第71話 夜道にはご用心?
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料理がすっかり無くなったあと、お酒を飲みながら談笑に花を咲かせていると、ふと俺の隣に座っていたシアがウトウトと眠そうにしていることに気が付いた。
「あ、シア眠くなっちゃったか?」
「うん……ふぁぁ〜。」
大きなあくびをしながら目を擦るシアを見て、マイネさんが言った。
「シアちゃんも眠くなっちゃったみたいだし、今日のところはこの辺でお開きにしよっかぁ〜。」
「そうだねぇ、明日のこともあるし、この辺にしとこうかい。」
そして最後コップに残っていたお酒を、みんな飲み干して今日のところはお開きとなった。
店前でドーナさんとマイネさんの2人と別れたあと、俺たちも宿へと向かって歩みを進めていた。すると、突然後ろを歩いていたルカが、少し速歩きで俺達の前に立ち、止まるように腕を横に伸ばす。
「ルカ?」
「敵襲だ……コホン、です。」
「マイネさんのお店を出たときから、なんか嫌な感じがしてたけど……そういうことだったのか。」
「……気づいていたのですか?」
「もちろん。」
ルカが呆気にとられていると、すっかり酔っ払って俺の胸ポケットに入って休んでいたミカミさんが這い出してきた。
「ルカちゃ〜ん、柊君を見くびっちゃいけないよ。危機察知能力に関しては、この世界の誰よりも突出してるはずなんだから。」
そんな会話をしていると、人気のない細い路地から腰に細い剣を差し、妙な仮面をつけた女性が姿を現した。
彼女をルカは知っているようで、メイド服の下に隠していた忍者刀のような剣を抜きながら、彼女に声を掛ける。
「この私が失敗したのだから、この任務がどれだけ難しいものか分かっていたと思うのだがな……。それに私が依頼を受けた者を排除していることも、長から聞いているのだろう?」
「だからこそ、わたくしが……アサシンギルドの一匹狼になるために、貴方達には踏み台となって頂きますわ。」
「はぁ……愚かな野心は身を滅ぼすぞ。」
ルカがため息を吐いている間に、彼女は腰からレイピアのような細い剣を抜いて、ルカへと向かって突きを放つ。
それをアッサリとルカは忍者刀で弾きとばした。
「えっ!?」
「未熟の極み。まずは相手の実力を見極めろ。」
そうアドバイスともとれる言葉をかけた後、ルカは剣の柄を彼女の鳩尾にズン……と深くめり込ませた。
「ふぎゅぅ……。」
その一撃で彼女の意識は一瞬にして刈り取られてしまう。
「はぁ……まだ入りたての新人にも受けられるような任務にしてあるとは、長の対応には疑問を抱いてしまうな。」
やれやれと頭を抱えながら、ルカは剣を鞘に納めた。
「この子はルカちゃんの知り合いなの?」
「……アサシンギルドで一度プロフィールを見ただけです。確か、元はどこかの街の貴族の娘だったとか……。」
「ほぇ〜、じゃあなんか色々訳ありなんだねこの子も。」
少し嬉々としながら、ミカミさんは倒れ込んでいる彼女に近づいていくと、その仮面をペリッと剥ぎ取った。
「おぉ〜、確かにちょっと貴族っぽい顔してるかも。なんかどこか高貴さが伝わってくるね。」
そう言いながら、ツンツンとミカミさんは彼女の頬をつついている。
「それで、何でまた今回は命は奪わなかったの?」
「……私はもうアサシンではありませんので。心をへし折るぐらいにしておきました。」
ルカがそう言うと、ミカミさんはフルフルと顔を横に振った。
「ダメだよルカちゃん、このぐらいじゃ人間の心って折れないんだから。」
「へ?」
素っ頓狂な声を上げて、ルカが呆然としていると、ミカミさんはマジックバッグの中にスポンと入っていった。
そして、出てくる時には、この前ミカミさんがどうしても欲しいって言って、購入していた麻縄をウッキウキで手にして戻ってきた。
「心を折るにはね、最大限の屈辱と……恥辱を味わってもらわないといけないんだよ〜。」
「あ、あのミカミさん?その、そこまでしなくても〜……。」
「わかってるわかってる〜。」
俺の言葉を流したようにアッサリと答えたミカミさん。多分、まだ酔ってるし……俺の声は届いていないと思う。
「はい、ルカちゃん。こっちの縄持って?」
「わ、分かりました……。」
「よぅし、じゃあ始めるよ〜♪」
そしてミカミさんとルカは、彼女の事を何やら特殊な縛り方で縛っていく。数分後には彼女は、肘と膝が足代わりに地面についているという、まるで人間が犬となったような縛られ方をされてしまっていた。
「ま、こんなもんでいいでしょ。」
「……つくづく私はアレだけで助かってよかったと思いました。こんな拘束一人では絶対に抜け出せない。」
「ルカちゃんの拘束も一人じゃ解けないはずだったんだけどね〜。私の腕も鈍ったかな?」
「…………それで、この人はどうするんですか?」
「一先ず大通りのど真ん中に置いとこっか。人目につきやすいし、誰かしら助けてくれるでしょ。あ、ルカちゃん、その子の武器とお金になりそうなものは回収しておいてね。」
「そう言われると思って、回収済み……です。」
ルカの手には、よく見ると宝石の散りばめられたレイピアのような剣や、大きな宝石のついた指輪等が握られていた。
「ん〜、素晴らし。じゃあ帰ろう〜!!」
彼女を大通りのど真ん中に放置して、俺達は宿に戻る事にしたのだった。
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