第72話 マジックバッグ改造計画 2
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宿についたところで受付から2つ鍵を受け取って、片方はルカに手渡した。これは、シュベールに出発する前に、予め借りておいた俺達の隣の部屋の鍵だ。
「これを渡しておくよ。」
「てっきりご主人様たちと同じ部屋かと思っていました。」
「まぁ、ベッドは広いし同じ部屋にすることもできたけど、やっぱりルカも女の子だし、部屋は別々のほうが良いかなって思ってあらかじめ借りておいたんだよ。」
「そういうところに配慮がいくって何か柊君らしいね。……ってちょっと待って?それもしかして、ルカちゃんにメイド服を買う前に借りてたってこと?」
「まぁそういう事ですね。ミカミさんは一度決めたことは曲げない性格なのはわかってたので、ルカがメイドになるのは決定事項だと思ってましたから。」
「……では、ありがたく頂きます。」
ルカは鍵を受け取り、自分の部屋の鍵穴に刺し込んだ。
「あ、ルカちゃんルカちゃん。」
「なんでしょう?」
「これ、もし暇があったら読んでみてよ~。」
そしてミカミさんがルカに差し出したのは、『メイドの所作』と題目が書いてある分厚い辞典のような本だった。
確かこれは、馬車に乗る直前に、ミカミさんが「柊君っ!!金貨1枚頂戴!!」って突然言ってきて、金貨を預けてどこかに飛び去ったと思ったら、必死に体全体で抱えながら持ってきたものだ。
「そういえばこんなの買ってましたね。」
「私たちのメイドになったルカちゃんには必要だと思ってね。これもメイド服と同じく先行投資ってやつさ。そういうわけで、ちょっと読んで参考にしてみてよ。」
「……わかりました。では……。」
本を受け取ったルカは今度こそ部屋の中に入っていった。それを見送った後、俺達も部屋の中に入る。
「ふはぁ~っ、つっかれたねぇ~柊君、シアちゃん。」
「結構移動が多かったですからね。」
ベッドに腰を預けると、すかさずシアが俺の太ももの上によじ登ってくる。
「そんなにそこは座り心地が良いか?」
「うんっ!!こうやってヒイラギお兄ちゃんの方を向けば~いっぱい匂いも嗅げるんだもん。」
向かう合うように座ったシアは、ぐりぐりと俺の胸に顔を押し付けながらスンスンと鼻を鳴らしている。
「き、着替えてないしシャワーも浴びてないからちょっと汗臭いんじゃないか?」
「うぅん!!すっごく良い匂いだよ?」
「そ、そう言われてもなぁ……。と、とにかくシアも一回シャワーを浴びてきなさい。ミカミさんと一緒にね?」
幸い、この宿にはシャワー室がついている。ひとまずシャワーを浴びてから横になりたい。特にシアは、数日間あの森の中で生活をしていたわけだし……。
「そういうわけでミカミさん、お願いします。」
「はいは~い!!承ったよ~。シアちゃん、それじゃあお着替え持って、一緒にシャワー浴びようね~。」
そしてミカミさんとシアは一足先にシャワー室へと入った。すると、中からくすぐったそうにはしゃぐシア達の声が聞こえてくる。
そんな声を聴きながら、俺はまたマジックバッグを手に取った。
「マジックバッグの中にたくさん食材がたまってきたな。生ものもあるし……どうにか長期保存できるようにしたいなぁ。」
思考を巡らせていると中の食材の鮮度を保つ、ある方法を思いついた。
「あ、そっか。このマジックバッグの中の時間を止めれば……食材も腐らない。方法が思い浮かんだのなら、あとは想像を膨らませるだけだ。」
マジックバッグを手にしながら、目を閉じて時計の針がぴたりと止まるようなイメージを頭の中で膨らませると、魔力が体の中からごっそりと抜けていくような感覚を感じた。
「ふぅ……できたかな?」
マジックバッグに刻まれた魔法陣に目を向けてみると、さっきまでの複雑な模様がさらに変化し、今度は時計の針のような模様が刻まれていた。
「成功……したのかな?」
今は確認する手段はないけど、たぶん成功していると思う。
「これは一先ず置いといて……明日は何をしようかな。」
この世界でやれることは数えきれないほどたくさんある。明日もギルドに行って何かしらの依頼を受けるもよし……この町を探索するもよし、他の町に行ってみるのもいい。
「目標の白金貨300枚までは、まだまだ道のりは長い。今回ダンジョンの調査依頼の報酬が無かったし……。ドーナさんも急を要するような依頼は溜まってないってさっきお酒を飲んでいるときに言ってた。」
となると、別口で何かお金を稼げる方法を見つけるのに時間を使うのもアリだな。ただまぁ、俺ができることって限られているんだけど……。
頭でいろいろと思考を巡らせていると、突然脱衣所の扉ががらりと勢いよく開いて、すっぽんぽんのシアがミカミさんから逃げるようにこちらに走ってきた。
「あわわっ!?シアちゃん、服着なさ~いっ!!」
「ヒイラギお兄ちゃんに着せてほしいのーーっ!!」
「わ、わかったから。早く服を着て風邪をひかないようにしような。」
シアの体についた水分をタオルで拭きとってから着替えを手伝い、何とかパジャマに着替えてもらった。その後俺もシャワーを浴びてから、みんなで一つのベッドで眠りについたのだった。
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