第81話 食肉植物を避ける薬品
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翌朝、ギルドに赴いてみると、すぐにドーナさんとミースさんの姿を発見することが出来た。何やらテーブルの上に大量に道具を並べて、それらを吟味しているようだ。
「おはようございます。ドーナさん、ミースさん。」
「2人ともおはよ〜!!」
「ん、来たねヒイラギ。」
「皆さんおはようございます!!」
「今は何を?」
「あぁ、食肉植物撃退用の薬品を選んでたんだ。コイツがないと、森に入った瞬間全部の植物に襲われちまう。流石にいくらアタシやヒイラギがいたって、森全体を敵に回すのは骨が折れるからねぇ。」
そう言いながら、ドーナさんは薬品の入った瓶を手にとって、中の匂いを嗅いではテーブルの上に戻していた。
「ちなみにさ、これってどんなのが良いの〜?」
「どんなのが良いって……まぁ、できればあんまり匂いのないやつで、効果時間が長いやつ。」
「どれどれ〜?…………ふぐゅっ!?」
一つ薬品の瓶を開けて、匂いを嗅いだミカミさんは、酸っぱいものを食べたときのように、顔のパーツがむぎゅっと中心に寄った。
「ここ、これめちゃくちゃ臭いよ!?これを……どうするの!?」
「どうするって、そりゃあ体に塗るのさ。」
そう聞かされたミカミさんは、絶望したような表情を浮かべる。
「こんなものを体に……塗る?」
カタカタと体を震わせながら、ミカミさんは今にも泣きそうな目でこちらを見つめてくる。
「み、ミカミさん。俺の方を見られても困るんですけど……。」
「だ、だって柊君っ!!これ嗅いでみなよ!!」
そしてミカミさんが、薬品の瓶をこちらに差し出してきた。試しに手にとって匂いを嗅いでみると、強烈なお酢のような匂いが鼻を突いた。
「こ、これはなかなか……。自分の身を守るためとは言え、ちょっと抵抗がありますね。」
「まぁ、そいつは匂いが強い分効果時間が長いんだ。瓶に効果時間が書いてある紙が貼ってあるだろ?」
「あ、ホントだ。」
瓶に張り付いていたシールのようなものをよく見てみると、効果が丸一日継続すると書いてある。
「ちなみに、こっちのはまぁ割といい匂い……いや、いい匂いではないかもねぇ。」
ドーナさんが差し出してきた瓶を嗅いでみると、さっきのお酢の匂いとは打って変わって、今度は消毒液のような、かなり薬品臭い匂いだった。
「う、う〜ん……確かにこれもいい匂いとはいえないですね。ちなみにこれはどのぐらいの時間継続するのかな?」
この匂いでどれぐらい効果が持続するのか見てみたところ、これで効果時間は6時間……。
「これならまぁ……なんとか。」
「だろ?」
これで妥協しようとすると、ミカミさんは俺の袖を引っ張って、今にも泣きそうな顔で何度も首を横に振っている。
「そ、そんなに嫌ですか?」
そう聞いてみると、ミカミさんは何度も首を縦に振っている。
「いや、これは私だけじゃなく、シアちゃんも嫌だと思うよ。ねっシアちゃん!?」
なんとか仲間を見つけようと必死なミカミさんは、シアにも同意を求めて、一度匂いを嗅いでもらっていた。
すると、この匂いはシアも嫌だったらしく、露骨に嫌な表情を浮かべている。
「シア、この匂いあんまり好きじゃないかも。」
「ほらほらほらっ!!ねっ!?」
「う〜ん、じゃあどうしましょっか。」
「……まぁ、一番効果時間の短いこいつで、短期決戦に挑むってのも選択肢の一つだけど。」
ドーナさんが手に取った瓶の中に入っていた薬品は、柑橘系のような爽やかな香りだが、その代わり効果時間はたったの1時間だけらしい。
「これなら大丈夫っ!!ドーナちゃん、その案で行こう!!」
「ホントに大丈夫かねぇ……。」
「大丈夫だよ〜。だって柊君もいるし、なんならドーナちゃんもルカちゃんもいるんだよ?問題ないないっ!!」
「まぁ一応……予備で何個か持ってくよ。最悪の事態には備えておかないとねぇ。」
念の為、ドーナさんがマジックバッグに他の薬品も詰め込んでいると、俺の方に真剣な表情のミカミさんがふわふわと飛んでくる。
「た、頼むよ柊君?あんな匂いで人前に出るのは、社会的に死を意味するんだから。」
「大袈裟ですよミカミさん。」
ミカミさんを宥めていると、ドーナさんはマジックバッグを腰につけて立ち上がった。
「よし、じゃあ早速行こうか。馬車がそろそろ来るんだ。」
「あ、そういえばその食肉植物の樹海って、ここから馬車でどれぐらいかかるんですか?」
「今回はすんごい遠いよ。多分6時間ぐらいかかると思う。」
「だからこんな朝早くの集合だったんですね。」
「そういうことさ。まっ、途中どっかの町で軽く昼飯とか挟んで向かおうじゃないか。」
「分かりました。」
「それより、アタシが気になってるのは、ホントにその子を一緒に連れてくのかい?」
ドーナさんは、俺と手を繋いでいるシアを見下ろしながら問いかけてきた。
「それは昨日みんなで話し合ったんですけど、どうしてもシアは俺から離れたくないらしいので……一緒に連れていきます。」
「……わかった。ただ、その子の安全だけじゃなく、自分の安全もちゃんと守るんだよ。」
「もちろんです。」
そして俺達は、エミルの町の関所から馬車に乗り、エルダーワイバーンが目撃されたという食肉植物の樹海へと向かうのだった。
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