きのように勢いよく手前にグイッと引っ張った。すると、どんどん植物が手繰り寄せられていき、最終的に根っこまで馬車の中に入ってきた。
ドーナさんはそれをぎゅっぎゅっと圧縮して丸いボールのように形を整えると、馬車の外にそれを転がした。
「ヒイラギ、あれ燃やしてくれるかい?」
「わかりました。」
馬車の外に転がったそれに向かって、俺は想像魔法で火の玉を撃ち出して灰になるまで燃やし尽くした。
「ん、相変わらずいい火力の魔法だ。さて、ここから先は馬車じゃ進めなくなった。降りるよ。」
ドーナさんに続いて馬車を下りると、すぐ向こうに蠢く森が見えていた。
「アタシらは自分の足でカーズラまで帰るから、周りに注意して戻って休んでな。」
「わかりました。皆さんもお気をつけて。」
ドーナさんにそう促されて、馬車の運転手は馬を走らせてカーズラの方へとUターンして行った。それを見送ってから、俺達は目先に見えるあの森へと向かて歩き出す。
「ドーナちゃん、まだあの薬使わなくていいの?」
「あぁ、ここはまだ問題ないよ。あの樹海に突っ込む前に使うのさ。」
そして食肉植物の樹海へと歩いて行く途中、俺は道端にバスケットボールぐらいの大きさのオレンジのような果物が実っている木を見つけた。
「あっ、あそこに大きな実をつけてる木がありますよミカミさん。」
「ホントだ~!!行ってみようよ柊君っ!!」
「はいっ。」
「あ、ちょ……はぁ~、本当にアンタらは危機感がないねぇ。」
その木の近くまで近寄ってみると、その大きな果物に凶悪な口が存在していることに気が付いた。どうやらこれも食肉植物のようだ。
「ミカミさん、あれ食べれると思います?」
「いやぁ~、どうだろう?鑑定してみたら?」
「そうですね。え~……鑑定っ。」
~鑑定結果~
名称 パンドラオレンジ
備考
・大きな果物の擬態部分で獲物をおびき寄せ、それを求めて木の真下に入った生き物に襲い掛かる食肉植物。
・本体である木は食用にはできないが、果実のような擬態部分は食用可。鮮度が良い状態で搾ってジュースにすると大変美味。
・鮮度が良い状態で搾ると鳴き声がうるさいので注意。
鑑定してみるとやはりこの木は魔物だった。だが、あの果物っぽい部分は食用とできるらしい。倒し方も簡単だし、確保してみようか。
「わかりましたよミカミさん、あれも食肉植物みたいです。でも食べれるっぽいですね。」
「あ、ホント!?」
「はい、ちょっと今から1個取ってきます。」
ルカにシアを預けて、俺はその木の真下に入ると、頭上にあったその大きな果実のような部分が突然落ちてきて襲い掛かってきた。
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