第79話 用意していた新商品
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順調にプリンを売り上げていっていたところで、俺の心の中である心配事が生まれた。
(予想以上にお客さんの列が途切れない。このままだと、かなり早く用意していた分が売り切れてしまうな。)
一応前日に2つのパターンを予想していた。一つは全く客足がつかなくて、知り合いに振る舞うことになるパターン。もう一つは売れ行きが良すぎてあっという間に完売してしまうパターンだ。
今日の場合、後者のパターンが当たってしまった。だが、予想していたという事は対策も、もちろん用意している。
「さて……じゃあアレの準備を始めようか。」
昨日購入した、魔力を込めると火が出るというカセットコンロのようなものを取り出して、それでオーリオオイルを温めていく。その間に、ミカミさんにプリンの残りの数を伝えに行った。
「ミカミさん、プリン残り12個でヤマです。」
ちなみにヤマっていうのは業界用語で、品切れを意味する言葉だ。
「えっ!?も、もうそんなに売れちゃったの!?いくつ用意したんだっけ?」
「一応多く売れるかもと思って、150個用意したんですけど、あっという間でしたね。もし完売したら、次はこれを売り出すのでお願いします。」
ミカミさんに次売るメニューを書いた紙を手渡すと、にこりと笑ってくれた。
「なるほどねドーナツかぁ。それじゃあこれは……どうしよっか?お持ち帰りとかもできちゃうよね?」
「持ち帰りたい人の注文は俺の方で対応しますよ。だから、買いに来た人に持ち帰りかその場で食べるのか聞いてもらえれば……。」
「オッケー、了解したよ~。」
そんな打ち合わせをした後、想定していた通りすぐにプリンの在庫は無くなり、ドーナツの出番が回ってきた。
「え~、皆様にお知らせです。大変ご好評でプリンの在庫が無くなってしまいました~!!」
そうミカミさんがまだ並んでいた人たちに声をかけると、列にいた人たちはみんな少し悲しそうな表情を浮かべる。そして列を離れようとした人たちに向けて、またミカミさんが声をかけた。
「おっと、まだお知らせは終わってませんよ~?大好評につき売り切れてしまったプリンの代わりに、今度は新商品のドーナツを販売しま~す!!こちらはお持ち帰りも対応可能で~す。」
そうミカミさんの声が響くと、列から離れようとしていたお客さん達もその場にとどまってくれた。ミカミさんの巧みな話術はここでも通用するみたいだ。
そして早速列の先頭にいたお客さんにミカミさんが対応を始めた。
「はい、いらっしゃいませ~。ドーナツでよろしいですか~?1個につき銀貨1枚で~す」
「そのドーナツってどんなお菓子なんですか?」
「それはですね~、柊君サンプル貰える~?」
「はい、どうぞミカミさん。」
揚げたてのドーナツに粉砂糖を振りかけてからミカミさんに手渡した。すると、ミカミさんはそれを全身で持ち上げるようにしてお客さんに見せつける。
「これがドーナツで~す。外側はサクッと、中はもっちもち、ふわっふわで最高に美味しいですよ~。」
そう説明した後、ミカミさんはそのドーナツをシアのところに運んでいく。
「はい、シアちゃん。お客さんに美味しく食べるところみせてあげて?」
「ふわ……ミカミお姉ちゃんありがとう!!えへへ、いただきま~す!!」
シアがドーナツにかぶりつくと、サクサクっという心地の良い音が響き、もっちりとした生地が伸びながら千切れていく。
「んふ~♪美味しぃ~。」
美味しそうに食べているシアの姿を見たお客さんは、ミカミさんに向かってドーナツの注文を始めた。
「ど、ドーナツ2つ……持ち帰りで。」
「は~いお買い上げありがとうございま~す。そちらで少々お待ちくださ~い!!」
それからはプリンに代わってどんどんドーナツの注文が入っていく。一度プリンを食べた人たちも、今度はドーナツを食べるべく並んでくれているのが、この場所からでも見て取れる。
「念のため用意しておいてよかったな。」
そう思っていたのも束の間、想像以上にあっという間にドーナツの生地も無くなり、売るものが無くなってしまったので、いろんな人に惜しまれながらも本日は閉店を迎えてしまった。
「ふぃ~、柊君お疲れ~。」
「あ、ミカミさんお疲れ様です。シアとルカもお疲れ様だったな。」
「たくさん売れたかな?」
「あぁ、みんなのおかげで、ものすごい量売れたぞ。」
みんなの頑張りを労っていると、こちらにドーナさんとミースさんの2人が歩み寄ってきた。そういえば今日はドーナさんは買いに来てくれなかったような……朝からいなかったみたいだし、また何か依頼でもあったのかな?
「ずいぶん大盛況だったみたいだねぇ。アタシも依頼がもっと早く終わらせれば、買えたかも。」
「ドーナさん、やっぱり依頼をこなしに行ってたんですね。」
「そ、ま~た急ぎの依頼が舞い込んできちまったからねぇ。」
「んっふっふ、そんな買いそびれてしまったドーナさんのために、私ミースが2人分のドーナツを購入していたんです。」
そう言ってミースさんはドーナツを取り出した。
「おっ、気が利くねぇ~。じゃ、ありがたく一つ貰うよ。」
「はいど~ぞど~ぞ。」
そしてドーナさんがドーナツを頬張っているのを眺めていると、俺の背中が誰かにツンツンと突かれる。
「ん?あれ、マイネさん?」
「みんなお疲れ様だったねぇ~。プリンもドーナツもすっごく美味しかったよぉ~。」
「それは良かったです。」
「今日いっぱいお勉強させてもらったから、早速帰って同じのを作ってみるねぇ~。」
「あ、良かったらレシピ教えますよ?」
「ううん、いいのいいの~。こういうのは自分で探求するのが楽しいんだからぁ~。それじゃあみんなまたねぇ~。」
上機嫌でスキップしながら、マイネさんはギルドを出ていってしまった。あの人なら本当にレシピを教えなくてもプリンもドーナツも作ってしまいそうだな。
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