第73話 ミカミピンチ?
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翌朝、俺はミカミさんの助けを求める声で目が覚めた。
「柊くーん!!お、起きてくれないかい!?あともうちょっとで食べられちゃいそうなんだよ〜っ!!」
「ん……え?…………えぇ!?」
体を起こして声のする方に視線を向けると、隣で寝ていたシアの口に、体の半分ぐらいが飲み込まれているミカミさんの姿を発見した。
「だ、大丈夫ですか!?」
すぐにミカミさんの両手をつまんで、シアの口から引っこ抜いた。
「ふは〜っ、助かったよ柊君。あとちょっと遅かったら飲み込まれてたかも……。」
「いや、ホント間に合って良かったです。……でも何でまたあんな風に食べられそうになってたんですか?」
「それは、かくかくしかじかの理由でね…………。」
ミカミさんの話によると、どうやら一番最初に目が覚めたミカミさんは、まだ眠っているシアの寝顔を眺めたり、耳を触ったりしていたのだとか。
そして、次は尻尾を触ろうと布団の中に潜ろうとしていたところ、寝ぼけていたシアにパクッと食べられそうになったらしい。
「ま、こういうわけなんだよ。」
「まぁほぼほぼミカミさんの自業自得のような……。」
思わず苦笑いしてしまっていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。
「はいは〜い、どちら様〜?」
ノックされた扉の方へと、ミカミさんはふわふわと飛んでいき、ドアノブを全身を使って回して扉を開けた。
「おはようございます。」
「あ、ルカちゃ〜ん。おはよ〜。」
扉の向こう側には、昨日と変わらずメイド服姿のルカが立っていた。しかし、昨日と少し違うのは……。
「……ん?なんか少し立ち振舞いが型にはまっているような……。」
「昨晩頂いた本を丸暗記してまいりましたので、そのおかげかと。」
言葉遣いも昨日までと違って、たどたどしくない。まさか本当にあの分厚い辞典みたいな本を丸暗記してきたのか!?
そう驚いていたのも束の間、ルカは近くの椅子に腰掛けると、俺の方にチラリと視線を向けてきた。
「ご主人様、ルカは朝食を所望致します。お腹と背中がくっつきそうです。」
「あ、根っこのところは変わってなかった。」
あの本を丸暗記しても、ルカはルカのままのようで、なんかちょっと安心した。
「じゃあ早速朝食にしようか。」
朝食を作る前にシアのことを起こそう。ポンポンとシアの肩を優しく叩くと、重そうな瞼をゆっくりと開けて、シアがこちらを見つめてきた。
「ふみゃ……あれ?お魚さんは?」
「おはようシア、なんかお魚を食べる夢でも見たのか?」
「あっヒイラギお兄ちゃん、おはよ!!そうなの、夢の中にたくさんお魚さんが出てきて、一匹捕まえれたんだけど……。」
「ははは、多分そのお魚は本当にいたかもな。」
そう言うと、シアはどういう意味なのか分からなかったようで首を傾げている。
「さ、朝ごはんにするから、ちゃんと着替えておいで?ルカ、シアの着替えの手伝いお願いしてもいいか?」
「承知しました。」
シアが着替えている間に、昨日マイネさんからもらったお米を炊いていく。昨日と同様にフライパンでな。
「で、この間にシュベールサーモンを切り身にして……塩を振ってグリルの中で焼いておく。」
今回は朝食ということもあって、シンプルに塩焼きにする。ご飯との相性もいいからな。
「シュベールサーモンの塩焼き……良いねぇ〜。朝食にはもってこいだよ。」
「後はここにお味噌汁と、玉子焼きでも作ろうかなって思ってるんですけど、ミカミさんは甘い玉子焼きと甘くない玉子焼きのどっちが好みですか?」
「えっ、お酒を飲むなら甘くない玉子焼きが良いけど〜、朝ご飯に食べるなら甘い玉子焼きがいいかな。」
「分かりました。じゃあ今回は甘い玉子焼きにしますね。」
砂糖を入れた甘めの味付けの玉子焼きをフライパンで焼いていると、ミカミさんが不思議そうに見つめていた。
「なんか玉子焼きってさ、四角い鍋でやるよね?」
「そうですね、四角いほうが形を整えやすいので……。」
「その丸い形のフライパンでも作れるのかい?」
「出来ないことは無いです。ただ、ちょっとコツがいるんですけど……。」
四角い鍋なら、ただ卵液を流して巻いていけばいいだけだが、こういう丸いフライパンでやるときは、一度全体に卵液を流したあと、左右の端を中心に向かって折りたたんでから巻いていくんだ。
「で、こうすれば……ほら、出来ました。」
「おぉ〜、出来るんだ。」
全員分の玉子焼きを1本ずつ巻いて、味噌汁を作っていると、こちらに身支度を整えてもらったシアがやってきた。
「すっごくいい匂い〜♪シア、お腹空いちゃった。」
「もうちょっとで出来るから、座って待っててくれ。」
「はーい!!」
そして、香ばしく焼き上がったシュベールサーモンの塩焼きをテーブルの上に並べていき、付け合わせに玉子焼きと味噌汁……炊きたてのご飯も並べた。
「よっし、温かいうちに食べよう食べよう。」
俺とミカミさんが手を合わせると、それを見ていたシアが首を傾げた。
「ヒイラギお兄ちゃん達……ご飯食べる前に手を合わせてるけど、それに何〜?」
「シアちゃん、これはご飯を作ってくれた柊君と、命を頂くってことに感謝……つまりありがとうってしてるんだよ。」
「じゃあシアもやる!!」
「……では私も。」
なんだんかんだみんなで手を合わせた。
「それじゃあいただきます。」
「「「いただきます!!」」」
そしてみんな揃って美味しい朝食を食べて、1日の始まりを迎えたのだった。
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