第83話 植物と共生する町カーズラ
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ガラガラと順調に進んでいた場所だが、突然ゆっくりと速度を落として停まった。
「ん、着いたかねぇ。」
「あれ、もうそんなに時間経った?」
「言っただろ?途中どこかの町で飯でも挟んで行くってさ。」
ドーナさんに続いて馬車を降りるために、俺はまだ眠っていたシアの体を揺すった。
「シア、一回ごはんにしよう。」
「ごはんっ!?」
ごはんというワードに反応して、シアは俺の太ももから勢いよく体を起こした。
「おはようシア。」
「はぇ……ごはん、どこ?」
「ごはんは町で食べるぞ。」
ごはんを探して、キョロキョロと辺りを見渡しているシアの頭をポンポンと撫でながら馬車から降りると、すぐ目の前にエミルと同じぐらいの大きさの町が見えていた。
「ここが一応食肉植物の樹海に一番近い町の、カーズラって町さ。」
「カーズラ……なんか町の中心にでっかいウツボカズラが見えるんだけど。」
ミカミさんが指差した先には、高層ビルに匹敵するほど、巨大なウツボカズラのような植物がそびえ立っていた。
「ミカミの言ってる植物が何なのかはわかんないけど、あのデカい植物は一応この町の守り神みたいなものなんだよ。」
「へぇ〜……あ、魔物が空飛んでるよ。」
空を見上げてみると、上空をワイバーンのような魔物が悠々と飛んでいた。
「ありゃあワイバーンだねぇ、確かこの町の近くに巣があるはずだから、そこから飛んできたって感じかな。」
「え、それ大丈夫なんですか?」
「大丈夫さ、よく見てな。」
ドーナさんに言われるがまま様子を見守っていると、突然空を飛んでいたワイバーンの飛行が蛇行し始め、最終的にはスポッとあの超巨大ウツボカズラの中に入っていってしまった。
「な?大丈夫だったろ?」
「あれ、どうなってるんですか?」
「聞いた話によると、何でも魔物を誘う香りを放ってるんだとか……。だから、あぁやって吸い込まれるように入っていくんだとさ。」
「ちなみにあの中に入った後はどうなるの〜?」
「完全に溶けて、栄養になるらしい。」
「わぉ、あれ自体が食肉植物みたいなもんじゃん。」
「こんな感じで人間に害をなさずに有効的に使えるやつばっかりだったら、食肉植物の樹海も苦労はしないんだけどねぇ。」
やれやれとため息を吐きながら、ドーナさんは町の方へと歩いていく。その後に続いて、関所を通って町の中に入ると……。
「おぉぉ……そこら中に植物が。」
この町はなんと表現したら良いのか……植物と一体になっているような町だ。目に見える建物全部に蔦が絡まっていて、どこを見ても緑が見える。
「この建物を絡め取ってる植物は、全部食虫植物だよ。害虫とか、ネズミみたいなちっこい害虫も食べてくれるんだ。」
「へぇ〜……人と植物が完全に共生してるんだ。こういう町って珍しいなぁ〜。」
パタパタとミカミさんが飛んでいると、ミカミさんめがけてハエトリグサのような植物が伸びて襲いかかってきた。
「おっと!!」
ミカミさんは、それをヒラリと躱すと俺の胸ポケットの中に逃げ込んだ。
「こらこらっ、私は害虫じゃないぞ!!食べる相手を間違ってる〜!!」
プンスカとミカミさんが怒ると、ハエトリグサのような植物はどこかへと消えてしまった。
「ふぅ、全く失礼しちゃうね。こ〜んな可愛い妖精を害虫と間違えて食べようとするなんてさ!!」
そう憤るミカミさんへ、ドーナさんが鼻で笑いながら言った。
「はっ、可愛い妖精ねぇ……。アタシには妖精の皮を被った悪魔に見えるよ。」
「あ〜!!なにさなにさっ、ドーナちゃんまでそんなこと言って!!」
「事実だろ?」
ここでもドーナさんとミカミさんが言い争いを始めると、俺はシアがあるお店をじっと見つめていることに気が付いた。
「ん?あのお店が気になるのか?」
「うん。あのお花の髪飾り、綺麗……。」
シアが見つめていたのは、翡翠色の石で作られた花の形の髪飾り。
「お、おこづかいで買えるかな。」
表示されている金額は大銀貨3枚。昨日渡したお小遣いで十分買える金額だ。
「欲しいなら買ったら良い。またお小遣いはあげるからさ。」
「うん!!」
ぱぁっと表情を明るくして、シアは大銀貨を握りしめて花の髪飾りを買いに行った。そして戻ってくると、俺にその髪飾りを手渡してくる。
「ヒイラギお兄ちゃん!!それシアにつけてほしい!!」
「わかった。」
シアの髪を少し束ねて、それを髪飾りのクリップで留めた。
「うん、これでよし。」
「えへへ、ヒイラギお兄ちゃんありがとう!!」
嬉しそうに笑うシアの頭を撫でていると、ようやく矛を収めたミカミさんが、シアの髪飾りに気が付いた。
「あ!!可愛いのつけてるね〜シアちゃん。」
「シア、可愛い?」
「うんうん、食べちゃいたいぐらい可愛いよ〜。でも……ここをこうしたら。」
手慣れた様子で、ミカミさんはくるくるとシアの髪をまとめると、それをパチッと髪飾りで留めた。
「うん、これでも〜っと可愛くなった。」
「さすがです、ミカミさん。」
「ふっふ〜ん、このミカミちゃんにかかれば当然さ。良かったらドーナちゃんもやってあげようか?めちゃくちゃ可愛くできる自信あるよ〜?」
「余計なお世話だよ。ったく……ほらほら、あんまりのんびりしてたら日が暮れちまうからねぇ。」
その後、俺達はドーナさんの選んだ料理店に入って、サボニアステーキというサボテンステーキのようなものと、炒めた挽き肉と野菜がたっぷり入ったタコスのような料理を頂いたのだった。
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