第77話 明日の開店へ向けて
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ドーナさんとミースさんにも、プリンの試食をしてもらったあと、俺は2人にどこでお店を開くべきか相談してみることにした。
「この商品を売るっていうのは決まったんですけど、実は今お店の場所を決めかねてて、大通りはもう場所はなさそうですし……。」
そう切り出すと、キラリとミースさんが目を光らせながら手を挙げる。
「そっ、それならギルドの中はどうでしょうか!?」
「み、ミース……あんた何言ってんだい?」
「考えてみてくださいドーナさん!!このギルドには魔物ハンターだけならず、一般の方々もたくさん訪れますっ。つまり、遥かに人の目につきやすいんですよ!!…………それに、ギルドの中でお店をやってもらえれば私達もいつでも食べられますからね。」
「どっちかって言ったら、最後の言葉のほうが本音なんじゃないかい?」
「え、えへへ……で、でもでも営業効果があるのは間違いありませんからっ!!」
「……って言ってるけど、どうするヒイラギ?」
「場所を使わせてもらえるなら、是非お願いしたいです。」
「やった!!ではすぐにスペースを作りますね!!」
そしてミースさんは、パタパタと酒場の奥の方に走っていくと凄まじいスピードでテーブルなどを避けて、あっという間にスペースを作り上げてしまった。
ミースさんの動きが速すぎて、手伝いを申し出る暇すらなかった……。
「おまたせしましたっ。あちらをお使いくださいっ!!」
「すみません、ありがとうございます。あ、この長テーブルと椅子借りても良いですか?」
「もちろんです!!」
許可をもらったので、そのスペースにルカとシアが座れるように椅子を置いて、長テーブルを2列並べた。
「これでよし。」
「柊君、テーブル2つも必要?」
「こっちのテーブルは、ミカミさん達にお会計と商品の受け渡しをやってもらおうかなって。俺は後ろのテーブルで果物を切ったりしますよ。」
「そういうことね、納得〜。」
「後は紙にプリンの値段とか、受け取り口とか……色々と書いて貼り付けておきましょう。」
長テーブルに文字を書いた紙をペタペタと貼り付けて、少し離れて確認してみた。
「うん、こんな感じで大丈夫そうかな。」
値段はいくらで、お会計はどこで……などなど一目でわかるようになっている。
「後は、明日の販売に備えて、今日これからバッチリ仕込みをするだけ。」
準備ができたところで頷いていると、遠目で販売スペースを眺めていた俺の前を大勢の受付嬢が横切っていき、値段の書かれた紙の前に集まってざわざわと騒がしくなり始めた。
「さっきミースさん達が食べてたお菓子、一個銀貨3枚だって!!」
「明日ちょうど出勤だし、私これ買ってみよ〜。」
受付嬢達がざわざわとしていると、こちらにドーナさんとミースさんも歩み寄ってきた。
「こりゃあ、普通の客だけじゃなく、ギルドの従業員でも賑わいそうだねぇ。業務が滞らないと良いけど……。」
「あ、それは私が調整します!!買いに行くのを交代制にすればなんとか……。」
着々とミースさんの頭の中で、明日の計画が練られていく。
「このぶんだと、売れ残る心配はしなくてよさそうだね柊君?」
「そうですね、あそこに集まってる受付の人達だけでも相当……。」
一人一つないし、美味しいと思ってくれたら、一人二つ食べてくれるかもしれない。そうなってくると、自ずとプリンを仕込む量もかなり大量になってくるな。
「帰り道でたくさんプリンのカップを買っとかないと……。」
「今って10個ぐらいしかないんだよね?」
「はい。だからあと100個ぐらいは買っておきたいところですね。」
「……足りるかい?」
「ま、まぁ最初ですから……もし好評だったら次回はもっと仕込みます。」
もし作りすぎて余ってもアレだし……。最初は100個ぐらいで様子を見たほうが良いと思う。
そうミカミさんと話し合っていると、俺と手を繋いでいたシアがくいっと優しく腕を引いてきた。
「ヒイラギお兄ちゃん?」
「ん?どうしたんだ?」
「あ、あのね……シア、またあのプリン食べたい。」
「わかった。じゃあ帰ったらまた作るからな。」
ポンポンとシアの頭を撫でてから、俺はドーナさん達の方に向き直った。
「それじゃあドーナさん、ミースさん。俺そろそろ帰って仕込みして来ます。」
「ん、明日楽しみにしてるよ。」
「私も楽しみにしてますからっ!!」
「ありがとうございます。それじゃあ、失礼します。」
そしてギルドを後にして、必要なものを買い揃えてから宿に戻った。
「さて……始めようか。っとその前に、ミカミさんちょっと良いですか?」
「はいはい、何だい柊君?」
「俺が忙しい間、シアが暇になると思うので……これを教えてあげてほしいんです。」
俺がマジックバッグから取り出したのは、子供向けの算数の本と人間の言語について書かれた本だ。これもここに帰ってくる前に書店で購入した。
「お願いできますか?ミカミ先生?」
「あははっ、先生って呼ばれるのは案外悪くないね。わかった、任せてちょ〜だいっ!!」
ぽんっとミカミさんは自分の胸を叩くと、シアのところに飛んで行った。それを見送った後、俺はルカを手招きする。
「ルカ、ちょっと手伝ってくれるかな?」
「できることであれば、お手伝いします。」
「あぁ、もちろん簡単だから大丈夫。この卵をひたすら割って、ここに入れるだけ。」
「卵を……割る?」
少し首を傾げたルカは、一つ卵を手に取ると、そのまま軽く握りつぶしてしまった。
「これでよろしいですか?」
「…………すまない、説明不足だった。俺の手本を真似てくれ。」
見本として何回かやってみせると、手先が器用なルカはすぐに卵の割り方をマスターしてくれた。
やっぱり立ち振る舞いはメイドっぽくなっても、中身はルカなんだと改めて理解したのだった。
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